盗聴
テストなどのごたごたでまったく更新できませんでした(汗)
申し訳ありません~……
これからは普段通りに更新します!
ここ最近まれに見る、リアルな夢だった。
「……夢か」
思わずそう口にする。
父と母、そして姉が優しく家に出迎えてくれた。
だからといって、口がほころんでしまうわけではない。むしろその逆だ。仏頂面で2段ベッドから降りる。
そして、最近たまりにたまった携帯の迷惑メールを削除しながら、父と姉の本性を思い出す。
あいつらが家を出てって本当によかった。
あの時は泣いて悲しんだ。
まだ俺が小さかった頃、突然父が「家出してやる!」と言い出した。
酒の勢いもあるのかもしれないが、前々からある程度は準備していたんだと今更思う。
翌日の早朝、父にたたき起こされ「お前もいかねえか?」と言ってきた。姉はもう賛同していたし、いやだと言ったらぶっ殺されると思った俺は、それでも行きたくなかったのでいくともいやだとも言わなかった。
ところが父は何やらぶつぶつ呟き出したかと思うと、姉を連れてドラムバッグを背負いだした。何が何でも連れて行かれると思い、うすい毛布をかぶり目を閉じていた。
それから何分が過ぎていたのだろう。当時の俺には一瞬のように感じられた。
足音がゆっくりと部屋に入ってくる。それが怖くて、さらにきつく目を閉じる。
足音が途絶え、少しの沈黙が訪れた。それを破ったのは、母の声だった。
「パパとねえねが、どこか遠くへ行っちゃった……」
ゆっくりと目を開けた先に映った母の瞳は、いまでも忘れない。
涙も見せず、その場から立ち去った……。
ここまで悲しい思い出だったとは……久しぶりに思い出した。
しかし、父とはもう会えないからいい、と断言はできない。何しろ、再び、近い存在となってしまったのだから……。
PCの電源をつける。早起きしてオンラインゲームをするのが休日の日課だ。
中村との通話をオンにして、ゲームにログインする。
イヤホンをつけると、中村の声が聞こえてきた。
「おい、篠崎?」
「おはよ」
「あぁ、はよ。今どこ?」
俺は、画面左上に表示されている町の名前をそのまま口にした。
「今いく」
タクシーを使ってこの町にとんできた中村はキャラの顔を笑い顔にさせた。
「見たよ、運動会」
さっそくその話題か。
「諦めきれるの? きれないよなぁ。てか、もうスパッと諦めちゃえよ。めんどくせぇ」
「諦めねえよ」
とたんにその言葉が出た。
「は?」
昨日、彼岸花のことでずっと悩んでいた。その結果、再会を選んだのだ。内山なんかすぐに折れるさ。ナナは俺にだけ心を開いてくれたんだ!
「諦めないよ。諦めるもんか、内山に負けたら自殺モンだからな!」
「そっか、内山か……忘れてたわ」
1つ、間を置いて、
「内山と目が合うと、いろいろと負けた気がするもんなぁ……」
そして、
「よしっ応援したる! これからナナん家に行け!」
「へ?」
「お詫びだよお詫び。それからオルゴールを持ってけ!」
「お、おい」
中村のPCの電源が落ちたらしい。繋がらなくなった。
仕方なくゲームを閉じる。帰ってくるまで待とう。
しかし、どう考えても遅い。もう待てない。
それにしても、お詫び? まあ、アピールのいい場になるか。そういうことだけに関してはなかなか鋭いな、中村。
……誰か来た。インターホンが鳴る。こんな朝早くに誰だ。モニターを確認すると、そこには中村が立っていた。
ドアを開ける。パジャマ姿なので少し恥ずかしい。何しに来たのだ。
「はい、オルゴール」
「え? ……いやいやいや」
「とにかくこれ渡せ」
渡せって言われても……。
ためしに曲を確認してみる。最近、恋愛ドラマの主題歌になった歌だ。
「どこでこれを」
「……なんだ、まあ、いろいろあってな、それだったらマッチしてんだろ」
テレビで話題となり、ナナが好きそうだと思っていた歌だった。これならいけるんじゃないか。
「んじゃ、今日中に行けよ、がんばれ」
「もう帰るの?」
「たりめーだろ、あのレベル上げんのに苦労するんだぞ。じゃな」
風のように去ってしまった。
オルゴールをよく観察する。俺の勘では確か……。
「……これは」
変な部分がある。明らかにオルゴールとは関係なさそうだ。
あいつ、やっぱ作戦だったか……。
面白そうじゃんか。
俺はその「マイク」に向かって息を吹きかけた。
ブログ移転しました。心機一転更新していきますのでよろしくお願いします!