学校で一番
内山は、いじめられっ子だった。
友達は2人くらい。学校側は内山を配慮してか、友達2人とも内山と同じクラスだという。
初めて会ったときはみんな、静かそう、頭もいいのかな、ちょっと友達には・・・・・・というくらいなのだが、とにかく内気だ。何かを問われると、5秒くらいくぐもった独り言をつぶやいたあと、「あっ」「をぉ」などのはっきりしない言葉を交えて話してくる。それがあまりにも気持ち悪く、今では誰も話しかけない。
授業などで内山と同じ班になってしまった生徒の間でため息やうんざりした声が聞こえてくるのだが、当の本人は平気な顔を作っている。そこがまたうざくて、クラスでも格好のネタにされる。
それに、母親には微妙に上から目線で接しているといううわさがあるのだから余計気持ち悪い。
まゆ毛のあたりで前髪ぱっつんされた髪型。
オタク要素を助長させるメガネ。
手や足の太さはひょろひょろのツタ同然である。
当然運動はできない。
頭も悪い。
腹筋がないくせに吹奏楽部に入っている。
もう長所を探しても見つかるほうが不思議である。
・・・・・と内山に関する情報を並べてみたがどうだろう。自分でも思い出したくなかったのだが。
夕食は軽めに済ませてきた。食欲がないと口実を言った。本当は、すごくショックだった。ふられたときよりも。内山に負けた。
ナナは、これからの付き合いに俺ではなく内山を選んだ。今まで培ってきた俺との付き合いをふってまで内山を選んだのだから、相当内山のことが好きなのだ。
信じられない。
天と地がひっくり返っても、ありえない。
学校一のアイドルと学校一のオタクが付き合っているのだから。
携帯の中の「川崎 奈々」のアドレスを消した。
さようなら。
ナナは内山と楽しく付き合えばいい。
もう一度、PCの電源を入れようとした。2人には、もうネットには戻らないかもしれないと言っておいた。しかし、もう一回、村上からよく話を聞きたかった。
しばらくして、電源ボタンに何回も手をかけては、引っ込めている自分に気づいた。
やめだやめだ。手をキーボードの上において落ち着かせた。
あんなきつい言い方をしてしまった村上に謝りたいという気持ちがあったが、明日直接会って謝ったほうがいい。
――昨日はごめん。悪かった。ちょっと気が暴走してたんだ。はは、笑っちゃうよ、内山が付き合ってるなんて――
ふいに、手が動いていた。キーボードを左右のしきりにガン、ガンとぶつけていた。
そのときだ。カラン、と黒い物が落ちた。
USBのとこに差し込むやつだ。小さい。でも、どこかすごそうな感じをかもし出している。こんなの、買った覚えがない。きっと、中村がここに遊びに来たときに忘れていったのだろう。
PCの起動音が鳴り響く。USBの部分を差し込む。
ちょっとした興味だ。俺にも扱えるもんだったら、そんなにやばいものではないだろう。
ピコン。なんか出てきた。
・・・・・・なんだろう。
・・・・・・・・・・・・遠隔操作?
・・・・・・ハッキング?
画面表示?
なんかすごいの出てきた!
手が動いていた。
メールアドレスを入れてください・・・・・・?
ナナのPCのメアドを入れていた。アドレス帳の中で消していても、憶えてしまっていた。
下記のURLをクリックさせるように自分でPRしてください!・・・・・・?
ナナは、このゲームが好きだったっけ?
ゲーム待望の次作の情報は下のURLをクリック!
・・・・・・これでいっか。
「送信しますか?」
本当に、いいのだろうか。
ハッキングとか書いてあったが・・・・・・・・・・・・
ノリでここまでやってしまったが、ナナがこんなこと知ったら・・・・・・
いや。
いいのだ。ナナは俺のこと・・・・・・
迷わず、クリックした。