第74話 リューを襲った流星の三騎士
リューは家に帰るのも転移を使えば一瞬である。だが、リューは街の様子、雰囲気を感じておきたいと思い、急ぎでない時はなるべく歩いて帰るようにしていたのだった。そのため、騎士たちが後を尾行る事が可能であった。
リューを尾行ている騎士は三人、名前をアイガ、ガルテオ、マシュウといった。だが、三人はリューをすぐには襲わなかった。なるべく人目につかない場所を探しているのである。
リューを始末する事はハリス王子の命令である。王族に対する「不敬罪」という名分が一応はあるので、リューを捕らえて殺すところを誰かに見られたとしても問題はないのだが、やはり、貴族や王族が平民を“無礼討ち”にするのを見られれば、平民から良い印象があるはずがなく。できれば醜聞が広まるのは避けたいという思いが騎士たちに働いているのであった。
ハリス王子の命令で、平民を簡単に無礼討ちにしてしまう事は、実はよくあった。そしてそれは、明らかに王子のワガママによる理不尽なケースばかりであった。そうでない場合も、殺すまではしなくてもよいのではないかという、グレーなケースであった。
そもそも、明らかに意図的に貴族・王族に危害を加えようとしたという者でもない限り、簡単に不敬罪で処刑など、本来はすべきではない。
王子の騎士達もそれが褒められた行為ではない自覚はあったのである。
だが、彼らには、王子の命令を拒否する事などできない。命じられたならば実行しなければ、自分たちが反逆罪で処刑される側になってしまうのである。殺される平民には申し訳ないと思いつつも、心を閉ざして実行するしかないのである。
リューも、尾行られている事には気づいていた。もし襲ってくるなら全員返り討ちにしてやるつもりであった。
が、襲ってこないので仕方がない。リューのほうから騎士たちに近づいていく。今日は早く帰って飯食って寝たいのだ。
いまだ、まばらではあるが人通りがある場所であったが、隠密スキルを持っているわけでもなく、ただ、後ろを歩いていただけの騎士達は、あっさりとリューの接近を許してしまった。
リュー:「何か用か? ってまぁ、俺を始末してこいと命じられたんだろうが」
アイガ:「……そこまで分かっていて何故逃げずに近づいてきた?」
ガルテオ:「人目がある場所なら襲われないと思ったのか?」
マシュウ:「いや、俺たちに狙われたら助からんと思って、一か八か、命乞いに来たのかも?」
リュー:「ふん、お前達、覚悟はできているのだろうな? 相手を殺そうとするなら、自分も殺される覚悟が必要だぞ?」
ガルテオ:「これは……、笑わせるな。たかが平民が、流星の三騎士と呼ばれる俺達に勝てるつもりでいるのか?」
マシュウ:「まぁ、仕方がないさ。自分の身の程が分からんのも平民らしさってもんなんだろう」
リュー:(やれやれという表情)「貴族ってのは、どうも自信過剰な奴が多いようだな。自分たちが死ぬ事になるかもしれんという事は考えないのか?」
アイガ:「お前こそ、多少は腕に自信があるのだろうが、しょせんは平民レベル、俺達貴族の力を甘く見ないほうがいいぞ?」
リュー:「戦って負けるとは思えないが……
よかったな、今日のところは見逃してやるよ、今日は早く帰って飯食って寝たいんでな」
ガルテオ:「はぁ? 我々がお前を見逃す気はないんだが?」
アイガ:「理不尽だと思うだろうが、すまない、命令なんでな」
マシュウ:「安心しろ、せめて、なるべく苦しまないように殺してやる」
剣を抜く騎士達
リュー:「身を斬られないと理解できないか」
周囲には剣呑な雰囲気を感じ取ったのか、街の人間はいつの間にか誰も居なくなっている。
マシュウ:「任せろ! 一瞬で終わらせてやる!」
騎士が斬りかかってきた。踏み込みの速さと剣速は、なるほど言うだけの事はある、今まで見てきた剣士の中でもトップレベルであった。
貴族の能力は、平民とは桁違いである。魔力だけでなく、体力・運動能力も優れた者が貴族には多いのである。さらにその中で身体能力の高い者が騎士として登用されているのだ。
平民であれば動きを視認する事すらかなわず両断されて終わりであったであろう高速の踏み込み、高速の剣撃。
だが、振り下ろされた剣に手応えは感じられず……リューの姿はこつ然と消え、気がつけばマシュウの体は宙を舞い、地面に叩きつけられていた。
リューがマシュウの背後に転移、そのままマシュウの襟首を掴み、投げ飛ばしたのである。
アイガ:「マシュウ! 大丈夫か?」
マシュウ:(よろよろと起き上がりながら)「ああ、大丈夫だ、ちょっと油断した」
アイガ:「なるほど、吹くだけの事はあるようだな。お前達、フォーメーションで行くぞ!暴風隊列!」
アイガの号令でアイガの後ろにガルテオ、マシュウが集結する。
整列した三人は、アイガを先頭にリューに向かって猛烈な勢いで走り込んで来た。
まっすぐリューに向かっていたアイガは、剣の間合いに入った瞬間軌道を修正、リューの脇を駆け抜けながら斬りつけてきた。
次の瞬間にはアイガの後ろにいたガルテオが襲いかかってくる。だが、ガルテオもまた、アイガとは逆側に駆け抜けながら斬りつけてきた。
さらに、最後尾に居たマシュウはそのまままっすぐ突っ込んで突きを放ってくる。
すれ違いながら、連続して三方向から斬りつけてくる攻撃であった。
だが、リューはアイガの攻撃を瞬時に呼び出した魔剣で受け止め、ガルテオの攻撃を頭を下げて躱し、マシュウの突きはジャンプして飛び越えて躱してみせた。
不意打ちのように虚を突くのが狙いの攻撃方法であるが、リューは予知能力によって三連撃が来るのが分かっていたため、避けるのは難しくない。
リュー:「フラッシュストリームアタックかよ!」
リューは前世で観たロボットアニメに出てきた技の名前を思い出してニヤッと笑った。
無敵のフォーメーション攻撃があっさり躱された事に驚くアイガ。
マシュウ:「何が可笑しい!」
アイガ:「もう一度行くぞ!」
再び、隊列を整えて、リューに向かって走ってくるアイガ・ガルテオ・マシュウ。
だが、次にすれ違った後……
地面に落ちていたのはリューによって切り飛ばされた騎士たちの六本の腕であった。
返す刀でリューが三人に襲いかかる。腕を失った騎士たちに防ぐ手立てもなく、水平に薙ぎ払われるリューの剣が三人の騎士の両足を斬り飛ばしていく。
ガルテオ:「あ……? うお?!?!」
アイガ:「……馬鹿な……!?」
地面に転がり、何が起きているのか理解できない騎士達。
魔剣で斬られた傷は治癒魔法やポーションを使っても治らない。このまま放っておけば、騎士たちは出血多量でやがて死ぬだろう。
リュー:「……貴族というのは馬鹿ばかりなのか?」
地面に転がる騎士達を見下ろしながら、リューはため息をついた。
次回予告
リューの収納魔法に驚くソフィ
やはりリューは国で囲い込みたい?
乞うご期待!




