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足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します(習作2)  作者: 田中寿郎
冒険者編

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第65話 マリー戦 後編

マリーの剣撃をリューがバックステップで間合いを外して躱す。だがそれはマリーの待っていた好機であった。

 

剣が届かぬと分かっている間合いのまま、剣を鋭く振リ抜くマリー。その木剣の先から見えない空気の斬撃がリューに向かって飛ぶ。

 

エアカッター

 

剣士などのクラスをもった人間が持っている事があるスキルの一つである。

 

リューの攻撃で戦意喪失しなかったのは、マリーもまたスキルを隠し持っていたためであった。(自分がスキルを隠し持っていたので、リューもまたそうしていたのだろうと思ったわけである。)

 

目視できない透明な空気の斬撃。このスキルは、これまで幾度もマリーを勝利に導いてきた。この技を繰り出した時、対戦した相手はすべて倒す事ができた。マリーの絶対負けない自信は、このスキルがあったためであった。

 

だが……

 

 

 

リューは、その空気の斬撃も、あっさりと躱して見せたのだった。

 

マリー(ばかな……見えない斬撃をどうして躱す事ができる?)

 

いや、偶々(たまたま)、偶然避けられただけかも知れない。二撃三撃とさらに続けてエアカッターを放つマリー。

 

だが、そのすべてをリューは躱してみせる。さらに四撃目は木剣を鋭く振って打ち消してみせた。

 

 

 

 

このエアカッターというスキル攻撃は、ウィンドカッターという魔法攻撃に似ているが、ウィンドカッターはよく見れば見えるのに対し、このエアカッターはほぼ不可視なのである。

 

ウィンドカッターに比べると範囲は狭く威力も小さい。そのため

鎧などを破壊するほどの力はないが、マリーは鎧の隙間を的確に狙う事ができる。

 

鎧は関節部などにどうしても隙間がある。そこを狙うのである。人間は関節を切られれば、筋が切れれば手足が動かなくなるし、動脈が切れればすぐに止血しなければ出血多量で致命傷となる。

 

ましてや、今、目の前にいる敵は鎧など着ていない、布の服を身に纏っているだけなのだ。目・首・手首・肘内・膝裏・アキレス腱等々々、一撃で戦闘不能に追い込む急所も狙い放題である。


マリーは頸動脈を斬って終わらせるつもりであった。頸動脈を切られれば、すぐに手当をしなければ死ぬ事になる。治療してやる代わりに奴隷落ち承諾を迫るつもりであったのだ。

 

リューが多少腕が立つにしても、所詮は平民、スキルを使わずに決着がつくだろうとマリーは高を括っていた。だが、ありえないが、もし万が一、苦戦するような事があったとしても、このスキルを使えば勝てると思っていたのだ。

 

 

 

 

だが、その必勝の奥の手が通用しない。

 

壁に叩きつけられても自信を失わなかったマリーが、初めて焦りの表情を浮かべた。

 

マリー 「(見えない斬撃を)なぜ躱す事ができるっ?!」

 

リュー 「さぁ、なんでかな?」

 

マリー 「見えているのか?」

 

リュー 「いや、見えないが……勘?」

 

もちろん、リューの予知能力によるのであるが、予知能力も勘の一種と言えばあながち間違いとは言えないだろうか。

 

予知というのは遠い未来になるほど不確定になるが、リューの能力は直近の未来に自身を襲う危険の予知に特化しており、その的中率はほぼ100%である。

 

さらにプラスして、リューは神眼の能力で相手の心が読める。心の奥深くまで覗くには神眼の能力をフル稼働させる必要があるが、偽装していない殺気はナチュラルに読める。(※)

 

※これに関しては、読まれるのを隠す手段がないわけではない。殺意を悟られないように殺気を隠す必要がある 「暗殺者」のクラスを持っている者が、そのような技術に長けている場合がある。だが、通常は心を読まれるなどという事は想定していないため、そもそも隠す必要性を考えている者はいない。

 

ただもちろん、仮に表面的に殺気を隠す事ができる者であっても、神眼の能力をフルに発揮すれば隠し通す事はできないのであるが。

 

予知は稀に外れる事もある。心を読んでも、偶発的なアクシデントで思った事と違う結果になる事もある。だが、そのふたつの能力を併用すれば、イレギュラーはほとんど排除できる。見えない攻撃を躱す事も、それほど難しい事でもないのであった。

 

いくら見えない斬撃を放っても躱されてしまうため、打つ手なし状態に陥ったマリーは、攻撃が止まってしまった。

 

それを見たリューが言う。

 

リュー 「では、そろそろ反撃させてもらおうか?」

 

リューが剣を大上段に振りかぶる。

 

警戒して身構えるマリー。

 

次の瞬間、パンと音がして、リューの剣がマリーの喉元に突き付けられていた。

 

音がしたのは、リューの剣がマリーの剣を持つ手を打っていたからである。小手打ちからの喉元への突き……マリーはその小手打ちで剣を持つ右手の親指の骨を砕かれてしまった。一瞬遅れてマリーの顔が痛みで歪み、剣は訓練場の土間に転がった。

 

喉に当たる寸前で止められた突きであったが、その後リューは半歩踏み込み、そのまま剣を喉に押し込む。それによりマリーは後退りして腕と喉を押さえ咳き込む事になった。

 

リュー 「真剣なら死んでたな?」

 

マリー 「ぐ…バ(ゲホ)カな……見えなかった……」

 

先程のリューの初撃は反応できないまでも、まだ見えないという事はなかった。

 

だが、今の攻撃はまったく見えなかったのだ。リューが剣を上段に振りかぶったのを見た、次の瞬間には腕を打たれ喉を突かれていたのである。

 

リューの初撃は、速度をわざと落とし、重さを重視したものだった。(そのためマリーにもなんとか見えた。)

 

だが今回は、重さは与えず速度最優先で振られた。手加減なし、リューの竜人の筋力で出せる最高速である。その切っ先の速度は音速を超え、音を発したのだった。

 

リューとしては(速度は速いが)極めて軽く打ったつもりであったのだが、音速を超える速度の棒で(はた)かれ、マリーの手の骨は耐えきれず砕けてしまったのだ。

 

ちなみに、この段階までリューは時空魔法の加速(アクセル)を一切使っていない。

 

強力過ぎる時空魔法に頼り過ぎるのは、なんとなく良くない気がしており、リューはなるべく自分の身体能力と技術で戦うように心がけていたのである。

 

そもそも人間を遥かに超えた竜人の肉体に転生させてもらったわけなのだが、それでも、自身の身体能力を鍛え技術を高めていく事も重要だとリューは感じていた。人は、スタートラインは違っていても、そこから努力する事を怠ってはならないとリューは思っていたのだ。

 

剣聖レイナードに剣の振り方の手ほどきを受けてから、リューは暇を見付けては地道に練習を続けていた。実際の所、リューの剣技はかなり上達していた。

 

剣の技術の向上と、竜人の筋力(人間の筋肉と同じ太さで三十倍、そこからさらに鍛えれば六十倍以上の力を発揮する)とが合わさり、加速を使わなくても地力だけで切っ先の速度が音速を突破するほどに到達していたのである。

 

超音速で飛ぶライフルの弾丸が肉眼で見えないのと同様、この領域になると、リューの剣は来ると分かっていても避けられるスイング速度ではなくなっていた。

 

ただ、黙って振り下ろす、それだけで、並の剣士ではもはや躱す事はできないレベルとなっていたのである。

 

 

 


次回予告

 

マリー戦決着、だが代わりにベティが?!

 

乞うご期待!

 

 


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