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足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します(習作2)  作者: 田中寿郎


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第31話 リューの住む家とスラムの教会のシスター・アン

情報を総合すると、どうやらリュージーンはたった一人でダンジョンを踏破できるドラゴンスレイヤーである。


そんな超人が存在すると言う話は信じられないのが普通であるが、情報を総合すればそういう事になる。多少情報に誇大化された部分があるのかも知れないが、それは追々検証していく必要はあるだろうが、ある程度突出した実力があるのは事実と考えるべきだろう。

 

以前はレベルが低かったらしいが、突然壁を破って化ける冒険者も偶にいるのだ。

 

そんな有望な冒険者を逃がすわけにはいかない。なんとか信頼を取り戻し、戻ってきてもらう必要がある。冒険者ギルドの復権は、まずはそこから始まると言っても過言ではないだろう。

 

どうすればいいのか……

 

ランクアップさせてやるのはどうか?

 

いや、それは既に拒否されている。一応念の為、暇な職員を使いに出してランクアップの件も伝えてみたのだが、リューの返事は「興味ない」というものであった。

 

このままでは、次にリューが冒険者ギルドに来る時は、冒険者ギルドから脱退の手続きをする時、と言う事になりかねない。その前になんとかしなければ……

 

    ・

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キャサリンは、リューに自ら直接会いに行く事にした。

 

最初からそうしておけばよかったのである。

 

リュージーンも冒険者であるのだから、冒険者ギルドに顔を出すのは当たり前、いずれ会えるだろうと思って待っていたが、それは傲慢であったとキャサリンもやっと気づいた。もう相手はギルド所属の冒険者だと思わない方が良いだろう。

 

キャサリンは、受付嬢レイラに、リュージーンの家に案内するよう指示した。レイラはリュージーンと親しそうである、連れていけば説得の役に立つのではないかと思ったのだ。

 

だが、レイラもリュージーンとはそれほど親しくはないという。住んでいる場所も知らなかった。

 

結局、ギルドに保管されている冒険者の登録情報から住所を調べて行くことになったが、キャサリンはこの街に来たばかりで地理に疎いので、結局レイラが案内する事になった。

 

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― ― ― ― ― ― ― ―

 

リューはこの街の片隅、スラムに近い場所にある集合住宅アパートの一室を借りて住んでいた。

 

古くてボロボロの建物の中が、狭い部屋として無数に区切られており、そこに貧しい者たちがひしめき合って住んでいる。そんなアパートである。

 

部屋は狭く、夏は風も抜けず蒸し風呂のような、冬は隙間風で凍えるようなところで、壁は薄くプライバシーもない。

 

他のアパートの住人達と共同生活をしているような状態で、決して快適とは言えないのだが……この街に放り出されてから、リューは何年もこのアパートに住んでおり、すっかり慣れてしまった。

 

慣れてしまえば、隣人との距離の近さも暑さ寒さも麻痺してしまって、それほど不快とも感じない、むしろ居心地良くさえ感じているのであった。

 

リューは最近は大金を稼いでいる―――ドラゴンの素材は一生働かなくともいいほどの金額で売れた―――ので、ボロアパートを出ようと思えばいつでも出られるのだが、居心地悪いと感じているわけでもなかったため、すぐに出たいという発想が浮かんでこなかったのであった。

 

リューは、この日は特に予定がないので昼過ぎまで寝ていた。商業ギルドの依頼も最近はあまり受けていない。冒険者ギルドには最近は顔も出していない。

 

起き出したリューは、アパートの裏にある共同の井戸で水を汲み、体を拭いた後、近所の教会に出かけていった。

 

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― ― ― ― ― ― ― ―

 

そこは、スラム街に近い場所にある貧しい教会。

 

スラム街に流れてきた貧しい孤児などを保護して、孤児院のような事もしていた。

 

街の中心部、貴族街に近い場所には、華美に飾られた立派な教会もあるのだが、そのような教会は貴族や裕福な者しか相手にしない。

 

だが、この教会のシスターは、自らも貧しい身でありながら、貧しい者達を救いたいとスラム近くに住み、親を失くした子供達を受け入れているのである。

 

リューは、この街に一人放り出されてすぐ金を強盗に奪われ、途方にくれていたのであった。その時、この教会のシスターに救われたのだ。

 

その恩に報いたくて、売った素材の代金から、かなりの大金をこの教会のシスターに寄付していたのであった。

 

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― ― ― ― ― ― ― ―

 

リューが教会に寄付した金額は、スラムの人間では一生見る事がないような大金であった。

 

だが、シスターのアンは躊躇も遠慮もする事なく、あっさりとその金を受け取った。

 

シスターアンは金額を理解していないのであろうか? いや、しっかり者のアンがそんなはずはないのだ。

 

大金を手にすると人が変わってしまう人間も多い。もしかしたらアンも変わってしまうかもしれない、可能性は少ないが、ゼロではないとリューは思っていた。

 

だが、リューはそれでもいいと思っていた。

 

強盗に襲われ重傷を負った無一文のリューを助けてくれたのはシスター・アンなのだ。また、これまで、多くの不幸な境遇の子供達がアンに救われてきたのも、紛れもない事実なのである。

 

もし、金を渡したことでアンが変わって、教会や孤児院をやめてしまったとしても、アンが個人的に幸せになってくれるならそれでいいとリューは思っていた。

 

もしそうなったら、孤児院は自分がまた別の形で行えば良いと、そこまでリューは覚悟していたのだが……

 

しかし、シスターアンは何も変わる事はなかった。

 

もらった金も使うことなく隠しておいて、少しずつ、本当に少しずつ、孤児たちのために使うのであった。

 

アンはリューに言ったのだ。

 

「これだけのお金があれば、これまで同様、節約生活を続ければ、向こう数十年はやっていける。だから、もう寄付はいらない。リューは自由に生きなさい。行きたいところへ行きなさい。」

 

と。

 

リューは憧れの冒険者になれたのだ、いずれ街を出る日も来るだろう。その時に、この教会(孤児院)の事は心配いらないから、好きな道を行ってほしい、シスターはそう考えていたのである。

 

 

 

 

とは言え、リューも今すぐ出ていく予定があるわけでもなく。

 

シスターもすぐに追い出したいというわけでもなく。

 

暇がある時にはリューは孤児院に顔を出し差し入れをし、シスターとお茶している。

 

思えば、この世界に来てからリューは酷い人間に多く出会ってきた。良い人との出会いもなくはなかったが、あまり多くはなかったように思う。

 

この街に来て、シスター・アンと出会えた事は幸運な事であったとリューは思うのであった。


 


次回予告

 

シスターも収納魔法に驚く

  

乞うご期待!



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