第117話 逃しませんよ?
王 「今日のところは生かしておいてやろう。いきなり王国貴族が大量にいなくなると、国が不安定になる」
ホッとした顔の貴族達。
だが、王は続けた。
王 「この場にいる貴族はすべて覚えた。事が落ち着いたら、あとで厳罰処分が下るのは覚悟しておくがよい」
宰相 「国家反逆罪は重罪ですぞ」
その言葉に、がっくり項垂れる貴族たちであった。
王 「しかし……リュージーンと言ったか、見事であった」
ソフィ 「そうじゃろ! リューが居れば護衛の騎士団も必要ないのじゃ!」
王 「そうじゃな……宰相、現在、王宮を守る騎士団がおらぬ状態となってしまったようじゃな?」
頷く宰相
王 「リューよ、騎士達が戻るまでの間、王宮の護衛を引き受けてはくれぬか?」
リュー 「成り行き上仕方ないか? 護衛依頼など、気が進まないが……」
リューは王に向かって言った
リュー 「高いぞ?」
王 「無論、見合った報酬は出そう」
リュー 「それと、なるべく早く騎士を呼び戻すなりして終わりにしてくれるとありがたい。俺は自由に行きたいんだ、宮仕えは向いていない」
ソフィ 「リューは冒険者じゃ、きちんと依頼料を払って冒険者ギルドに指名依頼を出すのじゃ」
リュー 「いや、俺はもう冒険者ではない、冒険者ギルドは脱退してきた」
ソフィ 「なんじゃと?! 何故じゃ? 妾のパーティはどうなる?」
リュー 「冒険者でいても利用されるばかりでメリットがあまり無かったのでな。悪いがパーティは別のメンバーを入れてくれ。」
ソフィ 「なぜじゃぁ、妾を見捨てるのか? これからどうするつもりなのじゃ?」
リュー 「少し、旅でもしたいなと思っている」
ソフィ 「ならば妾も行くぞ」
マリー 「ソフィ様、ワガママを言ってはいけません。王女が旅など……」
リュー 「国が侵略を受けている状況で、王族が旅などと言ってられんのではないのか?」
ソフィ 「う……それは……そうじゃ、リューならば侵略者も撃退してくれるじゃろう? そうすれば問題は解決じゃ」
宰相 「左様、先程から見るに、リュージーン殿の力は一騎当千。護衛ではなく、敵軍の撃退に力を貸して頂いたほうがよいでしょう」
リュー 「悪いが、俺は戦争に加担する気はない」
宰相 「国の危機に際して奉仕するのは国民としての義務であるぞ?」
リュー 「ああ、それなら俺は国民から外してくれていい。もともと俺は捨て子で、人間ですらないらしいからな」
王 「人間でない? それはどういう事じゃ?」
ソフィ 「リューは竜人なのじゃ」
宰相 「馬鹿な。竜人など、子供向けの御伽噺の中の話。現実に居るわけがない」
ソフィ 「じゃが、転移を始め、あのリューの強さをどう説明するのじゃ?」
宰相 「そ、それは……」
リュー 「別に信じてもらわんでもいいさ。乗りかかった船だ、騎士達が戻るまでの間、護衛は引き受けよう」
宰相 「だが、拾い育ててもらった事に対する恩義はないのか? 国があってこそであろう?」
リュー 「子供時代にはロクな目に遭ってこなかった。俺を拾った商人は、俺を奴隷商に売り飛ばしたんだぞ? 恩など感じていると思うか?」
宰相 「だが、拾ってもらわなければ死んでいたのではないのか? 生きながらえたからこそ現在があるのであろう」
王 「もうよい、止めよ。リュージーンよ、済まないが、今しばらくの間だけで構わん、護衛を頼む」
リュー 「引き受けよう。ああ、それと、一つ断っておきたいんだが……」
王・宰相 「……?」
リュー 「悪いが俺に礼儀を期待しないでくれ。俺は敬語が使えない呪いに掛かっているんだ。護衛の件は、それでよければ、だな。」
『『『『『『なんじゃと?』』』』』』
『そんな呪いがあるのか?』
『いえ聞いたことがありませんが』
『しかし、あの強さ、代償に呪いのひとつふたつあってもおかしくは』
王 「今はそれどころではない、宰相!」
宰相 「は、そうでした、申し訳有りません」
王 「騎士は城内にはもう一人も居らぬのか?」
宰相 「いえ、おそらくまだ何人かは……確認して参ります。それと、町中にパトロールに出ている者や非番の者も居るはずですので、再編を急がせます」
リュー 「ああ、そう言えば!」
突然リューが声を上げた。
リュー 「忘れてた……」
そう言うと、リューの目が金色に輝き、どこか遠くを見ていた。
王 「……?」
しばらくして、リューが手を翳すと、床に魔法陣が出現し、ギルの姿が現れた。
チャガムガ共和国の工作員であったギルは、作戦が失敗した事を悟って自国に逃げ帰る途中であったのだが、リューの神眼に捕捉され、転移で連れ戻されてしまったのだ。
ソフィ 「……ギル!」
ギルの姿を見たソフィが憎しみの籠もった目で睨みつける。
リュー 「コイツは隣国の工作員らしい。侵略してきている敵軍の情報を色々と絞れるんじゃないか?」
ギル 「クソ、こうなったら」
ギルは腰の剣を抜こうとしたが、その瞬間、掴んだはずの剣は手の中から消えてしまう。リューが亜空間に転移収納してしまったのである。
さらに、ギルの両手両足、そして首が突然、胴体から切り離されバラバラになって床に散らばった。死んだわけではない、断面には魔法陣が浮かんでいる。亜空間を通して五体は繋がったままである。
ギルが手足をバタつかせると、バラバラになった手足がそれぞれ別々に動く。まるで巨大なウジ虫のようで気持ち悪い光景であった。
リューはギルの髪を掴んで頭部を持ち上げ、自分の身体がどうなったかを見せてやった。
ギル 「コッ…バッ…どうなっている……???」
リュー 「素直に情報を吐いたら元に戻してやってもいい。吐かないなら……」
ギル 「なっ、何も話さんぞ……」
リュー「吐かないなら、きっとお前の身体に色々尋ねる事になるんじゃないかな?」
そう言うとリューは首を床に乱暴に置き、落ちていた腕を持ち上げると、小指を掴んでポキリと折った。
ギル 「うむぎゃっ!」
痛みにギルの顔が歪む。
リューはギルの頭を掴むと宰相に向かって投げたが、宰相がビビって避けてしまったため、頭は床の上に落ち、ギルが痛みで悲鳴をあげた。
宰相 「き、騎士団が戻り次第、尋問をさせましょう」
リュー 「それじゃ遅いんじゃないか?」
宰相 「とにかく、残っている騎士を集めてきます! 尋問はその者たちに任せましょう」
宰相は召使いを呼び玉座の間の死体と血を片付けるよう指示して部屋を出ていった。
貴族たちは屋敷に戻って謹慎を言いつけられた。いずれ厳罰が下されるはずである。どんな処罰になるかは分からない。罰金等で済めば良いがそうはならないであろう。爵位剥奪、はたまた死刑まであるかも知れない。最悪の場合、一族全員死刑なども考えられる。それくらい、外患誘致罪は重い罪なのである。
だが、他国から攻撃を受けている緊急時である。前線で活躍すれば恩赦もありうると王の言葉があり、貴族達は急ぎ戦争の準備を始めるのであった。
だが、クーデターに賛同した貴族たちの中に、それとは異なる動きをする者があった。
クーデターを諦めず、王を亡き者にし、チャガムガ共和国にその功績を以って便宜を図ってもらおうと考えた者達である。
現在、王城の警備は手薄になっている。リューがいくら強くとも、一人では守るのに限度があるはず。それに、正面切っての戦闘には強くとも、暗殺には対抗できないであろう。
そして、王城に刺客が侵入してきた
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次回予告
刺客来襲、リューは間が悪い?!
乞うご期待!




