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八、とある場所
使徒の熊民明と修正者のシンドレンコが戦っている。
シンドレンコが衝撃波を打ち、熊のバグを修正していく。
熊 「この程度でやられてたまるか」
勢いよく突っ込み、青龍刀を振り回す。
飛翔してかわすシンドレンコ。
シンド 「それにしても結構バグの数が多いな」
少し顔をしかめる。
熊 「それだけ能力が高いっていう事だろう」
飛び掛かる熊、よけるシンドレンコ。
シンド 「というよりもただ変異が多いという感じだろう」
シンドレンコが衝撃波を打つ。
横へと飛び、避ける熊。
シンド 「いい加減にしたらどうだ」
熊 「お前ごときにやられてたまるかよ」
青龍刀をかまえる。
シンド 「幾らバグが多くても、浮遊石を使えば、お前のことなど、やっつけることができる」
熊 「甘く見るなよ」
熊の身体が少し大きくなる。
シンド 「気のせいか、こいつが大きくなっている感じがする」
熊 「気のせいなんかじゃないさ、俺にはまだまだ成長する余地があるんだ」
不敵な笑いを浮かべる。
シンド 「まあ身体だけ大きくなってもな。最後にはやっぱり俺が勝つ」
衝撃波を打つが、よけられる。
熊 「莫迦だな、お前にはわからないのか」
シンド 「何がだ、負け惜しみか」
シンドレンコが衝撃波を当てる。ソースが浮かびあがる。
立ち止まりシンドレンコを見る熊。
シンド 「えっ」
ソースが増えていく。修正すべき赤文字も多くなっていく。
熊 「気が付いたか」
シンド 「こんな事があるのか」
驚くシンドレンコ。
熊 「俺のバグはまだまだ増えるぞ」
シンド 「何でだバグが増えているなんて」
熊 「傍若無人だからな、俺の血は」
シンド 「そんな、生まれ育った環境の差なのか」
必死に宙に浮かび上がるキーボードを打ち、ソースを直していくが、増えていく赤文字に追い
つかない。
熊 「俺たちは増殖してきた民族だ。貴様らたちのように倫理観なんかでやりたい ことをできない
なんてことはないからな。人の事なんて気にせず、自分のやりたい事だけをやるから、バグも
同じようにやりたい放題なんだよ」
シンド 「それが何だって言うんだ」
シンドレンコは修正を続ける。
集中しているシンドレンコを熊が青龍刀で切りつける。
返り血が熊に浴びせられる。更に体も大きくなる。
シンド 「速度まで早くなっているのか」
少し浮かび上がり素早く動く熊を見て驚く。
熊 「そうかもな、浮遊時の移動速度も増しているようだしな」
シンド 「なんでそんな事が」
驚愕するシンドレンコ。
熊 「使徒として目覚めたのが遅かったせいか、その分成長率も半端ないって事さ」
熊が青龍刀を振り回し、シンドレンコが手を挙げて防御するが、切られる。
血が再び熊へと着く。
シンド 「こんな奴がいたのか」
浮遊石を使い、シンドレンコが空中へと逃げるように浮遊する。
移動したシンドレンコの後方に熊が現れる。
シンド 「早い」
振り返り、再び逃げるシンドレンコ。
熊 「ははは」
再びシンドレンコの後方へと現れ、首を青龍刀で跳ね飛ばす熊。
返り血を浴びる。
熊 「いい血だ、これでパワーアップすること間違いなしだ。
俺の青龍刀はいい切れ味だったろう」
笑いながら地に転がったシンドレンコの首を踏みつける熊。
九、コンピュータールーム
ウインザーが何かを感じて振り返る。
シュトロ「ウインザー、どうした」
ウイン 「シンドレンコの気配が消えた」
シュトロ「やられたという事か」
空中に現れた幻影のようなキーボードを叩くウインザー。
ウイン 「そうみたいだ」
シンドレンコの反応がない事を確認する。
シュトロ「シンドレンコほどの男がやられるなんて」
ウイン 「確かに信じられないな」
再びキーボードを叩くウインザー。
ウイン 「シンドレンコには息子がいるようだな。能力を開花できるのは……」
更にキーボードを叩く。
シュトロ「能力が開花しないうちに息子がやられたらどうなるんだ」
ウイン 「シンドレンコには3人の息子がいる。そのうちの誰に能力が移行するのか、まだ解析できな
い。やられる前に何とかしないと……」
シュトロ「相手の使徒はシンドレンコの息子の存在を知っているのか」
ウイン 「さあわからない。どうにかして修正者になる息子を判別して、こちらへ転送させたいが…」
キーボードを叩き続けるウインザー。
一〇、警察署
峰が祖恵村の元へと行く。
峰 「祖恵村さん」
祖恵村 「ああ峰か、どうした」
存在に気付いて答える。
峰 「宝田さんはどうされたんですか」
祖恵村 「ああ、昨日湯田さんと共にウインザーの元に転送したよ」
峰 「転送……」
わからないという表情を浮かべる。
祖恵村 「ああ、修正者の長のような人だよ、ウインザーは」
峰 「そこに転送って……」
祖恵村 「そうだよな、普通の感覚ではわからないよな。
私だって良く意味がわからないが、修正者たちは不思議な能力を持っているみたいだな」
お手上げという表情を見せる。
峰 「まあ、私も宝田さんと椛島の戦ったところを見ているのですが、幻想を見たような感覚でした
が」
思い出すように言う。
祖恵村 「私も同じだよ」
峰 「それでも祖恵村さんたちが宝田さんを送ったのですよね」
祖恵村 「私は湯田さんに言われて手伝っただけで、ほとんどウインザーの力だ……けれども湯田さんが
いなかったら無理だったかもな」
峰 「湯田さんは修正者ではないのですよね」
祖恵村 「湯田さんは別のようだよ。だが彼らの存在を理解はできているのかもしれない。
昔から少し浮世離れしている人だったからな」
考えて言う。
峰 「実際見た私たちでも、狐につままれたような感覚なのに」
祖恵村 「まあな」
胸 「不思議な方なんですね」
二人とも考えこむように言う。
一一、とある場所
シリウスとアーナンダが話をしている。
アーナン「熊が修正者を倒したみたいですね」
シリウス「そうか、その修正者の血縁は辿れているのか」
淡々と言う。
アーナン「三人の息子がいるようですが、誰がその能力を継ぐかはわかっていません」
シリウス「どちらにせよ、その三人しか能力を継ぐ者はいないのだからな」
アーナン「そうですね」
シリウス「熊をそのまま仕向ければいい、あいつなら三人もろともやってしまうだろう」
アーナン「ただの殺戮好きですからね。私はかかわりたくありませんが……。
ジェックリーンに居場所を探して熊に伝えるように言っておきます」
シリウス「頼んだ」
シリウスが一人、聖堂の中へと進んでいく。
天地創造の絵が描かれている。
膝を着き、祈りをささげる。
シリウス「天地創造の神よ、我々はあなたが作り出した今の世界を尊重している。
私たちの会派では、バグがあるこの世界こそが、本来あなたが想像した世界であり、あなたが
バグを与えた人への思いが、全てであると考えている。
各生物が生まれ、その中で、考えて行動をするという私たち人間を作るまでに、遥かな時間を
費やした事は、あなたが望み、あなたの苦しみを享受した人間たちが、しっかりと存在しなけ
ればならないのだと理解をしている。
その苦しみや哀しみを受け入れられない人たちを、私たち会派は救い、その救われた人たち
が、あなたの苦しみの中で作ったこの世界を享受しなければならないと考えている。
私たちの存在は、バグを修正させないことと、あなたの哀しみを享受しなければならない人間
たちの心を軽くすること。
それによって私たちが冨を受けるとしても、それは当然の事であり、それにより能力が高いこ
とも当然の事だと思っている。
あなたが作ったこの12月31日を迎えているこの世界。この時間軸をもっと過去の物とする
ためにも、バグをそのまま残し、バグを消そうとしている修正者たちを倒し、維持していくこ
とを、改めてここに誓いたいと思います」
立ち上がり天地創造の絵を見上げる。
一二、食堂
熊が食事をしている。
骨付き肉をむしゃぶり、骨を地面へと捨てる。
熊 「修正者をやっつけた後だから、腹が減っていて肉が旨いな」
新たな肉を手に取り、口へと運ぶ。
熊 「うん」
脳裏に入り込んでくるジャックリーンの気配に気が付く。
ジャック「熊、今平気かしら」
熊 「どうした」
不機嫌そうに答える。
ジャック「あなたが倒したシンドレンコという修正者なんだけど」
熊 「ああ、手間取るかと思ったが、そうでもなかった奴か、それがどうした」
関係ないとばかりに肉を食らう。
ジャック「彼の子供が三人いることがわかったわ」
食事の手を止める。
熊 「そうか、それでどの息子に能力が移行するかわかったのか」
ジャック「まだ解析できていないの。だが三人が一緒に住んでいることが分かったわ」
熊 「で、どうするんだ」
今にうちとばかりに肉を食らう。
ジャック「どちらにせよ彼らの誰かに能力が移行するのはわかっているわよね」
熊 「じゃあ全部やっちまっていいのか」
嬉しそうに答える。
ジャック「本当は修正者だけにしたいんだけど、まだ誰に移行するかわからないから、 そのほうがいい
という話になってね。どちらにせよ、誰かをやっても、その能力は他の誰かに移行するわけだ
から、結局は同じね」
熊 「まあ同じなら全部やっちまうよ。昔から相手の一族を根絶やしにするのが俺たちのやり方だか
らな」
嬉しそうに言う。
ジャック「俺たちのじゃなくて、あなたのやり方でしょう」
熊 「そんなことないだろう。常識だよ」
ジャック「私たちにとっては非常識、大昔の考え方よ。今でもそんな考えを持っているなんて、原始的
ね」
呆れるように言う。
熊 「俺たち民族からしたら、相手は徹底的にやらないと、後々どうなるかわから ないからな。反
逆してくる例もあるし」
ジャック「臆病者の理論ね」
ぶっきらぼうに言う。
熊 「後の心配を刈っているだけと言ってくれよ」
笑みを浮かべる。
ジャック「まあいいわ、今回はそのやり方になるのは事実だから、転送できる場所に行 ったら連絡を頂
戴」
熊 「わかった、腹ごしらえが終わったら行くよ」
ジャック「なるべく早くね、よろしく」
ジャックリーンが脳裏から消える。
熊 「へっ、原始的か、まぁそれで俺たちは大きくなってきた民族だからな」
肉を食べた骨を、床へと投げ捨てる。
一三、コンピュータールーム
パソコンに向かい合っている薫。
近づいてくるシュトロハイム。
シュトロ「薫、どうだい」
振り返る薫。
薫 「何となくだがわかってきたよ」
シュトロ「何となくか」
薫 「ああ、ソースの中の正常なコードパターンがわかってきたからな」
シュトロ「そうか、じゃあこんな問題はどうだ」
パソコンの中にソースが書かれる。一部が赤字になっている。
薫 「バグが赤くなっているからわかりやすいな」
キーボードを叩く薫。
シュトロ「実践でも同じ状態になるよ」
笑みを浮かべる。
薫 「樺島と闘っている時に見えたのがこれだったな」
思い出す薫。
シュトロ「そうだ、ウインザーが修正者のプログラムを作る時に開発した物だからな」
薫 「修正者が書き換え作業を戦っている最中にするから、やりやすい方式を作っ たんだろうな、
さすがウインザーだ。これでいいだろう」
エンターキーを叩く。赤字になっていた文字が修正されて、すべてが黒字に なる。
シュトロ「そうだ、結構覚えが早いな」
薫 「ただどのくらいのパターンがあるんだ」
薫が不安がる。
シュトロ「さあ、俺にはわからないな。最悪の場合には浮遊石からウインザーに連絡が 来ることになっ
ている。ウインザーならばすべてのパターンに対応できるだろう」
薫 「さすがだな」
笑みを返す。
シュトロ「ああ一緒にいるとあの才能はびっくりするよ。さあもう少しだけコードを覚えておいてくれ」
薫 「わかった」
軽く手を挙げて応える。
一四、山
山の中を湯田が歩いている。
湯田 「年寄にはしんどいな」
一度立ち止まり、来た道を振り返る。
湯田 「それにしても、俺は、なぜこの山に惹かれるんだ」
水筒の水分を取り、辺りを見渡す。
湯田 「だが、もう少し先に俺を呼ぶものがあるはずだ」
歩き出す湯田。
一五、とある場所
聖堂の中にシリウスがいる。
天地創造の絵を見上げる。
シリウス「生み出したくなかった生物の最終形態として生まれた人間の力に頼らざるを得なくなった神
よ、今何を考えているのか……」
少し宙を見てから聖堂を出ていく。
一六、競技場
100メートル走が行われている。
一位の人間がゴールテープを切る。
インタビューを受ける一位の選手。
選手 「勝てたことを、神に感謝します」
競技場の一番上の席で見ているマリンガとフレイジャー。
マリンガ「神に感謝か、ある意味バグの力の影響があるから、そのとおりかもしれないが……」
フレイ 「だがそのバグを活かすにしても、個人の頑張りが必要だ。
結局は神のおかげなんかじゃない。本人の努力だ」
ふんずりかえるように言う。
マリンガ「だがな、結局は突然変異したバグを持っていない人間が努力したところでたかが知れているだ
ろう」
フレイ 「バグの能力はその人間の努力によって更に書き換えられる。
やはり人が関わらなきゃ無理だ」
マリンガ「確かにそれもあるが、やっぱりバグの力は底知れないという事さ
持っていない人間はどうやっても勝てない」
フレイ 「確かに俺たちのような人間ばなれした能力は、完全にバグによって生み出された物だろうが
な。
それにしても神は俺たちのような生物が生まれることまで計算できていなかったわけだから
な」
思わず笑う。
マリンガ「それを言ったらおしまいさ、人間どころか、俺たちの元となるアデロバシレウスですら、創造
の中には入っていなかったわけだしな」
フレイ 「まあな」
ため息をつく。
一七、コンピュータールーム
シュトロハイムの脳裏にウインザーが連絡をしてくる。
シュトロ「何かあったのか」
ウイン 「薫の様子はどうだい」
シュトロ「結構いいペースで読み込んでいるよ」
ウイン 「さすがだな」
シュトロ「まあ修正者に名を連ねるくらいだからな、これくらいはやってもらわないとな」
微笑む。
ウイン 「確かに、実践では使えそうか」
シュトロ「それなりだとは思うが、強敵はまだ無理かな、どうしてだ」
ウイン 「また一人修正者の能力が消えた」
真剣な表情を見せるシュトロハイム。
シュトロ「継承する人間もいなかったってことか」
ウイン 「そういう事だ」
シュトロ「これで勢力図はどうなった」
ウイン 「更新された数字では、使徒が9名、修正者が5名という事になる」
シュトロ「お互いに減ってきたな」
納得する表情を見せる。
ウイン 「二人がかりだったような、そしてまだその二人は一緒にいる」
シュトロ「かなり強敵なのか」
ウイン 「そうだな、その二人のバグを消してもらえないか」
シュトロ「俺の出番ってことか」
頷く。
ウイン 「薫と二人で行ってももらいたい、後方で私も支援する」
シュトロ「わかった、薫と一緒に転送ルームへと向かおう」
ウイン 「よろしく頼む」
シュトロハイムがパソコンをいじっている薫を迎えに行く。
シュトロ「薫、どうだい」
軽く話かける。
薫 「いい感じかもな」
手と止める薫。
シュトロ「君は、格闘はそれなりにできるのか」
薫 「いや、俺は今まで何もやったことはないよ」
首を振る薫。
シュトロ「そうか、そういえば樺島をやっつけたのも拳銃を使ってだったか」
薫 「ああ、銃なんかも使ったことはないから、まぐれもいいところだったけれどな」
思い出して言う。
シュトロ「薫は運がいいのか、ウインザーが重宝するわけだ」
微笑むシュトロハイム。
薫 「運がいい。ある意味そうかもしれないが、修正者として巻き込まれた百合がいるって意味では、まったく運があるようには思えないけどな」
真顔になる。
シュトロ「確かにな。さて、そろそろ行こうか」
薫の肩に手を当てる。
薫 「使徒と戦うってことか」
眼に力が入る。
シュトロ「ああ、相手は二人だ」
薫 「二人、俺が一人でいくのか」
不安そうな表情を見せる。
シュトロ「いや、今回は俺と一緒だ」
薫 「そうか、よろしくな」
立ち上がり握手をする二人。
転送ルーム。シュトロハイムと薫が入ってくる。
シュトロ「ウインザー、来たぞ」
意識に話しかける。
ウインザーが空間に映像で浮かび上がる。
ウイン 「シュトロハイム、薫、今回の相手は強敵だ。頼むぞ」
薫 「頼むか、できる限り頑張ってみるよ」
シュトロ「俺がいるから任せておけ」
笑顔で言う。
ウイン 「じゃあ行くぞ」
シュトロハイムと薫が転送装置の真ん中へと進む。
光りが転送装置を覆う。
激しく光り、光りが集約され、消えると二人の姿が無くなる。
一八、シンドレンコの家
テレビを見ているシンドレンコの息子(長男、次男)二人。
自室にいるシェフチェンコ(三男)。
インターホンが鳴る。
長男 「何だよ、いいところなのに、ちょっと見てきてくれよ」
次男に言う。
次男 「いいところなのは俺も一緒なのに、仕方ないな」
次男が立ち上がり、玄関へと向かう。
次男 「はい」
玄関を開けると熊が青龍刀を持って立っている。
驚いて玄関を閉めようとする次男。
ドアに足を入れ、力ずくでドアを開けたと当時に青龍刀を振るい、首をはねる。
次男が倒れ、大きな音がする。
長男 「何暴れているんだよ」
長男が立ち上がり、玄関へと向かう。
首を切られ、横たわっている次男に驚く長男。
長男 「何だお前は」
熊を見る長男。
すぐに青龍刀を振るい、長男も倒れる。
自室にいるシェフチェンコが不思議そうに振り返る。
シェフ 「何だか下が騒々しいな、何かあったのか」
立ち上がるシェフチェンコ。不安なのか胸にあるペンダントを握る。
二階へと階段を上がる熊。
シェフチェンコが壁にかけられたフェンシングの剣を取る。
ドアを蹴破る熊。
シェフ 「誰だ」
熊を見て身構えるシェフチェンコ。
一九、コンピュータールーム
ウインザーが気配に気が付く。
ウイン 「こっちが先か」
二〇、シンドレンコの家
何も言わずに青龍刀を持って襲いかかる熊。
避けるシェフチェンコ。
シェフ 「こんな奴が、なんで家に」
驚きながら熊の攻撃をよける。
胸のペンダントが光り、ウインザーが空中に映像として現れる。
一瞬動きを止める熊とシェフチェンコ
ウイン 「ペンダントをあいつに向けるんだ」
シェフ 「何だ、この状況は……お前は」
驚きながら後ずさりをするシェフチェンコ。
ウイン 「いいからペンダントを」
何だかわからずにペンダントをつかみ、熊に向ける。
衝撃波が熊に当たる。
熊 「こいつが修正者か」
熊がシェフチェンコを見る。
シェフ 「修正者って、いったい」
状況が把握できない驚きを見せるシェフチェンコ
ウイン 「説明している暇はない。ペンダントから出る衝撃波をあいつに当てるんだ」
シェフ 「だから何なんだ、これは」
混乱しているシェフチェンコ
ウイン 「相手の攻撃をよけながら、衝撃波を」
わからず、言われるまま再びペンダントを握り、衝撃波が出る。
熊の前にセキュリティのソースが浮かび上がる。
シェフ 「なんだ、この文字は」
宙に浮かんでいる文字に驚くシェフチェンコ。
ウインザーが修正を加える。
熊 「こいつが修正者の長なのか、映像だけで現れて修正していくとはな。だがこ の目の前の男をやってしまえば問題はないだろう」
熊が襲い掛かる。シェフチェンコが剣で避ける。
熊 「そんな細っこい物で防げるかよ」
再び襲い掛かる。青龍刀を避けた剣が折れる。
シェフ 「剣が……」
手元を見て驚くシェフチェンコ
ウイン 「まずはこっちか」
ウインザーがキーボードを叩く。
剣先がビームのように光る。
シェフ 「一体、さっきから何なんだよ」
困惑するシェフチェンコ。
熊 「物理的な物まで操っちまうと、さすがだな」
ウインザーがキーボードを叩く。
ウイン 「セキュリティは弱そうだな」
一瞬熊が光る。
熊 「このやろう、一発で俺のセキュリティを解きやがった」
ウイン 「シェフチェンコ、更に衝撃波を与えるんだ」
シェフチェンコがペンダントを掲げる。
今度はバグのソースが浮かび上がる。
ウインザーがすぐに修正を加える。
熊 「こいつ、早いな」
青龍刀をシェフチェンコに向けて振るう。
剣のビームのところで避ける。
シェフ 「こいつさっきよりも遅くなった」
驚いて飛びのくシェフチェンコ
ウイン 「さっきの修正で速度を抑えられたみたいだな」
シェフ 「本当に何が起きているんだ」
熊とウインザーを交互に見る。
ウイン 「よくわからないだろうが、物理攻撃は避けて、ペンダントから出る衝撃波を 当てるんだ」
シェフ 「何だかわからないけど、これをやればいいってか」
ペンダントから衝撃波を与える。
ウインザーが浮かびあがったバグを修正する。
熊 「こいつの親父も驚いていたようだが、俺のバグは多いみたいだからな、少し くらい修正を加
えたくらいで、どうにでもなるさ」
熊が襲い掛かる。
シェフチェンコがギリギリ避けるが、腕を軽く切られる。
熊 「もらいだな」
青龍刀についた血を、自らの身体につける。
ウイン 「こいつ、血によってセキュリティじゃなくて、これでバグが増えるのか」
ソースを見て、行が増えたことに驚くウインザー。
二一、草原
辺りに人影がない草原
マリンガとフレイジャーが現れる。辺りを不思議そうに見渡す。
マリンガ「もしかして俺たちは誘導されたのか」
フレイ 「かもしれないな、いよいよ最後の戦いの時が来ているのかもな」
薫とシュトロムが現れる。
シュトロ「ウインザーが選んだのはここなのか」
辺りを見渡すシュトロハイム。
薫 「周りに何も影響を及ぼさない場所っていう事か」
シュトロ「さあ薫、強そうな二人組がきているぜ」
マリンガとフレイジャーを見るシュトロハイム。
フレイ 「お前たちか、俺たちを呼んだのは」
シュトロ「ああ、ここで一気にお前たちのバグを修正して、人数でも押し切れるように してやるよ」
笑みを浮かべるシュトロハイム。
マリンガ「そうか、まあいいや、俺たちの強さを味わってもらおうじゃないか」
不敵に笑うマリンガ。
シュトロ「薫、できる限り俺の後方からあいつらに衝撃波を与えるんだ。まずは相手の セキュリティを
破らないことには、バグまでたどり着けないからな」
薫の前に立ち言う。
薫 「まずはセキュリティを破ることからか、わかった」
シュトロ「ウインザーの気配が感じられないから、今は薫自身の力でやるしかないようだ。
できるか」
薫 「わかった、できる限りやってみる」
浮遊石を手に、キーボードが浮かび上がる。
シュトロ「さて、じゃあやるか」
小型の弓を取り出すシュトロハイム。
マリンガ「弓使いか、ちょっと面倒だな」
フレイ 「お前の速さなら何とかなるだろう」
マリンガ「肉弾戦が得意なフレイジャーよりは向いているかもな」
フレイ 「頼むぜ、かき回してくれれば、その間に俺が近づく」
両刀刃のナイフを拳で握る。
マリンガ「わかった」
マリンガがナイフを持ち、瞬間的に動く。
シュトロ「速いな」
向かってくるマリンガに弓を打つ。
左右に避けながら走って来るマリンガ。
浮遊石を握り、衝撃波を飛ばす薫。
シュトロハイムが二発目の弓を放つ。
両方とも避けてくるマリンガ。
マリンガ「この程度なら、何とかなるぜ」
シュトロハイムの横まで来て、ナイフを振るうマリンガ。
弓でナイフを受け止めるシュトロハイム。
マリンガに薫が放った衝撃波が当たる。
マリンガ「何」
薫 「まずはセキュリティだ」
コードを見て、浮かんだキーボードを叩く。
一瞬マリンガのセキュリティが弱まる。
マリンガ「ちぇ、でもまだたいした影響はないな」
体の動きを確認する。
薫 「結構セキュリティも強そうだな」
マリンガが薫に近づき、ナイフを振るう。
避けるが、軽く切りつけられる薫。
その際に衝撃波を当てる薫。
マリンガ「こいつは全く、他の能力はなさそうだな」
笑みを浮かべるマリンガ。
シュトロ「薫、大丈夫か」
薫 「大丈夫、ここでもう一発」
キーボードを叩く薫。
フレイジャーがシュトロハイムの目の前に来ている。
フレイ 「お前たちの相手はマリンガだけじゃないんだぜ」
フレイジャーが拳を振るい、避けようとするシュトロハイムの顔の軽く切り 裂く。
二二、シンドレンコの家
数か所切られているシェフチェンコ。
ウイン 「大丈夫か」
シェフ 「ええ」
額から冷や汗を流す。
正面に向き合う熊。
熊 「結構いい具合になっているじゃないか」
笑う熊。
シェフ 「そんな簡単にやられてたまるか、俺だってダテにフェンシングをやっていた わけじゃないん
だ」
剣を振るうシェフチェンコ。
青龍刀で受け止めて、そのままはらい、軽くシェルチェンコを切りつける熊。
熊 「ほらほら、いい感じだぜ」
攻撃を終えた熊の肩を剣で刺すシェフチェンコ。
シェフ 「そんな無駄な動きが大きい奴、とらえてやるぜ」
一瞬動きの止まった熊に衝撃波を当てるシェフチェンコ。
キーボードを叩くウインザー。
熊 「また修正されたか、まあ一個や二個のバグくらいくれてやるよ」
青龍刀がうねる。
二三、草原
マリンガのナイフに数か所切られている薫と、顔が数か所切れているシュト ロハイム。
マリンガ「こいつは全くの奴だぜ、さっきからセキュリティをかなり上げさせてもらっ ているぜ」
フレイ 「こっちの奴は弓だけじゃなく、格闘もできるようだ。
だがちょっとずつ俺もセキュリティを上げさせてもらうぜ」
再び拳のナイフで襲うフレイジャー。
薫が衝撃波をマリンガに当てる。
キーボードを叩こうとする時に襲い掛かって来るマリンガ。
ギリギリで避ける薫。
薫 「ちくしょう、コードを突破する作業ができない」
シュトロ「ウインザーがいないと厳しいか」
二人とも焦りの表情を見せる。