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施設という戦場
「……冗談じゃない」 杉山は事務室の椅子に身を沈め、額に手を当てた。
施設内の空気はすっかりサバイバルモードで、信頼より先に疑念が育つような状況だ。
(これでは、施設が空中分解しかねない)
だが、その一方で、心のどこかでこうも思っていた。
(俺だって、通院の付き添いは何度もした。誕生日に手作りの贈り物だって渡した)
善意と打算の境界線は、時にぼやけている。
彼は机の引き出しから、一冊の日誌を取り出した。 そこには、日々の記録が詳細に綴られている――そして、都合よく編集された形跡もあった。
(これを出したら……ワンチャンあるよな?)
杉山の脳裏に、葛藤が渦巻いていた。