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選ばれし者の自負
「三宅さん、あなたはどう思ってるの?」 陽子は、休憩室でコーヒーを飲む結花に声をかけた。
「……別に、私は」 結花は静かに首を振った。
「ふうん。そうやって控えめなふりしてるけど、あなた、けっこう滝沢さんに好かれてたよね」
その笑みは、どこか刺のあるものだった。
(この人、素で煽ってくるな……)結花は心の中でため息をつく。
(この中で一番尽くしてきたのは、私よ) 陽子の心の奥底には、積み重ねてきた日々への自負と、報われなかった過去への渇望があった。
(結花は若いし、人当たりはいい。でもそれだけじゃ、老人の最期は任せられない) 言葉に出さずとも、陽子の視線が雄弁に語っていた。