表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微笑みの遺言  作者: 鳳龍麒亀
第一章
1/9

遺言の衝撃

介護施設内の空気が変わったのは、封筒の封が切られた瞬間だった。


生前“ミスタービル王”と呼ばれた資産家、滝沢喜三郎の通夜の翌日、事務室の簡素な丸机を囲んでいたのは、施設長、副施設長、そして数名の職員たち。


 「では、読み上げます」


司法書士の高峰卓が淡々とした声で、滝沢の遺言書を読み上げていく。息子への配慮、孫への想い出、そして最後の一文。


 ――『私の全財産は、私に最もよくしてくれた施設職員一名に譲渡する』。


その言葉が読み上げられた瞬間、


「……え?」思わず、滝沢の最期を看取った介護士の三宅結花が小さな声を漏らした。

 

「ちょ、ちょっと待って……職員の“誰か一人”に、三億って……嘘でしょ?」隣にいたベテラン介護士の山根陽子が、信じられないという顔で繰り返す。


「名前は?」副施設長の杉山昇が、抑えた声で尋ねる。


 高峰は無表情に首を振った。 「氏名の記載はありません。遺言執行者として、調査の上で決定します」


ざわめきと、互いを牽制するような視線。  

そこには、目に見えない戦いの火花が、すでに散っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ