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雨上がりの昼下がり

 今日は朝から雨だ、会社までの道のりは、駅まで歩いてそこから電車で、また歩き。

駅まで歩いていくのは、距離が無いからいいのだけど、駅から会社までの登り道がかなり距離もあるし勾配もきつい。

そのうえ、雨まで降っていると大変だ。


 傘に小粒の雨がぶつかる。パラパラという音すら立てず、静かにその雨粒は傘に姿を消す。


 春の季節になり、雨が降るとじめじめする、気温自体が高くなくても、ほのかに汗をかいている。

靴が、雨に濡れいつもよりも重い。いやそれは言い訳で、普通に足取りが重いだけだ。

気が重い、朝から雨の日は目覚めも悪いから、会社に行きたくなくなってしまう。

それに、今日は友達が、風邪で休んでいるので一人で会社に行かねばならない。


 駅の改札は、人があふれかえり、より空気の湿っぽさが増している。

改札を抜け、エスカレーターでホームまで降りていく。エスカレーターで追い抜いていく人がいる。まさか、もうそんな時間になっているのだろうか。

ふっと、スマホを見ると電車の来る時間2分前になっている。

雨だと、歩く速度がゆっくりになってしまうな…


 ホームに、雨の音と電車が向かってくる音が響く、様々な音が煩くイヤホンからの音はさえぎられる。

駅付近は、様々な音が鳴り、音量も大きい私のイヤホンのノイズキャンセリングでは貫通してしまう。

電車の扉が私の前で止まり、車内から人があふれるように出ていく。

私がいつも乗る駅は比較的栄えていて、工場もたくさんあるので、ここで降りる人も多い。

席に座れるほど、人が降りていくわけじゃないけど満員電車ではなくなるから、ありがたい。


 車内には、冷房が少し効いているため、涼しい。

冷房じゃなく除湿かもしれないが、気持ち悪いほどの蒸し暑さはない。

いつも、扉の近くに立っているので景色がきれいだが、今は窓の落書きしか見えない。


 電車に乗る時間は、二駅間なので長くはない。

先ほどまでの快適な、空気はどこに行ってしまったのだろうか?

降りればたちまち、重く湿った空気が私の体に付きまとう。

改札へ向かう人だかりでより、暑苦しく息苦しい。


改札を抜け、会社に向かって歩いていく。重い足取りで、ゆっくり歩いていく。

出勤時間には、まだ全然余裕があるが、もしかしたら間に合わなくなってしまうかもしれない。

すこし、早歩きをするが、すぐにまたゆっくりになってしまう。

雨という天気は、自分の気分も雨のような、湿っぽい気分にされる。


 恐らく、今日が晴れだったら、ここまで友人の存在を、重要視しなかっただろう。

晴れの日は、景色がはっきりと色づいて、カラフルな世界に見えるが

雨の日は、景色は灰色じみていて、昔のブラウン管テレビのような世界に見える。


 約15分ほどかけて、やっと会社に向かう山道のふもとまで来た。

いつもであれば、8~10分で来れる場所なのに、やはりゆっくりになってしまった。

ここからの、山道が大変で、特に雨の日はとても滑るし、暗く2回転んだことがある。

足元に気を付けて歩こう。


 カエルの声が聞こえる。もうそんな季節かと思い知らされる。

つい最近まで花をつけていた桜の木の新緑葉に雨が落ち、パラパラと傘にあたるよりも高く、軽い音を奏でている。


 会社の最近新しくした鉄の門に 雨粒が当たる。その音は鉄琴のような、音色を奏でている。

まだだれも来ていない、おかしい私が一番最初なんてことは今までなかった。

会社の門を開け、施錠された扉を開ける。

いつもの会社の、騒がしさはなく、部屋の中には窓に打ち付ける雨の音しか響かない。


 何かおかしい、今日は祝日とかだったのだろうか?

いや、カレンダーを確認しても、そんなことはない。

なぜここまで人がいないのだろうか…


 予定表を確認する。

今日は、会社点検日、書いてある。

つまりは、出勤時間を遅らせてでも問題がないということだ。


もうちょっとゆっくり来てもよかったか、おそらくみんなはお昼出勤だろう、その間私もぶらぶらしてようかな、でも雨だしなぁ

結局会社の中で、ひとりぼっちか

普通に仕事しよ


一人さみしい、オフィス内に心地よく雨の音が響く。

いつもより、仕事が捗っている気がする。

一人だからだというのもあるだろうが、いつもなら30分ほどかかっていたであろう、作業が18分ほどで終わった。


時計をふと見る、まだその長針は10の数字を少し過ぎたところにある。

やはり、時間の流れが長く感じる。

すこし、仕事にも飽きてきたので、ちょっと会社を歩こうかな


この会社は、2階建てで横に広いため、かなり歩く、薬品庫から開発室までも距離があるため、毎回歩かないといけないので大変だ


あれ?こんな裏庭あったんだ…

しらない場所結構あるんだな…


 食堂には、誰もいない異様な静けさがある。

いつもこのくらいの時間から、食べに来る人はいるだろうから

まるでパラレルワールドに来たかのような錯覚に落ちいる

孤独感をかじるが、怖くはない。


また、裏庭に返ってきた雨はもう止んでいるようだ、先ほどまで激しく窓に打ち付け、音を出した雨粒もいまは、ぽたぽたと上の壁から流れ落ちてくるだけだ。


雨上がりの昼下がり、会社に私以外の声が響き始める。

時刻は12時すぎ、いつもの景色

変わらぬ光景、大きく変わらない、それが一番

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