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18.電話その2

『なに泉璃、どしたん』


「鈴木がいじめられているそうです」


『はあ?』


 夜遅く、11時過ぎに電話すると、シャカシャカと音がした。歯磨き中だったようだ。


『ちょっとうがいする』


「聞いてるだけで大丈夫です」


 私は今日あったことを話した。「あいつに会った?」と訊かれたので本題には関係ないけど授業についても報告しておく。


『泉璃よくあいつの授業受けられるよね、なんで』


「真っ黒に見えてたらさすがに受けてませんって」


 その色の差も解決しなきゃいけないが、まずそこじゃない。


「鈴木くんのこと、おかしくないですか?」


『え?ああまあ』


 なんだその曖昧な返事。月緋さんらしくない。


『いじめっ子っていつかそうなるもんよ』


「仕返し、ですか?」


 聞き返すと、『鈴木の宿命だね』と面白そうに言ってきた。


「でも、犯人候補の鈴木くんがいじめの被害者だとして、その状態で鈴木くんは盗むと思いますか?」


『泉璃が言うにはやな奴なんでしょ?逆上して仕返しの仕返しとかするんじゃない?』


 私と同じこと考えてる。けど、その手段にわざわざ薬品を選ぶだろうか。ましてや、数週間前に行動に移すだろうか。今も、被害に遭っているのは鈴木くんのように見える。


 今日の鈴木くんも様子が変だった。首の後ろが、赤くて、ヒリヒリ。首にタオルを巻いて……。


「……タオル?」


 あのタオル、白かったけど、なんかごわごわしてなかった?


『泉璃?』


「月緋さん。タオルに塩酸を染み込ませることってできますか?」


『不可能ではないんじゃない?けどタオル傷む気がする』


「誰かが、鈴木くんをいじめるために、タオルに塩酸をかけていたなら、」


『そいつが犯人の可能性が高い』


 なるほど。犯人は元いじめられっ子か。有り得る。


「でもそうなると、犯人探しは振り出しに戻りますね」


 私の努力はなんだったんだ。鈴木くんを恨んでる人なんて山ほどいる。すると、『いや、』と月緋さんは言った。


『まず疑うべきは薊じゃね』


 ああ、薊くん。


『自分の能力に自信持ってこーぜ泉璃』


 涙が流れるような数字は、大事になりかねない。彼ほど流れている数字は、あの女以来見ていない。


『明日からそいつをマークしとけば良くね?』


「そうですね、私も数字を確認してみます」


 そう言うと、『泉璃はいいよ』とスマホから言われる。


『あいつに任せておけば?今日も監視してたらしいけど、盗みに来なかったって松さん言ってたし』


「明日は先生休みです。授業持ってないので」


『まじかよ』


 鮎川さんを幼なじみに持つ希葵からの情報だ。


 月緋さんは『ええー』と嫌な顔をしていそうだが、少し踏み込んだ捜査に、私は内心ワクワクしていた。

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