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13章「鏡の騎士」

 13章「鏡の騎士」


 早風の遺体を丁重に葬ってやりたかった。

 穴をほってやろうかそれとも顔になにかかけてやろうかとおろおろとしていたとき、リュックの中からケタケタと笑い声が聞こえてきた。

 頭にきて首を取り出すと、首の目玉が地面に落ちた。

 そのままカっと頭に血がのぼり、おもいきり地面に投げつける。

 ぐしゃりと音がして首の歯が何個か砕けて落ちた。

「ひゃひゃひゃ。ああ面白い。もうあなたは逃げられないわよ?」

「なにが面白い!」

「これはわたくしを拒否した罰よ」

「なに?罰?」

「ほんとうにおバカね。わたくしがなんの考えもなくあなたを自由に動かしていたとおもうの?わたくしはわたくしの欲求を満たしてくれるもののために動くのよ?」

「なにをした・・・?」

「わたくしの唾液はね。特殊なのよ?わたくしの唾液は魔力が込められている。その残滓をかげる魔物がいる。だからあの円卓機関とかいう馬鹿な人たちはウロウロとあつまっていたのよ?あの山中とかいう人は魔物たちと手を組んでいる。あなたを追わないのももう決着がついているからなの。ああ。愚者。ここまで愚者だとは。あなたは騎士にも王にも向かない」

「・・・まさか・・・まさか・・・」

「ようやくわかったの?」

「くる・・・のか・・・」

「もうここへくるわ・・・。あの戦士が・・・。ああ着て頂戴。わたくしの騎士・・・。わたくしを満たして・・・」

 目玉もとれて頭も剥げて、腐臭をはなつ首。興奮したその化け物は恍惚とした顔で片方だけの目をらんらんとさせながら笑っている。

 俺は頭をかかえて取り乱してしまった。

 しばらしてからようやく気付いた。そうだ。なんだってあそこに山中がいたのか。罠にかかったんだ。

 俺は早風の遺体のそばに腰を下ろした。そしてなにが最善手か考えた。

 いや、考えている時間さえないのかもしれない。エナトは樹海といったが落ち合うポイントはどこか不明だ。肝心なときにエナトからなんの連絡もない。

 だが、ここを離れようにも追跡される。山中たちが来る。いや首の話しぶりからして例の「鏡の騎士」とかいうやつかもしれない。

 早風の遺体は遅かれ早かれ見つかるだろう。

 選択肢は限られている。

 首を乱暴につかむと俺は口から唾液がでないように服を破いて口につめてリュックのなかにいれて急いで樹海の奥へ奥へと走った。

 後ろで首はもごもごと狂ったように笑っていた。

 これは窮地だ。あまりにものんきであった。自分は冷静でやつらを出し抜いているとどこかで甘い考えがあったんだ。くそ。この首はやっかいだ。捨てたい。しかし捨てたらもっと大変なことになる。

 なんて厄介な存在なんだ!

 厚い溶岩層の上に土壌が堆積しそこに根がはっていてその倒木を糧にしてさらに樹木が生えていて複雑に根が絡み合っている。

 すすむにつれて樹木のかげで光が差しこまくなる。どこへ向かっているのかがわからなくなるくらい走り続けた。

 気づけばミイラの姿で、甲冑が外れていた。魔力が切れたのか。

 奥へ大分来た。

 とにかく、エナトと合流すればなんとかなる。そのはずだ。しかし、首を持っている。発信機がついているようなものだ。

 どこまで逃げられるかわからない。もしかしたらこの鬱蒼とした森のなかを彷徨う羽目になるのかもしれない。

 すると、紙の蝶がひらひらと俺のまえをとんで肩に止まった。

 あわててつかんでなかみをあけようとして声をかけられた。

「ああ。小島守くんだね~ご家族が探していたよ~いやあ~みつかってよかったよかったぁ~」

 知らない登山者のような恰好をした、人がよさそうな顔のおじさんだった。

 俺は紙をポケットの中に突っ込んだ。

 敵だろうか。敵かもしれない。

 俺は身構えた。

 そのおじさんの後ろからひーひー言いながら、金髪の女性が続いて現れる。

 くたくたに疲れた足取りだった。

「おお~アロンゾ。見つけたぜよ~まったくこんなとこまで来て~心配したんだぞ~」

 それは少佐であった。あの女教師で俺の顧問の柿崎少佐だ。

 登山者のような服装で手には杖をもちよたよたと歩いている。

「え?少佐?え?どうして・・・」

 俺はなにか幻覚でもみているんじゃないのか。

「どうしたのさ。ハトがショットガン食らったかのような顔して?」

 と少佐は首をひねった。

「いや、ショットガンならもっととんでもないことになっているだろ」

 と俺はおもわずつっこむ。

「おお~。確かに~!かっかっかっかっか。んじゃ鳩がマスケット銃食らったような顔がいいかな~かっかっかっかっか」

 と少佐は笑った。この笑い方といい。ほんとうに・・・。

「しょ、少佐か?少佐なのか・・・?」

 その独特な笑い方は少佐だ。少佐がなんでここにいるのか。

「なにを言っているんだね?視力大丈夫かい?あたしは少佐。君の教師。柿崎少佐だよ。みてわからないかなぁ~?さ、て、は、家出が長くてこの美貌に目がくらんだのかニャ?」

 と少佐はセクシーポーズをとりながらからかうように言った。

「は?え・・・?俺の顔おかしいだろ?ミイラだぞ?」

 少佐ともう一人のおじさんは互いに顔を見合わせる。

「何言っているんだね?君は?たしかに顔は泥だらけでひどいけど・・・そこまでやせていないぞ?さすがに・・・」

 とおじさんはぼんやりといった。

「え?」

「鏡見てみるかね?」

 とおじさんはリュックから手鏡をだして俺にみせた。

「お、俺の顔だ・・・」

 手をみてもミイラではない。なにがどうなっている?

「うーむ。よし!アロンゾ!大分重症みたいだし帰るぞ~」

 と言って少佐は俺の手を取った。

「少佐。なぁ、どうなってんだ?俺、俺、ミイラで鎧をつけるようになって。エナトが。首が俺をだまして・・・記憶の欠片が・・・」

 俺はうまく説明できない。

「小島守くん・・・」

 としんとした静かな声で少佐は俺の名を呼んだ。

「な、なに?」

 少佐はうんうんと俺の顔をじっと覗いて頷く。

「うむ。ドン・キホーテよ。小島守くん。失恋した君は突然甲冑をつけて早風君に喧嘩を売ったたけど敗れて静香ちゃんが魔女に洗脳された~と言って討伐のたびにでるといって試験を抜け出して家出中なんだよ?そのだいぶショックが強くて現実が受け入れられないかもしれないが、これが現実なんだ。いいね?」

「は?家出・・・?」

 と俺は素っ頓狂な声がでた。

「うん。家出。んで、捜索に出ていて直江ちゃんがもしかしたら樹海かもって。そこで我々は君を探しにここまできたのよ」

 と少佐は笑いながら言った。

「・・・」

 俺は黙ったまま考えてしまう。

 どうなっているんだ?

 本当に俺は気が狂っていたのか?

「樹海はほら魔女の館があるからって意味わからんけどここに昔行きたいって直江さんが覚えていて」

 と少佐は説明を続けている。

「だまされないぞ?俺をだましているんだろ?」

 俺は少佐から距離をとる。

「だーかーらーもういいから。帰るよ!」

 少佐は俺の手をひっぱっていく。

「なぁ円卓機関は?やつらは?山中がくるんじゃないのか?」

 俺はあたりを警戒する。

「機関も組織もそんなものはいいから!もうー!妄想も大概にしなよ~直江ちゃんに怒られるよ」

「直江が来ているのか?」

 エナトじゃない?いや、エナトはいない?俺の架空の存在?

「なぁ、エナトは?」

 と俺は聞いたが少佐はなんだい?それ?と興味なさそうにしている。

「てか、みんな来ているの?」

「当り前じゃないか。みんな来ているよ。君が心配できているんだよ」

 と少佐は俺の頭をぽんぽんとたたいた。

「いや・・・ありえない・・・こんな・・・これは幻術だ・・・だって俺はいままで・・・そうだ!これをみてくれ」

 俺はリュックから首を取り出した。こいつはうそをつけないだろう。

「なに?リュックサック?うわ!首!?ってマネキンじゃん・・・なにこれどこで拾ったん?」

 出てきたのは、首。だが、金髪の女性のマネキンだった。

「マネキン・・・俺は・・・これは・・・いったい・・・設定か?もしかして設定がいきすぎたのか?は?夢?いったいどうなって・・・」

「・・・アロンゾ。どうした?なにがあったん?話してみ?」

 俺は少佐にこれまでの話をした。少佐はずっと黙って聞いてくれていた。

 今まで俺はエナトという魔女に出会って振り回されてでも、共闘したこと。異世界の門を開ける鍵となっている静香ちゃんの首をもって魔物たちから逃げていたことを説明した。

「うーむ。その話が本当ならラノベかけるぞい」

 と少佐は腕を組んだ。そして続けてウインクしながら

「といってもいまいちな作品だかね。なぜなら私が全然でてこないからね!」

 と言ってニヤッと笑った。

「えぇと・・・」

 と俺は返事に窮した。

「少佐である私をもっと出さないとね」

「・・・いやこれが現実にあったんだよ・・・少なくとも・・・・ほんとなんだよ。早風だって死んだんだ。樹海の入り口で死体があるんだ」

「うーん。早風くんは君を傷つけたかもしれないって捜索を手伝ってくれているんだけどなぁ・・・」

「早風が・・・」

「電話する?」

「いや・・・いい・・・あ・・・首は?静香ちゃんは?」

「静香ちゃんも来ているよ。だから帰ろうよ」

「でも、首が俺をだましているかも・・・」

「でも、そのリュックの中にあったのはマネキンでしょ??」

「これは・・・その・・・幻術だったりしないか?」

 少佐はやれやれとでかい溜息を吐く。

「ほい」

 といって俺の頬をぐいと思い切りつまむ。

「なにする!?」

「痛い?」

「え・・・うん・・・痛い・・・」

 じんとあとから痛みがやってきた。

「んじゃ、残念ッ。これが現実です。残念。はい終わり!けぇるよ~」

「現実・・・?これが・・・?じゃあ、あのリアルな体験は?ドゥベルクの鎧は・・・?いったい・・・じゃあ、これは・・・いったい・・・」

「ほんとうに・・・もう・・・。あ、ガイドさん。すみません。お待たせしまして。本人も落ち着いてきたので帰り道案内してもらってもいいですか?」

「ええ。でもよかったですね。見つかって。わたしたちもホッとしました。森からでたら食事にしようね。守くん」

 二人はとっても優しかった。少佐は肩を落としふうとため息をついた。そしてガイドさんにペコペコと頭をさげて何度も礼を言っている。

 俺は立ち眩みを覚えた。

 急に力が抜けたような感覚だ。あの悪夢から解放されたのか?

 まるで自分が馬鹿みたいだ。

 今までの体験はなんだったのだ?ガイドさんは俺を心配して体を支えながら荷物をもってくれた。

 樹海を数分間歩くとすぐに出口だった。

 道路にでて道路の隅に車がとまってあった。少佐の軽自動車とジープが止まっている。

「えっと直江は?」

 と俺はきょろきょろとあたりを見渡した。

「ここにはいないよ・・・。町のほうを探索していてこっちへ向かうってさっき連絡きたからさ。これから町へいくよ。警察にもいわないといけないし」

 少佐は疲れた様子だった。俺は次第に慣れてきた気がした。

 あ、ほんとに家出しただけなのか。

「んじゃ、アロンゾ。車に乗っていて。ちょっとガイドさんにどっち行くか聞くよ。私ここの地理わかんなくてさぁ」

 と少佐は頭をかきながらガイドのおじさんのとこへ小走りで向かう。

 俺は後部座席に座って大きなため息を吐いた。

 サイドミラーにうつる自分は顔が汚れていたが人間の顔の自分だ。

 とんでもない妄想だったのだろう。すべては行き過ぎたのだ。

「まだかなぁ少佐」

 俺は少佐とガイドを見た。なにやらまだ話している。いずれにせよもう帰れる。帰ってもう寝たい。

 俺はポケットに手を突っ込んでシートの横になった。

 ポケットの中から紙を出す。

 それはレシートだった。

 やっぱり、俺の妄想だったのかな。

 しかし、レシートをよくみると妙だ。

 なんで字が逆になっているんだ・・・。まるで鏡みたいだ・・・。しかもその字はかさかさと虫のようにうねり紙の周りを動いていた。そして、サイドミラーやバックミラー、ガイドから手渡された鏡にいたるありとあらゆる鏡にむかって字が虫のように飛んでいく。

 ドアが開き少佐が運転席に着く。

「な、なぁ少佐」

「どうしたの?」

「このレシート・・・」

「レシートがどうしたって?」

 少佐はいっこうにエンジンをかける気がしない。

 ドアのカギをしめると俺の手からレシートをひったくる。

「だめじゃない?こいうものをもっていたら」

 と、少佐はニコニコ笑う。

「エロ本のレシートは処分したほうがいいよ」

 少佐はそれをまるめて外になげてしまう。

「あ」

「じゃあ、帰るよ・・・」

 と少佐はドアのカギをしめてようやく走り出した。


 走り出して数分たった。少佐はずっと黙ったままだ。

 そういえば俺がもっていたリュックはどうしたんだ。

 ああ、あのガイドさんがもっていたっけな。

 頭が重くて思考が鈍る。

 酔い止めや頭痛薬を飲んだ時のような感覚。

 すでに15分は走っているかもしれない。景色は全くかわらない。窓からは樹海しかみえない。

 ずっとガイドの車のあとをついていっているが・・・。俺は嫌な予感がしてきた。

「ねぇ。アロンゾ」

 と少佐は声をかけてきた。

「・・・」

「もしかしたら迷ったかもちょっと横によせるね」

 そういって少佐は車から降りた。またガイドと外でなにやら話している。

 ガイドからリュックサックを受け取って森の奥へ消えていくのがみえる。

 どこへいくんだ?

 ガイドがニコニコ笑いながら近づいてくる。

 落ち着けよ。俺。落ち着け。手にずっと持っていたガイドからかりた手鏡で自分の顔を見る。いつもの俺だ。

 俺なんだよな・・・。

 だが、俺はその手鏡を思い切り殴った。一度。二度。強く殴ってみてようやくひび割れた。

 パキンと割れてプツンと切断される音がした。

 世界が断絶し変化する。

 鏡に映っていたのはミイラの俺だった。

 車になんか乗ってはいなかった。俺はずっと樹海にいて、絡まった木々の根っこの中にいた。そこはまるで檻のようでまったく抜け出せない。

 これは魔法かなにかだ。

 ドゥベルクの鎧を呼び出そうとしたがまったく出せない。

 くそ。どういうことだ・・・。

 頭が重くてぐわんぐわんと揺れている感覚。

「おや?気づいたようだな。ハハハ。なんとも。悪く思わないでくれよ?こうでもしないと安全に確保できないってね。公爵夫人がおっしゃるから。首と私から奪った記憶の欠片は回収させてもらったよ」

 と目の前にはあとこち錆びた甲冑の騎士がいて、そばによって来て笑っていた。

「頭が重くて視界がぼやけてくるかもしれないがそれは君を封じるものだ。だまして悪いがこうでもしないとね」

 と、その声はよく聞けばひどく乾いた低い声であった。

 あのガイドがこの騎士だったのだろうか。

 鏡を手渡された時点で俺は幻覚にかかっていたんだ。ではあの少佐は?少佐は偽物?本物?

「少佐は?」

 と俺は聞いた。

 身体を向いた騎士の錆びた兜から漏れる目は赤く爛々と光っており、ギシギシと音がなっている。

「公爵夫人のことかい?君らの高校の教師だろ?よく知っている。君より知っている。もうかなり長い付き合いだ。私は彼女の騎士をしている。ずっと忠誠を誓っている」

 と装飾がはげた騎士は多くの武勲をあげた英雄だったのだろうか。錆びた甲冑に、凹んだ胴や、傷だらけの装甲を見るとなかなかの強者だとわかる。

「くそ・・・」

 俺は舌打ちしかでなかった。

 首の下品な笑い声が聞こえる気がした。

 少佐は、本物だ。幻覚なんかではない。そしてどういうわけか本物の敵だった。唐突に自分の顧問が敵だったということがわかった。

 ショックがあまりにも強い。

 首は奪われた。記憶の欠片も奪われた。そうしたら敵はエナトを狙うはずだ。エナトが最後にもっているという記憶の欠片。

「君にはしばらくここにいてもらうよ。ここにいたらあのまがい物がくるだろうし」

 と騎士は根っこに座って鞘から剣を抜いて地面に突き刺した。騎士は以外にも余裕でどこかのんびりとしていた。

「ああ。言い忘れていたな。俺は鏡の騎士。本当の名前は忘れた・・・。ああ。そうそう。皆から鏡の騎士と言われている。もうわかっていると思うが鏡をつかった魔法がつかえる」

「なぁ・・・少佐・・・を・・・柿崎を公爵夫人っていったよな・・・」

 と俺はつぶやくような声がでた。

 騎士はたんたんとした様子で説明する。

「そう。あの方は公爵家の夫人であった。かわいそうな身の上であった。愛していた夫は暗殺され、子も殺された。復讐のために戦ったが、仲間に裏切られ絶望し、だが、深淵の魔女エナト様に出会い救われた。気づかないうちにエナト様に付き従うようになり、復讐を忘れて生きていけた。彼女は、エナト様に救われた。しかし、知らない間にエナト様は殺された。テトラ。氷の魔女によって・・・。君が手を組んでいる魔女。直江という女の子に憑依している魔女。それがテトラ。私たちの宿敵さ。奴は俺たちに自分をエナトだと思わせて洗脳し、無謀に戦争を起こし敗れた。そして、行き場をうしなった俺たちはこの世界へきた・・・」

 この騎士はとても紳士な感じで俺はすこし困惑した。

「・・・」

「君は騙されているんだ。首は君をだましてわたしたちもだまして出し抜いてなにかしようとしていたみたいだが・・・君はきっと首から真実を聞かされただろう。首は、真実はしゃべる。だがその中に相手を操るようにして誘導するんだ」

「もう、会うこともないからいいさ・・・なぁ・・・俺はどうなる?」

 騎士は顎に手をあててうーんとうなる。

「君。テトラと手を切れよ。そして俺たちと異世界へ帰らないかい?」

「なにを言って」

「いや、無理にとは言わないよ。君にだってこっちの生活があるのはわかっている。でも公爵夫人は君を気に入っているんだ。騎士として主の願いは叶えたい。君はこっちへきて活躍すべきだ。あのテトラではなく。俺らと一緒に。ドゥベルクの鎧はとても価値があるものだ。君は代償を払ったのだろう?それは大変な戦力になる」

 騎士は俺のこの鎧に価値があるらしい。

「俺はあんたたちを信用できない・・・それに俺はエナトと約束したんだ・・・裏切りれない」

 と俺はそっぽ向いた。

 騎士は交渉慣れしていないのか。「まぁまぁ」と言ってあわてて手で制した。

「あいつはエナトじゃない。本物のエナトは殺されたんだ。君の崇拝するテトラにね。君は利用されているんだよ?君のその騎士道精神は素晴らしいと思う。だが、仕える相手は間違えている。やつは暴君だし、反逆者だし、詐欺師だ。みんなをだましている。だが、公爵夫人にはやつの魔法はきかない。こちらへきてやつの魔法が弱まったその時ようやく記憶改編の魔法が解けたんだ。俺たちはひそかに結束した。暴君を倒し、もとの世界へ戻る。俺たちはきたくてきたわけじゃない。やつは良かれと思ったかもしれないが、俺たちはこんな世界で生きていたいとは思わない」

「・・・だからといってそれはお前らが受けたことで俺には関係ない。人格でいうなら俺はおまえらを知らない。エナトのほうが信用できる」

「そうか・・・こまったな・・・」

 と騎士はわざとらしく頭をかいた。がりがりと兜の錆がおちる。

「俺は君を殺すのは忍びない。だがね。主君のためなら君を殺せる。答えがでないなら君をここで殺すしかない」

 そうして鏡の騎士が剣に手をかけたとき、ぶぅううううんと音が上から聞こえた。

 虫の羽のような音だ。

 見れば二機のドローンだった。

 うちの一機はものすごい速さで騎士にむかっていき爆発する。そしてもう一機は俺を拘束していた木の根に落下するとぷすぷすと煙がでてくる。

 最初はただ故障で墜落しただけかと思ったが。この煙はエナトの魔法なのか。俺を拘束していた根が枯れていき、解放される。

 脱出した俺はドゥベルクの鎧をつけることができた。念じると黒い鎧に身をつつむ。

 煙はすぐに晴れて、鏡の騎士が目の前にいた。まったくの無傷だ。

 そして、鏡の騎士は鎧をまとった俺をみてため息をついた。

 舌打ちをして

「テトラでてこい!卑怯者!俺と戦え!」

 と、鏡の騎士は大声で森にむかって叫ぶ。

 だがまったくの返事がない。エナトの援護はどこまでかわからないが、俺はこいつを倒して首を奪還しなければならない。

 俺は剣を抜くと肩に担ぐようにして構えた。

 それを見た鏡の騎士も剣を下段にして構える。



次回で最終回となると思います~(>_<) よろしければ感想、評価お願いします!


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