それでも、生きていく
「君って、なんかつまんないね。」
一瞬、自分に向けられた言葉だと認識するのに、時間がかかった。頭の思考が僅かに鈍る。他人事のようだった。
「君に話振ると、消えるんだよね。なんか壁みたい。ボール投げても、ちょっとバウンドして威力がかなり弱くなって返ってくる、みたいな??」
その瞳は真っ直ぐに僕を見つめて、捉えている。
真っ直ぐすぎて逆に驚いた。
かなり失礼なことを言われている自覚はある。でも、それ以上にショックの方が大きかった。
君は、つまらないーー。
多分、1番言われたくない言葉だ。1番言われて傷つく言葉だ。
今まで、可も不可もなく、良くも悪くも無い普通の人生を歩いてきた。その中で、思った。
きっと自分は特別な存在じゃなく、良くも悪くも普通の人間だ。コミュニケーション能力も低いわけじゃなく、かと言って高いわけでもない。そこそこ友人もいて、そこそこ面白くて、そこそこ人に必要とされてる。
そんな自負はあった。
だからこそ、目の前で無遠慮に言葉を紡ぐ少女に戸惑った。
戸惑って、心が沈んだ。痛い。
自分でも知らないような自分の欠点を、無理やり見つけられたような感じ。
でも、少しだけ自覚はある。
人に嫌われないように生きてきた。
よく言えば、万人受けする、悪く言えば、平凡。
常に相手の動向を気にしたり、自分がどう思われてるかを気にしてきた自分がいた。
でも、それは普通の事だと思った。
みんな、少なからずそんな感情や考えがあるものだと。
目の前の少女を前にすると、何故か言葉が少なくなって、思考が止まったような感覚になる自覚があった。
普通に話せてたことが話せなくなる。
そう、僕はこの少女が苦手だ。
出来ればあまり関わりたくない。
ただ、本当にこの少女の影響なのだろうか。
自分に問題があるのではないか。
そんな考えが頭をよぎった。
自分って、なんなんだろう。
どんな人間なんだっけ??