わたしとあなた
漆黒の空を煌々と照らす月が、私たち二人を見下ろしている。恋人といえる関係性ではあるものの、私にとってこの恋は、最後の恋なのだ。
私たちが初めて会ったのは学生の頃、一つ上のあなたがとても眩しくて、私はすぐに恋に落ちた。想いを伝えても、見事玉砕し、そのままあなたは卒業していってしまった。
あなたと会えなくなってから、私は何人もの男性と付き合ってきた。恋人だったのか、ただのセフレだったのか、よくわからない関係性でなあなあで付き合って(?)きたのだ。
あなたのことが思い出の中でずっと忘れられずにいた。二度ほど結婚したものの、うまくいかずに離婚し、三十二にしてバツが二つ付いた。そんな時だった、あなたとまた連絡を取りだして、八月のあの日に再会したのは。久しぶりに会うあなたは、とても輝いていて、私は年甲斐もなくときめいた。あなたが私の手を握ったときに、私の体中が熱くなり、まるで十代のあの時に戻ったかのような感覚に包まれた。
そして、私たちは付き合うことになった。私は今までにない幸せに浸っていた。私の体を蝕む病さえなければ、もっと素直に喜ぶことができたのに。
あなたと再会する二年前のことだった。私はずっと体調の悪さをないがしろにして働いていた。二人目の夫が、無職になってしまったからだった。やっと病院に行ったときには、もう遅かった。元々患っていた心臓が更に悪化し、胃に黒い影が見つかったとき、私はもう目の前の景色が現実のものだとは思えないほどの衝撃に病院の廊下に座り込んだ。
やっと声に出して泣いたとき、私はこれまでの自分の人生を悔いた。もっとこうすれば、ああすればと自分のしてきたことを延々と悔いていた。
付き合う前に、私は彼にそのことを話した。彼は、淡々と私の話を聞いていてくれた。
書き終わるころに、わたしとあなたがどうなっていくのかを考えながら書いていました。
純愛とは何だろう。今まで自分の人生のなかで出会ったことのない、本当の恋とは・・・。