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「Sランクの敵」

「ど、どういうことですかあれがビッグス・パイダー? 」

「ビッグという名にふさわしいね」

「とにかく、今は気付かれていないようだから助かったわ、貴方は洞窟で待機していなさい」


 セレンがオレを見て言う。言われなくてもそのつもりだと洞窟に戻る。


「さてここからよ、どうやっておびき出すかだけど……」

「きゃっ」

「どうしたのよルミ」

「あ、足に何かが絡まって」

「足って、何もないけど」


 ……足? まずい!


「皆早くこっちに、ビッグス・パイダーの出した糸に絡まったんだ来るぞ! 」


 オレが言うより早く動き出したビッグス・パイダーがルミさん目掛けて走り出す。当の彼女は糸の粘着力で動けないようだった。

 ……マズいこのままだとルミさんが。

 ス・パイダーというのは主に張った糸で敵を感知する、そのことは長年の同居生活で分かっていた。


「二人は動くな、オレが何とかする。どうせこの辺にあるんだ……ろ! 」


 剣を抜くと洞窟からは出ずに手当たり次第に振り回す。すると予想通り剣が引っかかった。瞬間、ビッグス・パイダーが方向を変えてこちらへとやってくる。だが、進撃はそこまでだった。洞窟の中は狭くやってこれないのだ。


「今のうちに」

「う、動けない。この糸、粘着力があって」

「何だって」


 予想外の事態に驚いていると目の前に細長い蜘蛛の脚が現れ咄嗟に避ける。

……危ないところだった、慢心していたらやられていた。

 ビッグス・パイダーは糸に引っかかったオレの剣に(かじ)り付くと食べられないと知ってのそのそと歩いて行った。どうやら最初に見かけた頭上の位置がお気に入りの位置らしい。

 と難を逃れたが問題はまだ残っている。3人が動けない。奇跡的にこれまで透明に近い糸に絡まずに散り散りになったのが逆に(あだ)になっている。2人共助けに行こうとして糸にかかったら逆に足を引っ張る形になってしまうと思うと動けないのだろう。

 ……糸が見えないせいで、待てよそうか!


「見えないなら見えるようにする」

「みえるようにするってどうするのよ」

「こうするんだよ、指水最大噴射」


 勢いよく人差し指から噴き出した(きり)のように細かい水を手当たり次第に周囲にかける。


「そうか、水滴だ。これでどこに糸があるのか分かりやすくなったよ。ありがとうシャン君」

「えへへ、大したことじゃありませんよ」

「やるじゃない、それなら反撃よ。一斉に剣を下ろして糸を切りましょ。3か所が斬られたなら向こうも混乱するはずよ。ルミは今引っかかっているのを斬って」

「りょ、了解」

「それじゃいくわよ、せーのっ! 」


 3人が3方向から同時に目の前の糸を斬ろうと剣を振り下ろす、見事に3人ともスパッと糸を斬り捨てた。


「うわ、こっちに来たよ~」

「ルミ、ス・パイダーは後ろから糸を吐くから背中に回らないように気を付けて3方向から仕掛けるわよ」

「り、了解」


 ス・パイダーの狙いがフェリーヌさんだと分かるや否やセレンがルミさんと共にス・パイダーの左右へと糸を斬りながら回り剣を構える。


「行くわよ、せーの! 」


 セレンが合図を出した時だった。何とス・パイダーが口からフェリーヌさん目掛けて糸を吐き出した。


「う、うわあ~う、動けない……」

「ど、どうして口から糸が……」


 計算が違った。オレもス・パイダーは尻から糸を出すものだと思っていたが口から吐き出すタイプもいたのだ。


「く、フェリーヌを放しなさい」


 セレンが手にしていた松明をあらぬ方向へと投げるとス・パイダーがセレンの方を向く。驚くことにス・パイダーにも聴覚はあるようだ。

 ……感心している場合じゃない、松明(たいまつ)の投げ方からもセレンは明らかに動揺している。合図はないがやるしかない! 後で文句を言われるかもしれないが死者が出るよりはマシだ!

 覚悟を決めると脳内にボリヴィエの名前と肖像画を思い浮かべる。


「『召喚(サモン)』出でよ! シャノルマーニュ十二勇将の一人、ボリヴィエ! 」


 オレが叫ぶとともに目の前に銀の鎧に身を包んだ剣士が姿を現す。


「ボリヴィエさん『交信(コミュニケーション)』で説明した通り、モンスター討伐の協力をお願いします」

「まさか本当に数刻とはいえ私がこの世に蘇るとは……畏まりました、民を守るためにこの剣を振るいましょう」


 事前に『交信(コミュニケーション)』を済ませていたのでボリヴィエはオレの救援要請を快諾するとビッグス・パイダーへと向かう。そこからの戦いは一瞬だった。彼は一瞬で周囲どころかフェリーヌさんを拘束する糸までを斬りながらビッグス・パイダーへと接近するとビッグス・パイダーが糸を吐くよりも速く剣を振るい突き刺す。それでビッグス・パイダーは二度と動くことは無かった。

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