「戦士ギルド」
二日後の昼時に傷が完治したオレはセレンに貰ったお下がりの剣と鎧を付けると二人で戦士ギルドを訪れる。堂々と入口に剣が飾られているところは流石騎士団という安定の道を選ばずに実力で生きていくことを選択した者達を迎えるにはふさわしい荒々しさのようなものを感じる。
「いらっしゃいませ、ああセレンさん……と貴方は? 」
「シャンです」
「ワタシの新しいパーティーなの」
「それはそれは……」
とお団子ヘアの受付嬢はニコリと微笑んだ。しかしセレンは受付に行くことは無く側にある椅子に腰かける。
「ここでフェリーヌとルミを待ちましょ」
「人が少ないけどいつもこんな感じなのか? 」
戦士というのはもっといるものだと思っていたけれど見渡すと周りにいるのは数名という驚きの少なさだ。そしてその中の槍使いとハルバード使いはセレンが男を連れてくるなんてどんな実力者だろう等と話している。実際はともかくそういう好奇の目で見られるというのは新鮮なので心地が良い。
「クエストがそこの掲示板に掲示されるのが朝だからその時は凄いわよ。早い者勝ちだもの。でも今日は別、ランク昇格試験のために1つキープして貰っているから……て聞いてる? 」
「ああ勿論、そこの人達が男連れてくるなんて珍しいなんて話しているからさ」
「まあそれはそうかもしれないわね。異性と組むなんてものは珍しさもあるからね」
等と話していると再びドアが開き人が入ってくる。フェリーヌさんとルミさんだった。
「セレン、馬車呼んでおいたよ。あれ~君は……どうしてここにいるの? 」
「フェリーヌ、き、昨日聞いたでしょ? シャン君がパーティーに入るって」
「そうだった、ごめんど忘れしちゃってた~」
とペロッと舌を出すフェリーヌさんはオレの女神だ。彼女の顔を見ると名を上げた戦士パーティーとして王に招かれた所で奇術師だと明かしあわよくばその場の混乱に乗じて洗いざらいぶちまけて失脚させてやろうという王への復讐なんてどうでも良くなる。
……いや今はギルドで名を上げることが目的だからパーティー円満のためにもこれで良いのか? とにかく彼女とはもっと仲良くなりたいと思った、なんて考えている場合ではない!
慌てて立ち上がる。
「シャンです、改めて宜しく」
「宜しくね」
「よ、宜しく」
「さて、挨拶も済んだところで行きましょうか」
セレンがそう言って立ち上がると先導して受付へと向かう。
「それではAランク昇格試験を兼ねたクエストをお願いします」
「はい、畏まりまし……へわっ! ? 」
恐らく依頼について書かれた紙を持ってこようと立ち上がった彼女が派手に転ぶ、その拍子にテーブルにあった紙がグチャグチャになってしまった。
「えーと、大丈夫ですか? 」
声をかけると女性は気まずそうに頬を掻く。
「へ、あ、すみません大丈夫です。ちゃんとランク昇格の依頼を書いた紙には付箋をしておいたので」
「いえそれもありますが身体は……」
「思い切り頭から言ったわよね今」
「すっごい痛そうだよね」
「び、病院に行った方がいいのでは? 」
「ありがとうございます……こんなにぐちゃぐちゃにしてしまったのにそんな優しい言葉をかけて下さるなんて……本当にありがとうございます。こちらになります、見事討伐した暁にはAランクを示す身分証明にも便利な勲章を進呈しますので頑張ってください」
彼女は目に涙をためながら説明を済ますと赤い付箋が貼ってある一つの紙を掴んでセレンに手渡す。
「ありがとう、それでは……お大事にね」
とセレンが紙をもって踵を返して出口へ向かったのでオレ達も受付嬢に会釈をするとついて行き外に出ると馬車に乗り込む。オレには縁のなかった貸切馬車と言うやつらしく中には他の乗客はいなかった。
「それでは、御者さん、南西の洞窟までお願いします」
「あいよ」
御者が手綱を引き馬が動き出す、その直後受付嬢が両手を振りながら追いかけてくるのが見えた。見ると彼女の手には一枚の紙が握られていた。
「受付嬢さんだ、仕事中なのにわざわざ見送ってくれるなんて親切ですね」
「本当だ、マリーちゃんだ。おーい! 」
フェリーヌさんが彼女に手を振ったので倣って手を振る。やがて彼女は小さくなって見えなくなってしまった。
……姿が見えなくなるまで懸命に走って見送ってくれるなんてなんて健気な人なんだ、帰ったらお礼を言おう。
と誓う、この時のオレは彼女が手に持っているのが本来受け取るはずだったAランク昇格試験の討伐依頼が記された紙で今セレンが持っているのはSランク級の戦士を複数必要とする依頼だということには微塵も気付かなかった。