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「逆襲」

 翌日、宿屋のベッドに横になりボーっと天井を見上げる。帰ってから寝ずに死者と話すことが出来る能力を試して分かったことがある。この能力は対象のおおまかな顔と名前を思い浮かべないと会話は出来ず、死者にも黙秘権が与えられる。歴代の王と会話できたのは肖像画を思い浮かべてようやくで驚いてはいたものの、皆【奇術師】を蔑むばかりか連行する理由を尋ねると黙ってしまった。これでは情報はほとんどないのと同じだ。

 ……仮に理由がどでかいことが出来るというものだとしてもどう起こせるのかが分からないとな。こりゃ手詰まりか?


「こんなんじゃ今頃セレンも笑ってるだろうな。いや待てよセレンか」


 簡単な話だった、現状で王にまで辿り着けないのなら手近なセレンに仕返しをすれば良い。


「そうとなれば……相手は戦士だし酒場か? 」


 夜の酒場ならいるだけで【奇術師】だとバレる心配もなく、セレンの情報を持っている戦士もいることだろう。そうと決まれば善は急げで夜に備えて瞼を閉じると眠りについた。


 〜〜

 夜、酒場の席はほぼ満員で賑わっていた。天職が【商人】であろう店主に見つかると巧みな話術で一杯となりそうだが今その店主は忙しそうで心配はなさそうだ。

 ……あの人が良さそうだ。

 客の中で比較的若くて酔ってそうな女性を見つけると彼女の元へと向かう。


「ここ良いですか? 」

「あらナンパ? 坊やも物好きねえ、良いわよお姉さんナンパされちゃう」


 思ったより酔っているのか彼女はそんなことを言って笑って見せる。


「いえそうじゃないんですよ、実はセレン? という戦士について伺いたくて」


 そう言うと上機嫌だった彼女が突如テーブルをバンと叩く。


「セレンですって、貴女もあの女が好きなの! ? あの女は良いわよね戦士の中でも才能に恵まれた方で、そりゃ母親のカレンさんが若くして【奇術師】だかに襲われて亡くなったのには同情するわよ? あの人優しかったし! それでもね、あの私強いから何しても良いでしょ? とでも言いたげな見下したような態度! あれが許せないのよ! あんな女のどこが良いのよどいつもこいつも! しかもカレンさんと瓜二つだからあの顔で見下してくるのが本当に最悪! 」


 彼女はものすごい剣幕でそう述べると糸が切れたように眠りについた。

 ……ギルド内からの評判は良くはないのか? とはいえ情報は手に入ったな。


「ありがとうございました」


 お代替わりに金貨一枚を置くと店を出る。

 金貨一枚で一日中酒を呑んでも足りるくらいの価値なので普段の貧乏性(びんぼうしょう)(ゆえ)か払い過ぎとも思ったが情報が有益だったから構わないだろう。

 ……気の毒な境遇だけどええい構うものか、復讐のために利用させて貰うぞ。

 決意を胸に宿屋へ戻ると『交信(コミュニケーション)』を始める。相手は勿論セレンの母、カレンさんだ。瞼を閉じるとセレンが成長した姿を思い浮かべながら彼女の名を呼んだ。


『私を呼ぶのはどなた? 』

 ……来た、『交信(コミュニケーション)』成功だ。

『成功? ああ確かに私死んじゃっているのに凄いわねえ』

 ……セレンと違って随分とおっとりした女性みたいだ。

『そうなの? セレンは厳しいのね。私が早くに亡くなってしまったせいかしら……それで貴方は誰? 』

 ……セレンとお付き合いさせていただいております、彼氏です。

『まあまあまあ、彼氏さんなの? まあまあセレンがいつもお世話になっております』


 平然と嘘を突いたことに心が痛むが困ったことに考えてしまったことが丸々皆相手に伝わってしまうようなのでもうこうなったら悟られないように進むしかない。


 ……そうなんですよ、ですが彼女は戦士、私は商人でやはり腕力の差がありまして何か弱て……気にしていることはないかと考えた次第で。

『商人さんだったの、最近の商人さんって凄いのねえ。えーとセレンが気にしていること……そうね、もう知っているかもしれないけど彼女お尻の黒子(ほくろ)を気にしていたわねえ』

 ……黒子? それだけですか?

『話せることはそれくらいかしら。だから気にしてないと言って上げれば彼女も楽になると思うわ』

 ……そうですか、ありがとうございました。

『はーい、またセレンのお話聞かせてね』


 こうして『交信(コミュニケーション)』は終了した。

 ……尻に黒子って弱点として成立するのか? いや気にしているってことはいけるのか?

 想像していた情報とは異なっていたけれどこの街でオレを【奇術師】だと把握しているのはあの三人、その中で騎士団に送り付けようとしている一人を無力化出来ると考えれば十分だろう。いやもしかするとそれ以上の効力も期待できるかもしれない。

 ……見てろよセレン、明日にでもこの情報で(おど)して言うことを聞かせてやる。

 期待に胸を膨らませながらオレは眠りについた。

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