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「奇術返し」

 食事を済ませると部屋まで移動をしルミさんを残すと再び村を訪れ祭壇と呼ぶべき場所にチョチョイと細工をしてから奇術師マーシャの元を訪れるはずがあれから30分程しか経ってないだろうか彼女達は先程と同じ場所で何やら話をしていた。

 ……こっちを向いているとはいえこんなに距離があると困るんだよなあ。

 ため息をつく。『催眠術(ヒプノシス)』にも限界がある、村人に混じっているこの状況ではかけるための指が相手の視界に入らないため無理なのだ。

 ……仕方ない、どうせ後でオレがこの村出身という村人全員の『催眠術(ヒプノシス)』を解かなきゃならないんだ。それなら派手にやるか。

 覚悟を決めると大声を上げる。


「ハッハッハッハ! 」

「何だ突然」

「何だ突然と言われたら答えてやるのが我が勤め、我が名は正義の奇術師シャン! 」

「き、貴様! 先程果物に変えたはずでは」

「あの程度の奇術が我が正義の前に通用するとでも思ったか! 奇術で悪さをし"奇跡の会"等と名乗って人々を恐怖で支配するなど言語道断! この手で成敗してくれよう! 」

「な、なにを……」


 怒りを露にする彼女とは対照的に村人達は突然のヒーローの登場に歓声を上げる。


「いよっ、待ってましただ」

「ジャン、あんた」

「いけええええええジャン、やってまえええええ」


 ……シャンです。まあ良いかこの際。

 皆の歓声に押されながら彼女に近寄ると彼女が手を上げた。


「おのれ、ならば今度こそ果物にして消し去ってやる」

「ほほう、オレが壇上に上がる前に先制攻撃、"奇跡の会"と言うのは相当に卑怯な集団のようだな」

「な! そういう貴様こそ壇上に上がった瞬間に先程のようにシャノルマーニュ十二勇将を呼び私を攻撃しよう等と企んでいるのではないか」

「うっ……」


 ……読まれていたか、まあ掛けようとしていたのは『催眠術(ヒプノシス)』だけれども。


「フフフフフハハハハハ、正義の私がそんなことをするとでも? そもそもシャノルマーニュ十二勇将の協力がないとそのようなことは出来ないのだ、彼等がそのようなことをするとでも? 私を愚弄(ぐろう)することは彼等を愚弄することとしれ! 」


 苦し紛れの一言だったが「そうだそうだ」と歓声が上がる。流石シャノルマーニュ十二勇将だ信頼が厚い。


「良いでしょう、それでは貴方がこの壇上に上がるまで私は後ろを向いていましょう」

「え? 」


 ……それは困る、こっちを見て貰わないと『催眠術(ヒプノシス)』がかけられない。

 村人の正々堂々と勝負しろと言う空気に押された行動が結果的に彼女を救うことになるとは何という皮肉だろう。こうなった以上仕方が無いので目の前へと移動すると彼女に背中を向ける。


「それならば正々堂々早打ちと行こうではないか、1、2の」

「3! 」

「出でよシャノルマー……」

「アッ・プルになりなさい」


 瞬間、オレの身体が何かに引っ張られる感触と共に空中に投げ出される。下を見ると崖の様でこのまま落ちたら即死だろう。

 ……やっぱり他にも果物を用意していたか、油断させるために敢えて喰らったけれど複数用意していた事を確認できたのは思わぬ収穫だ。

 ボーっと遠ざかっていく崖に刺さってる木の葉を付けた木を見ながら考える。

 ……そろそろ良いだろう、『脱出(エスケープ)』!

脱出(エスケープ)』を使用して祭壇へと戻ると再び姿を現したオレに驚いた彼女は思わず尻餅を突いた。


「ば、バカなどうして……」

「御覧の通りさ、貴様の悪の奇術等、このオレの正義の前には通用しない! 」

「ひ、ひいい! 」


 怯える彼女の行動等、簡単に読める。それは周囲にある柱の上に置いておいた果物と自分を『すり替え(エクスチェンジ)』で移動した後、遠方からオレに『すり替え(エクスチェンジ)』をかけることだ。


「こうなったら……あれ? 」


 だがそれは事前に封じさせてもらった。柱の上の果物はこうして名乗りを上げる前にチョチョイと片付けさせて貰ったのだ。やはり思い浮かべる場所と物が一致しないと『すり替え(エクスチェンジ)』は行えないらしい。


「何をしたか分からないけれど覚えて……」


 ……遅い! 喰らえ『催眠術(ヒプノシス)』!

 四方に移動できないと知り逃亡を図る彼女に指を向け『催眠術(ヒプノシス)』をかける。とりあえずはこれでオレはマーシャが忠誠を誓った主人だと思わせる。


「オレの勝ちだ。さてマーシャよ、観念して今まで果物に変えたと物を蘇らせろ」

「おお! そんな事が可能で! 」

「ご主人様、実はあれは本当に変えたのではなく」

「分かっている、変えたと思わせてすり替えた位置を教えろと言っているのだ」


 オレを主人と思い込んでいる彼女が能力の自白を始めたので慌てて小声で囁く。


「流石ですご主人様」

「囁くのではない、皆の前で宣言するのだ」

「はい」


 命令をするとその通り村人の前で大声で消えた人達の名前とすり替えた場所を告白する。


「ということだ諸君、しかし横着して関係ない村で蘇らせるとは想定外だった、お詫びにこれを受け取って欲しい。運賃の足しにして頂きたい、マーシャ、お前も有り金を全て出せ」

「はい」


 と、この件を上手い事セレンが村を救ったとすり替える『催眠術(ヒプノシス)』をかけるための足止めも兼ねて迎えの為と称して金貨が一杯詰まった袋を村人たちに投げる。予想通り金貨は袋から飛び出し村人達に降り注いだ。そしてそれを拾うべく村人達もオレから視線を逸らし一心不乱に金貨を集め始める。

 ……今がチャンスだ。


「ところでマーシャよ、ビッグファザーについて何か知っているか? 」

「いえ、勧誘を受けた時にお会いしただけでその時もフードに仮面を付けていたので声で男の人と言う事だけしか」

「なるほど……」


 ……ビッグファザーの事も聞けたし、じゃあ最後の仕上げと行くか。

 今ではオレを主人と思い込んでいるマーシャだがどの道彼女はギルドから討伐命令が出ている程に人々に迷惑をかけオレ達にも殺す気でかかって来た。貴重な奇術師を手に入れた以上勿体ないとも思うがやるしかない。戦利品として提出するために彼女が付けていた指輪を受け取ると再び彼女に『催眠術(ヒプノシス)』をかけ、同時に主人と思い込ませたのを解除する。


「はっ……私は、おのれ舐めた真似を今度こそ果物に変わってしまえ」


 必要ないとは思ったが確実性を高めるためにオレを宿敵と思い込んだ彼女はオレに再び『すり替え(エクスチェンジ)』を試みる。目的地はどこだか分からないが彼女がすり替えた者を確実に仕留めることが出来る崖か何かだろう。


「通用しないと言ったはずだ、はあ! 」


 芝居を打ち両手を掲げながら跳ね返すことを意識して『奇術返し(リフレクト)』と言うのを試みる、すると彼女の姿が消え代わりにリンゴが現れる。頭から落下したリンゴはべちゃりと音を立て潰れ無残な姿となった。


「流石ですジャン様」

「ありがとうごぜえます」


 人々の歓声が村中に響いた。

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