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自分が何をしたいかなんて、考えたこともなかった。
お父様やお母様が教えてくれることに、何の疑いも持たなかったし、むしろその一つ一つが、私にはキラキラして見えた。
いつから、キラキラして見えなくなったんだろう。
すっかり伸びた自分の茶髪を、櫛で好いてもらいながら考える。
明確な時期は、なかったと思う。
ただふとした時に、思ってしまったんだ。
なんで自分は、こんなことしてるんだろう、って。
こんなことして、自分には何が残るんだろう、って。
一度生まれた心のわだかまりは、消そうとしたって消えてくれるものではなかった。
むしろそれは、どんどん大きくなっていってすらいて。
お母様に怒られているとき。お父様に呼び出されるとき。
自分の思い通りにいかないと、どんどん大きくなっていった。
仕方ないよね。
私が弱いのが悪いんだもん。
私が、自分一人で生きていけるだけの力がないから。
私が、自分のことも自分で決められない弱虫だから。
お父様とお母様が、私のことなんでも、決めてしまうんだ。
乳母のミッシェルさんに帰ってもらうと、広い部屋に私は一人になる。
私一人には広すぎる部屋かもしれない。
不安、だな。
ベッドに、背中から倒れこむ。
私は、まだ弱い。
でも、もう弱いままは嫌になってしまったんだ。
だから、私は強くなる。
明日は、勇者さんに稽古をつけてもらう日だ。