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第13話・ヒロインとのやり取り

 10000字ぐらい書いたり書き直したりボツにしたりしてる内に遅れました。やはりガバガバプロットはよくない(戒め)。


 今回はプロローグからの続きです。一応確認しておくと話がわかりやすいかも。

 ライトノベル半冊分にも至りそうな長い長い回想を終えた俺は、昼休みの生徒会室でぼそりと呟く。


「――ここまでが、最初のプロローグに至る一連の流れだ」

「え、何? 急に何の話?」

「いやこっちの話」


 あの後、美咲はF組の一部メンバーを起点として、一気に学園中へと名を馳せた。

 まあ当然のことである。元より美咲は可愛くて、性格が良く、スポーツも万能で、コミュ力も高い、俺なんぞとは比べ物にもならない最強最高の美少女なのだ。人気にならないはずがない。


 当然、俺としても赤坂 (ひじり)なんていう冗談の極みみたいなパツキン女より、超絶可愛い三日月 美咲が学内アイドルになった方がよっぽど良い。

 俺は美咲がより人気になるよう裏からこっそり手を回し、彼女を後押し。結果、美咲はわずかな期間で紙園(かみぞの)学園の頂点に立ち、見事学内アイドルの称号を手にするに至った……の、だが。


「……なぜ俺まで学内アイドルと化しているのか。これがわからない」

「そりゃ、美咲ちゃんの人気が上がったからって、聖くんの人気が無くなるわけじゃないし。あと、輪泉さんをノーマークにしちゃったのが痛かったよね」

「クソ、おのれヤンデレ……!」


 俺はギリリと歯噛みする。


 そう、遥は、美咲が俺より称賛を得ていくのを、黙って見てはいなかった。

 当初は直接美咲を亡き者にしようとしていたらしいが、遥が戦闘能力で美咲に敵わないのはご存知の通り。

 安心した俺はこれまでずっと続けていた遥の監視を辞め、美咲の学内プロデュースに奔走した。しかし、遥はその間まるで対抗するかのように俺の学内プロデュースを進めていたのだ。


「本当に、あらゆる面で厄介だな、アイツ……」


 しかしなんで遥のやつはこういうことを相手に許可も取らずにやるのか……。勝手に人気者にされて、相手が困るとは思わないのだろうか。想いが鬱屈としたまま暴走して、相手のことを考えられなくなった人間はこれだから困る。大体、同性相手にそんなに重い好意を抱いてどうするというのだ、全く。


「…………」

「ん、どうした伊良部」

「いや別に」


 あと、近東寺(こんとんじ)くんを代表とする察しの良いF組メンバーが全員美咲側に回っていたことも災いした。

 遥を恐れていた彼らは即座に圧倒的戦闘力を持つ美咲の支持者となったのだが、美咲側につかなかった鈍感なF組メンバー達は違う。彼らは俺が知らない間に次々と遥に取り込まれていき、学園内で徐々にその勢力を拡大。そして俺が気づいた時には遥を中心に赤坂 聖を支持する一大グループが結成されてしまっていたのだ。


 こうして、俺のほうが早くこの学校に現れていたこともあり、学園内の人気は最終的に二分。紙園学園は赤坂 聖と三日月 美咲、二人の学内アイドルが(しのぎ)を削る戦乱の(ちまた)へとその様相を変えたのであった。率直に言って馬鹿。


 俺は深くため息をついて、会計係の椅子から立ち上がる。


「まあ、良いや。過ぎたことをぐだぐだ言ってても仕方ない。もうなるようになれだ、こんなもん」

「片想いが実らないとわかった瞬間、色々と投げやりになったね、聖くん」

「うるせえ」


 着崩していた制服や、崩れていた髪を整え、生徒会室の扉に手をかける。


「あ、聖くん。ついでに作り直した部活動予算の書類、職員室に出してきてよ。僕、今日は生徒会室で食べるから」

「まだ昼食べてなかったのかよ。それなら俺がやっといたのに……」

「いやあ、思ったより作業の量が多くって。そろそろ食べないと午後の授業に間に合わないから、よろしく」

「おう、了解」


 伊良部が書き直した部活動予算に関する書類を持って、俺は生徒会室を後にした。



 私は、肩を落としながら学校の廊下を歩いていた。


「……はぁ」


 生徒会会計である赤坂さんに頼み込んではみたけど、結局、陸上部の予算調整に関しては通らなかった。

 一応、最低限必要な予算だけは学校側から支給されるので、部活動が出来なくなるわけじゃない。

 けれど、その他の雑費に関しては生徒会の采配で決定される。そのため、ギリギリの予算しかない今期の陸上部は、これからかなり窮屈な活動を強いられることになるそうだ。


 ……陸上部の人たちは気にしていないと言ってくれたけど、やっぱり心苦しい。


 私は基本的に他人に頼られるのが好きだし、他人の助けになれるのも好きだ。

 昔から周りの人達に妹扱いされてしまうことが多かった私は、誰かに頼られると必要以上にお姉さんぶって何でも引き受けてしまう癖がある。

 しかし当然、そうやって頼み事をどんどんと引き受けていけば、今日みたいにどうにもならなくなる時も来る。どう取り繕ったってメンタルが豆腐な私は、そうして失敗する度に酷く落ち込んでしまうのだ。


 いや、運が悪くて失敗する分にはまだいい。でも、今回の失敗に関しては正直目に見えていた。

 よりにもよって、頼み事の相手が私のことを嫌っている赤坂さんだ。

 あれほどの美人にはなかなか話しかけづらいという気持ちは分かるけれど……私に頼んだのは絶対に人選ミスだと思う。「あの赤坂さんに意見できるのは美咲さんしかいない」なんて言われて、ほいほいと引き受けてしまった私も私だけど。


 というかそもそも、あれほどの美人と対等に扱われているというのがむず痒い。

 そりゃ私だって、可愛いって言われたら嬉しいし、みんなの人気になるのも嬉しい。

 でも私のそれは赤坂さんとは違ってもっとこう……マスコット的なものだと思うのだ。

 さっきも言ったみたいに、みんなの妹とか、ペットとか、そのへん。前の学校でも実際そんな感じだった。決して憧れの美少女とか、美人とか、そういうのじゃない。


 だから赤坂さんと比べれば月とすっぽん――とまでは言わないけど、月とアルマジロとか、多分そのぐらいの差がある。アルマジロも可愛がってくれる人はいるだろうけど、決して月と対等ではない。


 ……いや、そもそもあんな創作の世界から抜け出してきたような子と、対等な女子が果たしているのだろうか。

 あれほどの美少女、テレビでだってそうそう見ない。眩しいくらいに顔が良い。金髪赤眼という幻想じみた特徴に、モデルのように派手で、かつ均整なボディスタイル。成績においても学年一位で、立ち振る舞いもまるで役者のように堂々としている。少し気を抜けば暗くなってしまう私とは全く大違いだ。

 ……言ってて思ったけど、どんな超人だろう、これは。

 創作のような、どころか、完全に創作の人物だ。

 そしてなんでそんな人に嫌われて、対抗馬にまでされているんだろう、私は。


 根っからの卑屈さを思いっきり発揮し、鬱々とする。

 この卑屈さに関してはもう、小学生の頃から全く変わっていない。というか人間なんて、そうそう変わるものじゃない。たとえ何年経ったって、見た目がどんなに変わったって、根っこの部分はそう簡単に変化したりはしないのだ。


「つまり、何をしたって私の心は豆腐……崩れ豆腐……」


 もはや麻婆(マーボー)状態になってしまった心をどうにか取り繕いつつ、ヨロヨロと歩いていく私。なんというか、顔の良い人に怒られると心に来るものがある。赤坂さんは顔に加えて頭も良いから全然反論出来なかった。メンタルも強そうだし。私とは総合的な口撃力の桁が違う。


 今の状態で誰かから冷たくされたら今度こそ泣きそう……と、弱々しいことを考えながら職員室に向かう。

 担任の可奈田先生なら優しいし、赤坂さんと仲も良いから、予算に関して話を聞いてくれるかも。そう思って、職員室に続く廊下へと向かっていき――


「あ」

「う」


 ――またもや、金髪赤眼の美少女と遭遇した。


「さ、先ほどぶりですわね、三日月さん」

「う、うん……」


 赤坂さんは何かの書類を持つ手を腰に当て、後ろ髪をさらりと梳きながら、こちらを見下ろすように言う。私は完全に萎縮して、呟くように小さく答えた。

 ……正直、あまり顔を合わせたくない。きっとまだ怒っているだろうし……。

 会釈をしつつ、こそこそと職員室に向かう私。しかし、どこか戸惑ったような顔の赤坂さんが、私の退路を塞ぐようにしつつ、微妙に歯切れの悪い口調で話しかけてきた。


「……あの、アレですわよ。そんな、その……そこまで落ち込まなくてもいいのではないかしら! 見ているこちらまで気分が落ち込んでくるのですけれど!」

「ご、ごめんなさい……」


 やっぱり怒っている。私はそろそろ本気で泣きそうになりながら謝った。


「だから謝れとは言っていないでしょうに! もっとこう、堂々としていればいいでしょう! 張り合いがありませんわね!」

「でも……」

「でもではありませんわ! あなただってその、紙園のアイドルと言いますか、そういう感じではありませんの! だったら私に言い負かされた程度で落ち込んでどうするのですか!」

「それは、みんなが勝手に言ってるだけだし、私は別に……」

「ぅ……だ、だって、昔から人気になるの好きだったし……」

「え?」

「何でもありません! ええと、とにかく! ライバルのような立ち位置にいる人間が、そのような卑屈な態度では困ると言っているのです、私は! 三日月さんはもっと、自信を持ちなさい、自信を!」


 ビシリとこちらを指差す赤坂さん。その仕草はやたらと様になっていて、舞台劇のようにかっこよかった。後ずさりした私は、思わず職員室の扉へと追い詰められる。


「ライバルって言われても……私なんて赤坂さんに比べたら全然、アルマジロみたいなものだし……」

「いや私のどこと比べてどうアルマジロなのか、アルマジロが良いのか悪いのか、三日月さんがアルマジロだったら私は何なのかとか、その辺何も分からないのですけれど! もっと比喩を頑張ってくださいまし! なんというか天然ですわね、相変わらず! そんなだから国語の成績が悪いのですわ!」

「ほら、こんな感じで頭だって悪いし……」

「はぁ!? 無駄に賢い女なんてろくなもんじゃありませんわよ!」


 えぇ……よりにもよって学年一位がそれを言うんだ……。


「大体それならあなただって、運動面ではかなり優秀な成績を残しているでしょうに!」

「それはそうだけど、私って性根がインドアだから……運動よりゲームとか好きだし……。赤坂さんだって、体育には出てないけど、運動はかなり出来るんでしょ? 足とかすごい速いって」

「あれはドーピングだからいいのです、別に」

「いや何も良くないけど!?」

「とにかくそうやって、能力があるくせに延々自虐をされると、見ているこっちが苛々するのです! 多少は慎みなさい!」

「じ、自虐じゃないよ! 絶対、私なんか赤坂さんより全然下だもん、赤坂さんみたいに美人じゃないし、背だって小学生みたいだし、いつも子供扱いばっかで、女扱いされたこと無いし、性格だって本当はこんな、暗くて、普段は無理して明るくしてるだけで、だから私は――」


 私を黙らせるように、すぐ横で大きな音がした。


「――いい加減にしろ。それ以上言ったら本気でブチ切れるぞ」

「っ……!」


 目の前に、赤坂さんの顔があった。

 私の背後の扉に手を当て、距離を詰めている。いわゆる壁ドンってやつだった。


「い、今……」

「いい加減にしてください。それ以上は本気で怒りますわよ、と言ったのです」


 そ、そうだったっけ……?

 赤坂さんは至近距離で、こちらをじっと睨んでくる。

 こうして間近で見ると、やっぱりとんでもなく顔が良い。同性相手なのにドキドキしてくる。

 赤坂さんは普段の彼女からは想像もつかないぐらいに表情を鋭くしながら、諭すような声で私に言う。


「あなた、自分の笑った顔を鏡で見たことはありますか? 私がやるような作り笑いとは違う、本当の笑顔です。みさ――三日月さんは無理に明るくしているだけなんて言いますけど、友人たちに囲まれて笑っている時のあなたの顔は、本当に明るくて輝いているんです。私の方が美人だなんだと言いますけどね、あなたの方がずっとずっと可愛いに決まってる、絶対に。自分が美少女だって自覚が無いんだ、お前は」

「え、あ、え?」

「……っ、ごほん。……あのですね、背が小さいことに本気で悩んでいる女性なんて、今どきあなた以外にそうそういませんわよ。自分の頭が悪いなんて言うけれど、いつも相手の思いを必死に汲み取って、考えて、みんなに気を遣うことの出来るあなたが本当に頭が悪いはずがありません。性格が暗いなんて、他人を照らしすぎなだけでしょう。それだけ優しいのに自分の性格を卑下したら、いよいよバチが当たりますわよ、私から」

「あ、赤坂さんが当てるんだ、バチ……」

「ええ、私は性格が悪いですから」


 ふん、と言って顔を背ける赤坂さん。でも、よく見ると、その横顔はわずかに赤く染まっている気が――


「そろそろ午後の授業ですねー、ご飯もしっかり食べたので、可奈田先生張り切っちゃいますよー。あの赤坂くんが称した私の話術で教室中の生徒を熱狂の渦に包んで昼下がりのまどろみなど許さぬフィーバーアフタヌーンレッスンを繰り広」


 ――そこでガラリと職員室の扉が開いて、扉に体重を預けていた赤坂さんは、私ごと職員室の中にもんどり打って倒れ込んだ。


「ひゃっ!?」

「うわっ!?」

「ぐはぁっ!?」


 二人分の体重を受けた可奈田先生が一番のダメージを負っていた。


「扉開けた途端いきなり美少女二人が雪崩(なだれ)込んできましたのですけれど! なんなんですかもう! 先生はラブコメの主人公じゃありませんよ!」

「す、すいません可奈田先生……」


 私は慌てて、上に乗った赤坂さんをどかすように起き上がる。


「な……!? ちょ、どこ触って――!」

「あ、ご、ごめんなさい赤坂さん……」


 手の平に柔らかい感触が返ってきた。胸を触られた赤坂さんが飛び退くように立ち上がり、私から離れる。

 その拍子に、今まで赤坂さんが持っていた書類がパラパラと手からこぼれ落ちた。


「! しまっ……」

「よっと。はいはい、可奈田先生がキャッチしたので安心してくださいねー。で、えーと、ああ、部活動予算の改訂書類ですか。陸上部の部費調整ですね、了解ですよ、赤坂さ――痛いっ! え、なんで先生の頭をぺしぺしするんですか! そこまでではないですけどまあまあ痛いですよ赤坂さん!」


 私は、目を(しばたた)かせながら赤坂さんを見る。

 彼女は見る見るうちに顔を真っ赤に染め、慌てたように胸の前で腕を組み、足を少し仁王立ち気味に開きながら、そっぽを向いて言い放った。





「――か、勘違いしないでくださいまし! これは伊良部が――伊良部さんがやっただけで、別に、あ、あなたのためとかじゃ、ないんですからねっ!」





「…………」

「…………」


 思わず、無言になる私と可奈田先生。

 自分の言ったことを反芻したのか、ぷるぷると身体を震わせ、涙目になりかける赤坂さん。

 それを見て、黙っていた可奈田先生が、ぽつりとこぼすように呟いた。


「完璧な、ツンデレ……」

「うわぁあああああっ!」

「痛いっ! 書類は投げちゃ駄目です赤坂さん! 駄賃とばかりに先生にダメージを与えていくのはやめてください赤坂さん!」

「違いますから! 三日月さんのことなんて、嫌いなんですから! 全然、絶対、好きじゃないんですからぁー!」

「あ、廊下は走っちゃ駄目ですよ―!」


 日本女子新記録に迫るのではないかというほどの速度で、またたく間に走り去っていく赤坂さん。


 それを見て、私はやっぱり、自分より赤坂さんの方が可愛いんじゃないかなあ、と、そんな風に思ったのだった。

 既に雑魚な聖ちゃん。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アタシってホント雑魚 ……とか思いながら脚バタバタしてるんだろうな
[良い点] 相変わらず聖君が最高過ぎる! 心がモロ思春期の男子してるのに、美少女というのはやはり、イイモノですね。 [一言] >>勝手に人気者にされて、相手が困るとは思わないのだろうか。 ま、待ちた…
[良い点] かっ、かわいいっ……!
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