若かりし僕と大人な私
厚い雲の切れ目から差し込む日光を眩しく思い、目を細めながら歩いていた。秋を感じ始めた頃だった。
「あっ、すいません」と共に腕が揺れ鞄が開く、
足下に落ちた手帳や筆記用具の小物を拾い上げ、改めて頭を下げおじぎをする。
お互いが他人行儀のこの世であるように、そそくさと立ち去る女性を見送りながら、歩行者信号が点滅し出したので足早に交差点を通り抜けた。
落ち着く為に一息いれようとポケットからタバコを取り出し咥えて火を付けようとしてから、路上禁煙に気付きタバコをしまう。
目の前にコンビニを見つけ、時計に目をやり先方との商談時間にはまだ余裕があったのでひと息いれる事にした。
缶コーヒーを買い、外でさっきの続きでタバコに火をつける。
最近は喫煙場所が少なくなってる世の中で、周りに気を付けながら吸うのも肩身が狭くなったものだと改めて感じさせられる。それでもやめる事もせず、香りが気に入っているセブンスターを替える事もせず未だに吸い続けていた。
2〜3回吸ってからコーヒーを飲もうと指をかけた時に、プルタブか…
小さくカチカチと何度か弾きながら、お互いにはにかんだ顔をした若かりし彼女と自分の事を思い出す。