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プロローグ
西暦2030年、3月16日、その日、紗南は死んだ。真っ白な雪で覆われた山奥の小さな小屋で、1人、誰にも知られることなく、死んだ。
季節外れの真っ白なワンピース、首元にはアルファベット『Y』のネックレス、そして、今にも壊れてしまいそうな柱とつながるロープ。細い脚、小さい素足の下には、転がる一脚の古い椅子。その光景とは似合わない綺麗な表情。
彼女の死は定められた運命であり、必然であった。
彼女が死んでもなお、地球は回り続ける。川は流れ続ける。空気は循環し続ける。彼女の死は、世界にとって些細なことであり、人々の日常の一部へと溶け込んでいく。
ある者は働き、ある者は怠け、また、ある者は驕り高ぶっている。それが世界。それが人間。それが全て。
まるで、運命の導きを受けたかのように、世界は象られていく。