プロローグ
よろぴく
白金秋晴はごくごく普通の青年である。
小さい頃、父親の影響によりプラモデルを組み立てることにはまって以来、モノづくりを趣味としている。
中学はモノを作る専門の学校へと入学し、その時代の最先端を学んだ。
極々普通の男。
彼は目に見えている物だけが彼の世界だと思っていた。それが普通だった。当たり前だ。普通の人間ではそれが当たり前。
しかし、この世界は意外とファンタジーだ。
誰もが見ないふりをしているだけで、確かにそこに存在しているのだ。
薄暗い路地裏の先、人が避けて通るその道、そこに入れば非日常が広がっているはずだ。それが望んでいなかった日常でもだ。
だが、非日常を望むような人間が求めるものは魔法であったり、超能力といった不可思議な存在であって、極道や拳銃の世界では決してないだろう。
皮肉なことに、それを見ることのできる人間は選ばれたごく少ない人間とド変人とネジが吹っ飛んだ狂人ばかりで、それを望む厨二思考の人間が近づくことは滅多ない。
確かに魔法、超能力、超化学兵器、神術、仙術などなど、そんなファンタジーもある。
だが、それも本当にふみいったならば、地獄でしかないのではなかろうか。
ファンタジーは命の軽い厳しい世界だ。
そう、命が非常に軽い世界なのだ。
目の前に広がるのは凄惨な現場であった。
血の海が広がり、死体が山となっている。
四肢がねじ切れたもの、髪の毛をむしり取られたもの、歯がすべて抜け落ちたもの、川がめくり取られたもの、生身のまま骨を抜き取られたもの。
積み上げられた人だったそれは普通とは程遠い姿をしていた。
足が震え、しりもちをつく。逃げようだなんて考えは浮かばなかった。
ただ、目の前の光景を処理することだけで精一杯。これをいかに自分とは縁遠いものとして結論付けるか。
これを作り出した奴は狂っている。
どう考えても普通の人間が持つ思考とは違う。どうしてこんなひどいことができるのかわからないわかりたくもない。
彼の目に映る生物は3つ。
一人は銀髪の青年。一人はガタイのいい黒髪の男。もう一人は背の低い金髪の少年だ。
これらがやったとは思えないほど、すがすがしい顔。まるでそれが当たり前のことのようにその場で立ち、こちらを見ている。
「人間か…」
「こんなところに居合わせるとはなァ。運がいいのか悪いのか」
「間違いなく悪いじゃろう。今の光景だけで人が見る一生分の血液を超えている」
冷静にそういうが、彼の胸中は穏やかでない。
状況的に奴らは殺人鬼てきななにかなのだろう。ははは、死んだな、と。そう思った。
「あ…気絶した」
「軟弱な奴じゃのう」
「んなことはいい。とっとと帰るぞ」
「いや、そいつは家に帰してやるといい」
「はァ?俺がか?」
「もちろん。今仕事がないのは貴様だけであろう」
「…めんどくせェ」
ガタイのいい男が彼を背負う。
金髪の少年が懐から小さな銀色のカギを取り出し、虚空でひねれば、空間が歪みその先の世界を映しだした。
最近娘がラインしてくれない。