最終話・大好きな人
居酒屋から結を連れ出し、思いでの神社に連れて来た優太。
優太の気持ちは…
結
4月に軽音のサークルに入り、ゆる~く活動しはじめた。
誰かのライブを手伝ったり、コーラスで参加したり。
バンドやらないかって誘われたけど、バンドは高校で懲りたから、やめとこうと思った。
始終サークルに入り浸っていた訳じゃないから、時々優ちゃんに会いたくなった。
でも、あんな約束しちゃったから、連絡しづらくて。
サークルに参加したって、クラスに男の子がいたって、私の性格じゃそんな世界が広がることはなかった。
優ちゃんは、考えすぎだよ…
たまにサークルの写真を送ったのは、私世界を広げてるわよってアピール。
サークルで仲良くなったのは、同期と先輩何人か。
そのグループで、飲みに行ったり花火大会に行ったり…バーベキューなんかもした。
楽しかったけど…こういうこと優ちゃんとしたいなって思っちゃったんだよね。
グループでわいわいやってる人たちは、普通に仲がいい。
その中でも、先輩の竹本さんはいつも面倒を見てくれて、分からないことは教えてくれる。
気がつくと、近くにいることが多くなった。
なんとなくだけど、家庭教師をしてたころの優ちゃんに似てるかもしれない。
気が合うなとは思うし、なんとなく視線を感じる。
優ちゃんがいなかったら、惹かれていたかもしれない…
でもやっぱり、私は優ちゃんが好き。
他の人を知っても、私の中の優ちゃんは揺るがなかった。
12月、そのグループで、忘年会をすることになった。
お店は、あの神社がある駅の飲み屋街にある。
優ちゃんの会社に近いと思ったけれど、まさか店にいるなんて。
しかも、手首を掴んで連れ出すってなんなの!?
先輩たちは唖然としてて、優ちゃんはやたら強引で。
こんな強引な人じゃないのに。
居酒屋のビルの外に出ても、まだ歩くらしい。
「優ちゃん、そんな引っ張らなくても付いて行くから」
「…そうか」
ようやく、手は繋いだままだけど普通に歩いてくれた。
「ねえ、どこ行くの?もしかして…」
「もしかして、だ」
「なんで?」
「話が、あるんだ」
今さら、なんの話?
私はまだ20歳になってないのに…
神社の参道に入ると、春先に話したおみくじを結ぶ場所にたどり着いた。
夜の20時を過ぎていて、灯籠は灯っているけれど、ここはそこまで明るくない。
くるっと振り返って私に向き合った優ちゃんは、困ったような、恥ずかしそうな、微妙な顔。
「結、ここで俺がグダグダ言った約束のことなんだけど」
「うん…私、まだ20歳じゃないよ」
「わかってる。それ、忘れてくれないか。あの約束、チャラにしてくれ」
「…どうして」
向かいあった優ちゃんを見上げると、少し俯いて言葉を探してるみたい。
ふいに、顔を上げると両腕を私の肩に置いた。
「俺が勧めたとおり、結がサークルで楽しんでるのは、写真を見て分かった。だけど…」
「?」
「サークルの仲間だとは分かっているけど、だんだん耐えられなくなって…」
「耐えられないって、どういうこと?」
「だから、結が他の男と楽しそうにしてるのがだよ!」
「…それって」
「ヤキモチだよ、ヤキモチ!結の世界を狭めたくないなんて言っといて…みっともない有り様だよ」
肩に置かれてた両腕が、そっと背中にまわる。
優ちゃんに包まれて、優ちゃんの温もりを感じた。
私は嬉しくて頬が熱くなった。
「優ちゃんがヤキモチ焼いてくれるなんて、嬉しい」
優ちゃんの胸に顔をぎゅっと埋める。
優ちゃんの声が、頭の上から聞こえた。
「10も年上で、独占欲が強くて、理屈っぽい男だよ。それでもいいのか?」
「うん。優ちゃんだからいいの」
優ちゃんのドキドキを感じて顔を上げると、視界が優ちゃんの俯いた顔だけになる。
柔らかい唇が触れ、私の心臓もとくん、と跳ねた。
優太
結を連れて行ったのは、あの神社。
去年、あの約束を俺から言い出したおみくじを結ぶ場所まで歩いた。
結に顔を向けると、分かったような分からないような、微妙な顔をしている。
正直、大人の男のつもりであんな約束を言い出した。
なのに、これから結に言うことはみっともないことだ。
でも、言わずにはいられないんだ。
「結、ここで俺がグダグダ言った約束のことなんだけど」
「うん…私、まだ20歳じゃないよ」
「わかってる。それ、忘れてくれないか。あの約束、チャラにしてくれ」
やっぱり…なんでと顔に書いてある。
俺は結の肩に両手を置いて、言い聞かせるように言った。
「俺が勧めたとおり、結がサークルで楽しんでるのは、写真を見て分かった。だけど…」
「?」
「サークルの仲間だとは思うけど、だんだん耐えられなくなって…」
「耐えられないって、どういうこと?」
「だから、結が他の男と楽しそうにしてるのがだよ!」
「…それって」
「ヤキモチだよ、ヤキモチ!結の世界を狭めたくないなんて言っといて…みっともない有り様だよ」
結が目を見開く。
中学のときから変わらない、ビー玉みたいな目。
それを見たら結がたまらなく愛しくなって、肩に置いた手を、背中にまわした。
「優ちゃんがヤキモチ焼いてくれるなんて、嬉しい」
小さな声で呟いて、俺の胸に顔を埋める。
俺は、なんであんな約束なんて考えたんだろう。
こんな可愛い結が、他の誰かのものになってたかもしれなかったのに。
心配性の大人は、それでもまだ確認したくなる。
「10も年上で、独占欲が強くて、理屈っぽい男だよ。それでもいいのか?」
「うん。優ちゃんだからいいの」
結の言葉に胸がきゅっとなる。
また、こんな気持ちになれるなんて。
顔を上げて潤んだ瞳で見上げる結の唇を塞ぐ。
もう、高校生じゃない。
生徒でもない。
恋人の柔らかい唇を、愛おしむように包んだ。
唇を離すと、結が俺を見上げて言った。
「ずっとずっと、大好きだったんだよ、優ちゃんのこと。ずっと、こうなりたかったの」
「待たせて、ごめん。」
高校の制服を見せた時も、花火大会で泣いてた時も。
いつも俺の気持ちを待っていた結。
ようやく2人同じ気持ちで立てたんだ。
「さあ、行こうか」
「どこへ行くの?」
「とりあえずなんか食べよう。腹減ったよ」
「もうっ優ちゃんが無理矢理連れ出すからだよ」
「ごめん、ごめん。何が食べたい?」
「優ちゃんと一緒だったらどこでも…さっき、ファミレスの前通ったよ」
「じゃ、そこにするか」
「うん!」
指を絡めて、空腹を満たすため、2人歩き出した。




