嶽岡 未来が平凡であった経緯
無理に背伸びして疲れるよりも、てきとーなところで満足する方が、痛い目に遭わなくて良い。
嶽岡 未来はそんなポリシーに従って生きていた。
彼はほとんど全ての測定において中央値を取る。学力も、知力も、体力も、筋力も、たいていのものは。
ABCDの評価をつけるとすると、Bが8割、Cが2割。そんな割合。これといって苦手なものは特に無かった代わりに、これだと胸を張れるものも特に無かった。
幼少期から彼は少しだけ達観していて、裏方に回りがちだった。
学芸会の発表はもちろん脇役で、普段は目立った生徒を取り囲む輪の真ん中くらいでひっそりと楽しんでいる。
自分を必要以上に卑下することもなく、かといって何かに挑むこともなく、その立ち位置に自然に納得していた。
ナンバー2になっておこぼれに与かるわけでない。ドベになって鬱々とするわけでもない。注目される機会が全く無いほどに、目立たない生徒だった。
彼は、教師から幾度となく聞かれたことがある。
『どうして前に出ないの?』というものだ。
お節介で、失礼で、下世話だけど、子どもにはストレートに話さないといけないというのが染みついているからかもしれないから、反発はしないで簡潔に答えた。
『器じゃない』と。
まだ何にも始まってないのに自分の可能性を狭めちゃなんたらかんたら、と続けられる説教にもっともらしい表情を浮かべてみせながら、空想の世界に逃げ込むのは、幼稚園児の頃から高校生になるまで変わらなかった。
ただ、彼にも反骨心が無いわけではない。それは『ふわっとした野心』なのだった。
いつかきっと、なんかこう、うーん、やってやるからな。見てろよ。見てなくてもいいけど。やんないかもだし。
そんなユルい心持ちで、それでも確かに、彼には野心があった。
彼の野心は、高校2年生の新学期に達成された。
彼は勉強面でも中央値を取り続けたが、中学1年のときと2年のときにひどい成績を取らなかった分が生き、少しだけ良い学校に進んでいた。
そしてその学校でも真ん中辺りをうろちょろし続け、同級生たちにすんなりと溶け込んでいた。
彼は恋愛面に大して理想も希望も抱いておらず、それまで『イイ人だけどときめかない人』という称号に甘んじていた。
しかし新しいクラスにいた女子を、本気でときめかせたいと思ったがために、少しだけ行動することとなる。




