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モンスターズサブマリン! 0話

聖歴1938年8月2日


――とにかく蒸し暑い。

立っているだけだというのに身体から汗が噴き出して止まらない。

空気はどこまでも澱み、風も無い。

しかも酷く狭い。

壁は曲がりくねった配管と計器と無骨なバルブで埋め尽くされ、涼しさの欠片も無い。

そこへガタイの良い屈強な男達がみつしりと集まっているのだから堪らない。

獣人で獅子族のイサカ副長は特に暑いらしく、立派な鬣を紐で何ヵ所か結んで我慢していた。

温度が気になり横目で温度計を探したが、知らない方が良い気がして、すぐに目を反らした。

湿度は……見なくてもわかる。

きっと100%だろう。

絶対優勢海域(サンクチュアリ)を越えてから現在に至るまで、冷房目的の氷魔法の使用は禁止中だ。

平時ではともかく戦闘中の魔力切れは即、死に関わるのだから仕様がない。

魔法専門の兵員を乗せる余裕も無く、魔力回復薬も足りていない。

無い無い尽くしの戦争だ。

涼しくなる日没が待ち遠しい。



聖歴1938年8月4日


――ハリケーンだ。

それも凄い奴にぶつかった。

昨日までの暑さが嘘のようだ。

ゴム製雨合羽を着ているが全く用を為さず、フンドシの奥までずぶ濡れだ。

見張りに立って1時間も経っていないのに食いしばった歯がカタカタ鳴る。

空も海もインクを流したみたいに黒く、一層強くなる風雨と合わさって伸ばした手の先も見えない。

巨大な三角波に乗り上げた艦は垂直に持ち上がり、頂上を越えると今度は真っ逆さまに落ちた。

高速回転するスクリューは空を切り、波に弄ばれるばかりで艦は一向に前進しない。

真横からも波を受けて激しくロールする船体は艦橋(セイル)の上からでも海水を掬えそうだ。

これ以上海面に留まるのは危険であると早々に判断し、バッテリー充電完了の報告を受けると直ぐに急速潜航を命じた。

深度30mでもまだ船体がロールする。

70mでやっと落ち着いた。

本当に酷い猛烈な時化だった。


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