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希う  作者: 樒 七月
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8 戦闘条件その1

 久しぶりにその呼び方で言われた。圭太は嫌そうな顔だったけど、汐里は一度決めたら覆さない。どんなに嫌がっても言い続ける。さっさと諦めてしまえばいい。

 俺も初めてそう呼ばれたとき、かなり抵抗した。それでも汐里は呼び方を変えなかったし、アイツもそれで良いと言っていた。

 特別だね、と言ったアイツ。顔は思い出せない。名前も思い出せない。汐里はいつからイチローと呼んで、いつから一郎に戻したんだ。

 忘れていることがある。それがだんだんわかってきた。

「ケータ、諦めた方が良い」

「はぁ、まあ良いけど。お前の家ってここから近いのか?」

「ここから10分くらいだ。でも、こんなところに公園があったなんて知らなかった」

 この辺りは来たことがなかった。方向が違うと、知らないことが多い。駅と繁華街は反対方向だから、こっちには来る用事がなかった。こういう場所は戦闘場所になるから、戦うときはこういう場所に誘えば良いのか。

 クリーガーとして、いろいろ心構えが必要になりそうだ。ケータと知り合えたのは本当に良かった。


 汐里を家まで送り、そこから10メートル先の家に帰った。親は帰ってきていないと言ったからか、ケータは遠慮することなく家に入った。変に遠慮されても困るから、あっさりした振る舞いは助かる。

 手早く作った夕食を一緒に取り、順番に風呂に入ってリビングで一息吐いた。昨日に引き続き、いろいろなことがありすぎて疲れた。ソファでぐったりしていると、膝に腕時計を置かれた。

「調整してないだろ。ちゃんと調整しておけ」

「調整? えーと、説明されたときに何か言ってたような」

「それだ。クリーガーに出会った時、戦闘場所になる所だったら振動する。戦闘場所以外は冷たくなるんだ。これは自分で設定しろって言われただろ。戦闘開始は初期設定で熱くなるようになっているけどな」

 ケータから、戦闘場所でクリーガーに会ったら時計が反応すると言われていたのに、何も反応がなかったからおかしいとは思っていた。そうか、設定しないと反応しないのか。熱くなったのは初期設定のおかげか。知らない内に戦闘が始まらなくて良かった。

 説明されても、設定するのが面倒くさい。今は説明書を読む気力がない。じっと時計を見ていると、横から奪われた。

「設定してやる。振動、冷たさは強弱があるから、ちょうど良いところで合図しろ」

 左手首に時計を着けられ、周囲にあるボタンを操作しながら1回ごとに確認された。言葉遣いは乱暴だけど、気遣いはバッチリだ。きっと、良いお兄ちゃんだったんだろう。いや、良い兄だからこそ妹を助けたいのか。

 丁度良い感じに調整した後、時計は外されて膝の上に戻った。

「俺には反応しないようにしておいたからな。さてと、確認しておくか。まず、クリーガーになる条件は?」

「人通りが少ない、広い場所。あとは24時間以内に採取した体液を摂取する」

「ああ。俺は血液で、お前は涙な。次、戦闘開始条件は?」

「クリーガーに時計を向けて『フェスト』と宣言する。フェストってどこの国の言葉だ?」

「ドイツ語だ。ちなみに、クリーガーは戦士という意味。で、相手を気絶させるか、負けを認めさせる、『エンデ』と言わせるかで戦闘終了。エンデはそのまま終了って意味だ」

 これは覚えていた。どんなに負けだと言われても、『エンデ』と宣言しなければ負けではない。ジャージ男は先に「負けだ」と言って誤魔化そうとしたから、遠慮なく殴ろうとした。それでも負けを認めなければ、腕を折るつもりだった。腕を折ってもすぐに治るのは昨日実体験した。

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