16 ジュンの理由
ジュンが気絶した後、呼吸をしていることを確かめてベンチへ寝かせた。近くの自動販売機でスポーツドリンクを買ってきて首に当てると、薄く目を開けた。
その間、ケータは腕を組んでジュンを見ていた。
「ありがとう。時計を確かめたら、白が1になっていた」
「いや、俺の自己満足に付き合わせて悪かった」
この戦いは、自分のためのものだった。たまたま、ケルンを賭けたのがケータだっただけで。
ジュンを止めるには、この方法しかなかった。今止めないと、取り返しのつかないことになる。きっと、このままだと傷付くだけだ。
これからジュンを説得するのが大変かもしれない。強情そうだし。
「あ……気絶、したんだ……」
「ああ。エンデは言わなさそうだったから」
意識がはっきりしてきたのか、ジュンはスポーツドリンクを受け取り、反対の腕で目を隠した。
「何で、可愛くないといけないんだ?」
「……太っていたんだ。小さい頃は、ぽっちゃりしていて可愛いって。でも、小学生になって『ぽっちゃり』が『デブ』や『ブタ』になっていじめられて。辛かった。学校に行かなくなった」
そうか。理由はトラウマか。太っている、ただそれだけでイジメの対象になる。そして、加減を知らないからエスカレートする。原因を無くせば良いと思うが、それは次のイジメの理由になる。まあ、ジュンは痩せて次のイジメには繋がらなかったみたいだけど。
「殴られたりするのが嫌だから、合気道を習って。運動してたら痩せた。また可愛いって言われるようになって、僕は認められた。可愛いことでもいじめられたけど、味方ができてイジメはなくなった」
声が震えていた。泣いているのか。自分のトラウマを話すのは辛いだろう。でも、向き合わないといけない。今、戦っているのはそういうことだ。
鞄から携帯を出し、操作した。
「それなのに、また。声が擦れて、可愛い僕はいなくなった!」
「声だけだろ?」
否定するように言えば、ジュンは目を隠していた腕を退けて睨んだ。涙が残る目に、携帯の画面を向けた。
画面には、可愛いを意識して笑った汐里の写真がある。
「俺の幼馴染み。可愛いだろ?」
「……うん」
「で、そいつの声がコレ」
留守録に残っていた音声を再生した。
『明日の朝は先に行くから、学校で渡すね』




