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「じゃあな、また明日!」

そう言って友達と分かれ道で別れた。

『ふぅ…』

やっと、一人になれる。

友達がいるというのはとても嬉しくはあるが、神経がそがれる気分だ。

気を使う事がすごいめんどくさい。

俺、夜間 海斗は高校二年な訳だが、一年の頃は本当に根暗でぼっちだった。

ぼっちはぼっちで周りからの目がとてもめんどくさい。

あとグループ作る時とか他人に迷惑をかけてしまう。

ただ、自分に負荷はなかった。

二年になると、たまたま前の席の男子がうるさい奴で、友達にされてしまった。

話を聞いてないと怒るし、かといって相づちをうっても本当に聞いてるのか疑われる。

とてもめんどくさい。

世の中は理不尽だなぁ。どうせなら俺みたいな考えをもつ人間と友達になりたいものだ。

『それでさぁ!彼氏がね??』

女共のチャラチャラした声が聞こえる。

あぁ、またあいつらか。

最近下校時間がかぶるのか、うるさい女子のグループと近い位置を歩く事になってしまう。

あの甲高い声はとてもうるさいしある程度距離はとってるのに香ってくる臭すぎるほどの香水が鼻につく。

男子はそんな香水野郎となんて絶対付き合いたくねぇよ!

その中に一人だけ、見た目が、清楚な女子がいる。

彼女が面白かったりする。

『あ、並はあっちだよね、バイバイ!』

「うん、バイバイ。」

それはそれは綺麗な笑顔で。

しばらく無言で歩く。

俺はそれを数メートルはなれた後ろから歩いていく。

同じ方向だからストーカーではない。

しばらく歩くと、彼女はいきなり止まった。

…くる。

「ふざけんなっ!!!!」

彼女は大声と共に道端にあった空き缶を蹴った。

こ、こわっ。

「何が彼氏だ知るかよ香水くせぇんだよクソババア!!!なんで同じ方向なんだよこっちの気持ちも考えろよお前みたいな奴と歩いてるこっちの方が恥ずかしいわ私は清楚なの!綺麗で優雅で図書室で本を読んで男性に『今日も綺麗だなぁ』って思われるのが当たり前系女子なのあんたみたいなダサいギャル語使う系ババアとは違うんだよ!!!!」

彼女は全てを出し切ると上を見あげた。

俺もつられて上を見る。

空が綺麗だなぁ。

辺りは夕焼けに染まっている。

それは綺麗なストレートの髪を彼女は風になびかせ、俺はそれにみとれる。

あそこまでギャップがあると本当に二人いるのではないかと疑ってしまう。

どんどん上を見続ける彼女は自然とバランスをくずした。

「あっ!」

俺は反射的に彼女の身体を支えた。

そして彼女に俺の存在がばれたことに気づく。

「…大丈夫?」

比較的コミュ障の俺からこんな言葉が出るなんて奇跡だろうか。

「あ、はい、ありがとうございま…」

彼女はすぐに俺からはなれた。

そして顔を赤くする事もなくただある程度の距離をおかれた。

なんとなく悲しい。

「その、あの、」

彼女の顔は真っ青になっていく。

あぁ、そうか。

「ごめん、今聞いたことは全部誰にも話さないから。」

ついでに聞いていたということを自己申告してしまった。

「き、聞いてたって…な、え?」

彼女の顔はさらに真っ青になる。

このまま倒れてしまうのではないだろうか。

予想通り、彼女はその場からクラクラと膝を地面に落とす。

「ちょ、本当に大丈夫か?」

「ご、ごめんなさい。」

そして涙目になっていることに気づく。

神様俺は女の子を泣かせてしまいました。

「と、とりあえずそこに公園あるし、ベンチにでも座ったら?」

「は、はい…」

「立てる?」

親切に手を出した俺の手を彼女はとろうとしない。

むしろ、軽蔑してる。

「ほら。」

俺は無理やり手をつかんだ。

このまま気絶されても困る。

そして俺はびっくりした。

手が長い。

声にはださなかったにしても、長い!

腕が長い!常人よりはかなりながい!

俺は彼女がこれを気にしていた事に気づく。

やってしまった…

顔を見ることもせず、俺は彼女の手をつかみ公園へと向かった。

公園に入り、やっと彼女の顔を見ると、目が赤くはれてる。

完全に俺のせいだ。

「…座って?」

彼女は無言だ。

さっきとは全く違う。

強気に見えた彼女とは、ぜんぜん。

むしろ弱そうだ。

これも演技なのだろうか。

「その、なんかごめん。」

あまり触れてはいけないのだろうが、やはり謝らないわけにはいかない。

「本当です…」

「人のグチは勝手にきくし勝手に助けたふりしてがっちり触ってきたし……一番嫌いなものを、見られたし。」

「それって、その腕のこと?」

「…そうです。」

俺は彼女の隣に座っていいのか、わからず立ちっぱなしだ。

彼女を見下ろすとセーラーの聖域が見えてしまうため、他の場所に目をうつす。

「別に、気にすることはないんじゃね?」

「気にします。」

敬語の彼女の言葉にはとても、重みを感じた。

「本性さえ、ばれなければ私は可愛くて、綺麗で、運動もそこそこできて、頭もよくて性格もいい、そんなすごい女子なのに、この腕があるから、全てが無になる…!!!」

初対面とは思えないほど、彼女からはぽろぽろと言葉がでる。

「大丈夫だよ。」

なんとなく、支えの言葉をだしてしまう。

彼女を、支えてあげたい。

「なんでですか?」

「俺は、別に良いと思うよ。」

「例えばさ、ほら、高い所にも手が届くし。」

「ぷっ…何それ…」

彼女から、笑顔がこぼれる。

「笑顔は悪い面を全部無に変えれるんだよ。」

そう。

だから、俺はニセモノの笑顔をする美女を装った女より、ブサイクでも笑顔を見せる女子が好きなんだ。

「ほら、もう夕方だ、清楚系女子がこんなとこにいたら、悪いお兄さんにつかまるぞ?」

「…本当だね。」

なんとなく、良い雰囲気だ。

「ねぇ、名前はなんて言うの?」

「え、海斗だよ。夜間、海斗。」

彼女は立ち上がると、俺と目を合わせた。

なんとなく、ドキドキする。

「私は並香、程岸並香。また、会えるかな?」

「そりゃ、明日にでも会えるんじゃねぇか?」

彼女は小さく笑った。

「私に恋するのは百年はやいよ。」

「え?」

そう言って彼女は走って帰っていった。

あぁ、恋してしまった気がした。

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