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本の帯

本の帯


 作家の基本的な仕事は、当然作品を書くところにある。しかし、それがすべて、というわけでもないのだ。その他の仕事の出来具合を見に、春男の部屋に来ていた。別にいつもいつも何かを食べに来ているわけではないのだ。

「そういえばそうだなぁ。」

 春男がなにやら急に言い出した。

「なにがだ?」

「いや、たしかに洋書には帯が付いてないなぁと思って。」

 これだけではなんの話かわかるまい。帯というのは、新しい本などにカバーの上から巻かれている小さな紙のことである。取った賞の名前だとか、誰からの推薦だとかが書いてある部分である。

「なんだ、新聞?」

「そう、ここ。」

 春男が指を指した。

 その部分の記事に目を通すと、どうやら本に帯が付いているのは日本独特な文化で、個人主義のアメリカなどでは他人のお勧め文章など要らない…というものだった。たしかに、洋書に帯がついているのを見たことがない。これが、和訳されているものになれば、カバーも帯もついているのだが。

「これがどうかしたのか?」

「例えばさ、カバーと帯を無くしたら、本がもうちょっと安くなるとかないかな?そしたら売れるかもよ~。」

「ないね。」

 オレはあっさりと言った。

「なんで?」

「アメリカと逆な、あの人が読むなら自分もという考え方の日本でそんなもんやったら、余計に本が売れなくなるだろうが。」

「そんなもんかなぁ…。」

「そんなもんだ。それに、カバーは日本人対応品だ。いまさら、無しになんてしても、受け入れてもらえんさ。だから、さっさと頼まれた、帯の文章を書け!新聞なんか読んでいる暇はないぞ!珍しくお前指名できたんだからな!」

「う~。苦手なんだよなぁ。」

 春男はうなった。ただ単に仕事逃避していただけのようだ。春男のように売れない作家が帯の文章を書くことは珍しいのだろうが、その作家が春男作品を気にいったようで、是非ともと言ってきたのだ。断る理由はない。そして断る気もない。もちろん編集長は顔をしかめたが、気にしない。

唸りながらも春男はパソコンの方を向いた。

「帯なんか、いるのかなぁ…。」

 春男はまだぶつぶつ言っている。

 オレは新聞をガサガサ片付けて、また読書に戻った。

 春男がいま、書いている帯の本の原作である。それに、目を通しつつも、カバーと帯を無くしたら安くなるのか、印刷屋に聞いてみようと考えていた…。


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