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春男と魚の骨

春男と魚の骨


 電話が急に鳴った。という一説に電話は急に鳴るものだと誰かが反論した。それにある作家がそんな反論をするのは急に鳴る電話に驚いたことがないからだと言った。

 まぁ、そんな描写が描かれるのはだんだん少なくなるだろう。春男の家には固定電話があるがオレにはない。せいぜい鳴っても携帯の音楽だ。その日もそうだった…。

「ん……。」

 家で寝ていると携帯がなった。時計を見ると夜中12時をちょっと越したところだ。夜中に電話が鳴ることは作家にもよるそうだが、オレの場合はそんなに多くない。

この曲は春男だ。出る前から相手が分かるのも便利と言えばそうだろう。

「もしもし?春男?」

「夜分に申し訳ない。」

「え?」

春男の声ではなかった。

「あ、あれ?お父さんですか?」

 なぜか起き上がった。

「ええ。息子があなたには伝えておくようにと言うものですから。」

「はぁ、なにか?」

「実は息子が家内の作った魚料理を食べたのですが、骨が喉に刺さったようで…。」

「ええっ!大丈夫ですか?」

「わかりません。明日朝から病院へ連れて行きますが、帰宅は遅くなりますので。」

「あ、ハイ、わかりました。わざわざ、ありがとうございます。あの、お大事に。どうもー。」

 つい姿が見えなくても頭が下がる。電話を切って、とりあえず、オレはまた寝た。

翌日。春男は昼になってから帰宅したようだ。朝一番で医者に行ってきたらしい。オレはいつものように夕方、春男のもとにやってきた。

「うー。痛い。」

しきりに春男は喉を触りつつ痛いと連呼している。声もいつもよりも弱い。黙っていたからといって、痛くないというわけでもないそうだ。

「大丈夫か?だいたい、夜中になんで魚料理を食べたんだ?」

「母さんがテレビを見てやっているやつを急に作ってみたらしくってわざわざ、持ってきたんだ。それを試食したら……。」

「グサッときたわけか。馬鹿だなぁ……。」

「ああ。だけど昨日よりはまし。昨日は痛くてねられなくって。また四日後、病院だ。う~。」

 春男がうなる。春男がこうなってなにが困るかというと夕飯である。おじや……それもミルクティー味。いや、不味くて食べられないわけではないが……食べずにすむならそうしたい味だ。ミルクティーが喉にやさしいらしい。

 結局、喉に骨はなかったようで(刺さっていたらもっと悪化するらしい)、夕飯もすぐに戻った。春男の体重の変化に大きな変化を与えるほどでもなかったらしい。

しかし。

「魚を食べるときはなんだかドキドキするよ…。」

そう言いながら、白身魚のフライをタルタルソースで食べている春男をみたときは、こいつは長生きするに違いないと確信したのはいうまでもない…。


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