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マニアな世界 1

マニアな世界


 春男自身はそんなに変な作家ではないが、(作家が変な人だらけというわけではない)春男の友人はなぜか変わった職業な人が多い。そんななか。

「ボランティア?」

「そう。ボランティアが趣味な人がいてさぁ、あ、公園のゲートボール愛好会のメンバーなんだけど、これ、貰ったんだ。」

 春男が見せてくれたカードを見ると、『切手展』の文字と、開催会場、日時が書かれている。それにしても、切手とゲートボールとどう繋がるのか、なぜ愛好会の人と知り合いなのか、聞きたいことは山のようにあったが。

「行くのか?」

「君も、行こう。」

「オレも?……そんなに遠くないな。」

「だろ?明日が最終日なんだ。」

「……早く言えよ!」

「今日、貰ったんだよ。」

「……わかった、夕方でいいな。」

「うん。」

 オレは、帰るなりパソコンを開き、会場までの行き方を調べた。最先ルートではない。電車でどこからなら春男を歩かせることができるかを調べるためである。春男の体型は、あいかわらず丸いのだ。それでも、興味の持った展示会やら、博物館系には行こうと自ら言い出す。そのときは、絶好の運動をさせ日となる。

 翌日。

「け、結構遠いねぇ。」

 春男の吐く息が白い。

「ま、大きな会場だからな。土地が必要だったんだろ。ほら、入口が見えてきたぞ、あれだ。看板もあるし、間違いないだろ。」

「ああ、ホントだ。」

 オレのこっそり回り道作戦も成功し、会場が見えてきた。それなりに人が向かっている。周りについていくと、入口で一日券を発売している。

「あ、庄内さん。」

 春男が手を振った。

「いやー、来てくれてありがとうございますー。」

 庄内といわれた男性がにこやかに手を振った。ゲートボールというから老人を想像していたら、やけに若い。想像があまりにもおじいさんだったからだろうか。

「いえいえ、じゃ。」

「じゃー、また公園で。」

 彼は、ひらひらと手を振って、次のお客の対応をし始めた。

「おい、なんか、えらく若そうに見えるが、オレたちより若いんじゃないか?」

「若いよ?」

「ゲートボール愛好会で知り合ったんじゃないのか?」

「そうだよ?僕は入ってないけど。」

 春男の言葉にオレは混乱してきた。オレはため息をついた。どうも説明を求めても無駄らしい。あきらめようと思った。

「おー。」

 春男の歓声に、前を向くと国ごとのブースがあり、そこで外国の切手を販売している。珍しい切手の展示や、切手の歴史、郵便の歴史、レターセットの販売に、なぜかポスト型貯金箱の販売など、結構大盛況だ。

 よくみると、一般受けするようなキャラクターものから、誰が何のために買うのかわからないような切手まである。サイズもばらばらだし、はがきサイズな大きな切手まである。

 柄も人物から、スポーツ、楽器、草木、花、鳥、宇宙、海の生物などあらゆるものがそろっている。日本のコーナーには、日本にいながら見たこともないような種類があったりした。まぁ、最近切手を買った記憶がないから、当然というば当然なのかもしれない。

 使用前から、使用して切り取ったものまであり、単品から大量販売まである。中には、座り込んで、ファイルをめくっていく人や、自分の持っているものをほかの人と交換している人までいる。

「すごいな。春……。」

 横を向くと、春男はとっくに駆け出して、見に行っているようだ。いいところは、春男の体型は目立つ。すぐに見つかるところだ。あんなに、入口までに息を切らしていたというのに、会場内ではあっちにウロウロ、こっちにウロウロとよく歩く。

 料金は円表示だけではなく、ドルで書かれていたりもする。オレは見ていることのほうが多いが、春男は店主と(どうみても日本人じゃなさそうな顔だ)ああでもない、こうでもないとなにか会話をして、買っている。春男のほうを見るたびに、なにか手荷物が増えているような気がしてくる。

「おーい、これに並ぼう!」

 春男が遠くから、声をかけてきた。行ってみると、切手の切り取り線で作るアートとのこと。あの、切手を切り取る点線で模様をつけるということらしい。意外と多くの人が並んでいる。オレは並びながら、聞いてみた。

「ここのチケットくれた人とは、なんで知り合ったんだ?」

「ああ、庄内さん?父さんの知り合いなんだ。実家の近くの公園でゲートボール大会が開かれていたんだ。父さんと庄内さんはフリーマーケットの仲間でね。」

 どうも、春男は作家なはずなのに、ものを説明するのが下手だ。しかし、オレはこれになれてきているのか、理解できた。要するに、フリーマーケットで知り合った春男の父親と庄内さんが、ゲートボール大会開催で再び会い、親子ともども仲良くなって、チケットが父親ではなく春男のところに回ってきたようだ。

「ほらほら、ああやって押すみたい。」

 春男は前の人たちの様子を見ながら、目を輝かせている。オレはどちらかというと、春男の買ってきた切手の袋の大きさが気になる。手紙を出す相手もいないのに、そして日本のものでない場合は、使用方法がないというのに大量に買う気持ちがあまり理解できない。

だが、確実にそれは春男の場合、作品に出てくるはずだ。あとで絶対に見せてもらおうと思った。

「なかなか面白いねぇ。」

「ああ、そうだな。」

 オレはそうは言ったが、男二人で切手展はどうなんだろうとぼんやり考えてもいた。


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