アイアンゴーレム
ゴーレムを仲間にした翌朝。
洞窟の入り口からは冷たい風が吹き込んでおり、俺はーー
「ングッ!?」
鳩尾を鉄塊で殴打されて悶えていた。
痛みの原因を確かめるために、視線を腹の方に向けるとそこには手乗りサイズのアイアンゴーレムが鎮座していた。俺の呻き声が聞こえたのか、心配そうにしている。うん、可愛い
「ゴーレムか…とりあえず、重いから降りてくーーグエッ!?」
言いかけたところで、ゴーレムが跳ねた…
え?なんで?すっごい痛いんだけど?
『そりゃ女の子に重いなんて言ったら攻撃されるに決まってるじゃないですか。優しさの権化たる私でも起こりますよ、それは』
「優しさの権化…?」
『何か文句ありますか?』
ギロっと、メルが睨んできた…その顔あんまり可愛くないからやめた方がいいと思いまーす…ね?メルのイメージ的にさ?可愛い方がいいじゃん?
『まあ、それはそうですね…とりあえず右足だけで許してあげます』
「ごめんなさい壊すのだけはやめてくださいメル様は世界一可愛くて優しい神様なのでその右手に持ってる禍々しい戦鎚をどこかに捨ててきてくれると信じていますというか捨ててきてくださいお願いします」
『今回だけですよ?次は、こうっーーですからね』
可愛い掛け声と共にメルが戦鎚を振ると壁が粉々になった…
砕けた壁のかけらは驚くほど細かくなって、音もなく地面に落下した。
……こわ
『誰が怖いんですか?』
「何も怖くないです」
『発言には気をつけてくださいね?』
「いや、何も言ってなーー」
『えいっ!(ゴシャバキッメキョーーガラガラガラ)』
「ッスーー発言には気をつけますーーん?どうした?」
俺がメルに恐れ慄いていると、アイアンゴーレム(呼びにくいから何か名前を考えておこう)が俺の足に体当たりしてきた。ちょうどくるぶしに当たって痛い…
「どうした?(ゴスッ)こっちに行けばいいのか?(ゴスゴスッ!)それ痛いからやめてくれない?(ゴリッ)いッーーーー!?!?!?」
跳ねながら体当たりをしていたアイアンゴーレムがちょうど小指のところに着地して、俺の小指がご臨終した。
痛すぎる…死ぬ…
それとさ?アイアンゴーレムめっちゃ心配そうに体擦り付けてくるのは可愛いけど、原因が自分だってことに気がついてなさそうだね…?骨に当たってちょっと痛いよ…?
『情けないですねぇ?』
「煽りよる……わかった、行くから行くから体当たりやめろ?な?」
アイアンゴーレムは未だに体当たりを続けてくる…そろそろ手が出そうだ(短気)
『あ、お兄さんが蹴ったらアイアンゴーレムちゃん一瞬で砕け散るから気をつけてくださいね?』
「マジで…?気をつけよう…」
メルからの注意を聞きながら、アイアンゴーレムの言う通りに壁際に行くと何か赤黒いものが埋まっていた。
そこに辿り着くと、アイアンゴーレムはそちらに体当たりを始める…これを取り出したいってことか?
「これが欲しいのか?」
体当たりをやめさせて、そう聞くとぴょんぴょんと跳ねて肯定してきたので壁を砕いて取り出してあげた。うわあ、素手で壁壊せちゃった……破壊力ってこういうことか…
取り出した赤黒い鉱石をアイアンゴーレムに渡すと、何度かそれに体当たりをして取り込んでしまった。
体に悪そうな色してたけど大丈夫かな…?お腹壊したりしてないだろうか
俺が心配してるのを感じ取ったのか、アイアンゴーレムはクルクルと回って自らの健康を示してきた…可愛い
安心して眺めていると、アイアンゴーレムが先ほど食べた鉱石と同じくらいの大きさの銀色の物体を吐き出した…
「え!?吐き出した!?これどうしたらいい!?動物病院とかに連れて行ったほうがいい感じ!?」
『いや、この世界に動物病院とかないですよ』
「確かに……」
『というか、アイアンゴーレムちゃんも元気そうですし大丈夫じゃないですか?』
アイアンゴーレムに目を向けると、メルの言う通り元気そうに跳ねていた。
よかったぁ…てか、じゃああれはなんなんだ…?
そう思いながら、アイアンゴーレムが吐き戻した銀色の塊を見ているとその塊がウゴウゴと蠢き出し、アイアンゴーレムに連結した。
「合体した!?」
『おぉー、アイアンゴーレムってこんなことできるんですね、知らなかったです』
「いや、お前は知っとけよ」
メルにツッコミを入れていると、連結した鉄塊がツルハシのような形に変化し、アイアンゴーレムがそれを使って壁を削り始めた。
「アイアンゴーレムってみんなこんなことできるの?」
『うーん、私の知る限りだとできないんですけど…バグですかね?』
「他の個体と違うことができる生き物のことをバグっていうなよ…人の心を失った化け物みたいだぞ」
『人間の耳って二個あるから便利ですよね(ニッコリ)』
「片方は予備っていうわけじゃないんだぞ?(ニッコリ)」
メルとそんな話をしているといつの間にか日は暮れていて、部屋は2回りほど広くなっていた。
『おぉ〜いつの間にか広くなってますね〜』
「いや、それはそうなんですけど…それよりなんかアイアンゴーレムがなんかすごいことになってる方が気になるんですけど」
部屋を2倍に拡張した結果、大量の鉄を獲得したアイアンゴーレムはみんなが想像するあのゴーレムっぽい見た目になっていた。見た目はドラ◯エのゴーレムを銀色にした感じだ。
いや、デケェよ…広くなった分全部一人で消費してんじゃねぇか…
「これ、戻れるのか?」
戻れないなら邪魔なんて物じゃないんだけど…
アイアンゴーレムに視線を向けて聴くと、こくりと頷いた。そして、少したつと体が蠢き出して鉄の塊がボトボトと落下し、小さな鉄だるまが残っていた。落下した鉄の塊は部屋の端っこに集まっていた。
「まあ、戻れるならいいか…鉄の塊は邪魔だけど」
『てか、この洞窟鉱山にあったんですね…知らなかったです』
「メルが決めたんじゃないの?」
『ダーツで決めたので…』
「ダーツの旅か???俺の運命をそんなもんで決めるのやめてもらえる?」
『小さいこと気にしないでください』
小さくないんだが…??まあ、こういうことをメルに訴えても不毛なのは流石に理解したからな…今日は部屋を増やしてさっさと寝よう。
この部屋の奥に、部屋を増やして拡張した部屋はアイアンゴーレムの戦闘部屋にすることにした。あんだけでかくなれるんだったら、幼体でも戦えそうだし。




