第6話
検証の為に出していた翼をもう一度仕舞……おうとしたところで、まだこの翼を使って空を飛べるかの検証をしていないことを思い出し、翼を仕舞うのをやめた。
「よし、やってみるか」
いきなり高く飛んで、制御ができなくなったりしたら困るから、低く低く、と強くイメージしながら、俺は翼をバタバタと動かしてみた。
翼は自分の手足のように簡単に動かせるからな。
「お、おぉぉ? おぉ!?」
飛んだ! 俺、飛んでるぞ!
テンションが上がったのもつかの間。俺はそのままバランスを崩して、急速に地面に向かって落下をしていた。
当然失ってしまったバランスを短い時間で取り戻せるはずもなく、俺はそのまま地面に思いっきり体を打ちつけてしまった。
「痛、ってぇ!」
……良かった。……いや、良くは無いけど、あんまり高く飛んでないで助かったな。
そのおかげで、痛い、で済んでるんだから。
これなら、さっき男に腕を斬られたり、斬られた傷をゴブリンに刺激された時の方が痛かったから、まだマシだ。
「これも練習あるのみ、かな」
打ち付けた体を起こしながら、俺は呟くようにそう言った。
そして、また翼を動かして空を飛ぶ練習をしようとしたところで、今更ながらに思った。
俺は吸血鬼。さっきの男の反応を見る限り、考えるまでもなく人類の敵だ。
……こんなにまだ日が高いうちから空なんて飛んでいて大丈夫なんだろうか。
太陽が弱点じゃないことは分かった。だから、陽の光を浴びること自体は大丈夫なんだが、問題は目撃者が現れることだよ。
俺を見た奴が俺を討伐しにくるなり、誰かに知らせるなりして、それこそ討伐隊を組まれるかもしれない。
「……練習は夜にしておこうか」
夜も誰かに見られる可能性が無いとは言わないけど、まだ夜の方がマシなはずだしな。
リターンがあるのならまだしも、リターンの無いリスクを取る意味なんて無いし。
それより、空を飛ぶ練習を夜にすると決めたのはいいとして、夜になるまでは何をして過ごそうな。
「ま、適当に歩いて人里を探すか」
俺が強くなるためには、人間種ってのと出会わないと話にならないみたいだからな。
実際、ゴブリンやスライムを倒しているはずなのに、人間の男を事故で殺してしまった時みたいな体が軽くなる感覚が全く無いし、多分、俺は人間種ってのを殺す以外では強くなれないんだろう。
それがこの世界の吸血鬼の普通なのかは分からないが、別に今はそんなこと知らなくたって問題は無いはずだし、特に深く考えるつもりは無い。
そうして、俺は適当な枝を拾って、枝が倒れた方向に向かって翼を仕舞ってから歩き出した。
進むべき道を考えたところで、ここが異世界(多分)な時点で、どれだけ考えたところで答えが出るわけが無いしな。
後、シンプルに自由って感じがしてなんか良くね? ……そんなことも無いか。
まぁ、俺が楽しいんだから、別にいいだろ。




