第5話
よし、一つ目の問題は解決したし、もう一つの問題について考えようか。
俺は吸血鬼になった。
そこまではいい。
ただ、問題はそこからで、俺が外に出たとする。
その時、太陽の光とかって大丈夫なのかな。
いやさ。せっかく吸血鬼になって、自由に生きると決めたのに、太陽の光が弱点とかで、光を浴びるだけで灰になってしまう、とかだったらかなりガッカリする……と言うか、困るんだが?
……だって俺、たださえ吸血鬼の癖に弱いし。
太陽くらい平気であってくれなきゃ本当に困るんだが? つか、困るどころか、普通に生きていける気がしないんだが?
結構大変だと思うぞ? 太陽に浴びずに生活するのって。
「…………まぁ、それもこれも、結局は出口を見つけなくちゃ分からないことか」
確かな不安を抱えつつも、この洞窟から何事もなく出られる保証なんてどこにもないんだから、今は洞窟から出ることだけに意識を割くことにした。
「……」
そうして歩みを進めていると、水色のプルプルとした存在……俺の知識で言うところのスライムが現れた。
……多分、ゴブリンよりも弱い存在だと思うから、出口に近づいているんだと思う。
ただ、問題は俺が勝てるかって話だな。
……スライムなんかに負けるとは考えたくもないが、さっきそんな考えで俺はゴブリンにボコボコにされてしまっているんだ。……そう考えると、スライムだって油断できる存在では無いだろう。
俺は目の前に現れたスライムに油断することなく剣を抜き、両手で素人ながらもちゃんと構えを取った。
相手に動きは無い。
プルプルと震えているだけだ。
焦れったくなった俺は、こっちから仕掛けることにし、一歩を踏み出すと同時に、両手で剣を力一杯スライムに向かって振り下ろした。
すると、スライムの体は真っ二つに割れ、そのまま地面にドロドロと溶けていった。
「……流石にスライムには負けないみたいだな」
武器が無かったらキツかったかもしれないけどな。
……スライム相手に武器が無かったら負けるかもしれないって……ま、まぁ、俺はまだ生まれた(?)ばかりなんだ。こ、これからだろう。
まだ人間だって一人しか殺してないしな。……あれは事故だったけど、そんなことはどうでもよくて、まだまだ成長出来るってことを喜ぼう。
……正直に言うなら、成長なんて出来なくても良かったから、最初から最強にして欲しかったけどな。
「無い物ねだりをしたって意味は無いし、地道にコツコツ、だな」
地道にコツコツ人殺し。……ふふっ。前世だったら、マジでヤバい奴だな。
そんなくだらないことを思いつつ、俺は更に洞窟を進んだ。
そして、とうとう見えてきた。……陽の光だ。
心臓の鼓動が俺の緊張状態を嫌でも自覚させてくる。
「……すぅー、ふぅ」
一度深呼吸をして、俺はそのまま洞窟の出口に向かって近づいた。
そして、陽の光ギリギリのところで足を止めた。
「……よし、手だけなら……いや、指だけなら、仮に陽の光が弱点でも、体全部が灰になる、なんてことは無いはずだ」
自分に言い聞かせるようにそう言って、俺はそのまま小指を陽の光に向かって伸ばした。
傍からみたら、かなりバカバカしい光景に見えるかもしれないけど、俺にとっては大事なことだ。
正直恐怖心はあるけど、今確認しておかなくちゃならない事だと思うし、今、頑張らないとダメなことだって理解出来てるからな。
「……何も起きない、な」
俺はそのまま手から腕、足、身体、翼、と全て陽の光に晒してみたが、特に異常は見られなかった。
少なくとも、俺は太陽を克服している吸血鬼だったらしい。




