第4話
あっという間に男の血は全て飲み干してしまった。
それくらい、美味かった。
そして、そこでやっと俺は少し冷静になってきた。
「さっきまで、ばっちいだなんて思ってたはずなのに、全部飲んじまったな」
ま、美味しかったからいいか。
そもそも、これはいわば本能だ。
そんな吸血鬼としての本能に逆らおうとする方が間違ってたんだよ。
適応していこう。そうじゃなきゃ、生き残れない。
「今後の方針をどうするかってところだよな」
体に受けた傷を再生スキルで本当にゆっくり回復……あれ? さっきより回復が早くなってるような気がするな。
これも人間を殺して強くなった影響か? それとも、吸血スキルの影響か? ……まぁ、今はいいか。時期に分かるだろ。
それより、今は今後の方針だな。
俺は人間の血の美味さを知ってしまった。
あれだ。例えるなら、人間の味を知ってしまった熊みたいな状態だ。
俺はまだまだ弱いと思うし、勝てるかは分からないけど、もしも次に人間種っていうのを発見して、そいつが勝てそうな相手なら俺は多分……いや、絶対に殺すと思う。
強くなって生存率を上げるためにも、美味い食事をしたいって意味でもだ。
ただ、考え無しに殺して回ってたら最初に思った通り、討伐隊なんてものを組まれる可能性があるんだよな。
……ある程度強くなった後ならまだしも、今の状態でそんなものを組まれでもしたら、俺は簡単に終わる。
「……死なないために強くなるには殺さなくちゃならないけど、殺しすぎたら討伐隊を組まれるかもしれない。……なんてクソゲーだよ」
俺が賢くないからかもしれないが、これはもうある程度割り切るしかないのかもしれないな。
そんなことを考え続けて身動きが取れなくなってたら元も子もないもんな。俺は死なないために強くもなりたいし、美味いもの……血もいっぱい飲みたいもんな。
まぁつまり、あれか。結局、方針は自由ってことだな。
優先順位としては俺の命が一番で、二番目が美味いもの。後はその他ってことでいいだろ。
「ま、それもこれも全部、結局ここから出ないことには話にならないんだけどな」
そんなことを呟きつつ、ある程度体の傷が再生してきたのを確認した俺は、倒れている男から腰辺りにあった剣の鞘を回収して、剣をその鞘に仕舞いながら、さっき倒したゴブリンがいた方向に向かって歩き出した。
理由としては単純で、こっちが出口だと思うからだ。
だって、さっきの人間は最初から血だらけだったし、そんな状態で更に洞窟の奥に向かって歩みを進めるとは思えないから、消去法でこっちが出口なんだろう。
……まぁ、この先で分かれ道がある可能性は否定できないけどな。その時はその時だ。
そして、少し歩いたところで、俺は思った。
まず一つ目が、この翼は仕舞ったり出来ないのか? ということだ。
……そもそも、俺、服を着てるよな? 破れてる感じはしないし、どうやって翼が出てるんだ?
……念じたらどうにかなったりしないかな。ファンタジーな原理で。
別に翼はカッコイイと思うんだけど、やっぱり、さっきみたいに人間と出会った時にパッと見で吸血鬼……いや、あの男は魔族って言ってたな。……まぁいいか。とにかく、吸血鬼でも魔族でも、パッと見でバレるのは問題だろう。
……翼以外でもバレる要素が外見からあるのかもしれないが、少なくとも今は考えなくてもいいはずだ。
そして、俺は翼を無くす訳ではなく、背中に折りたたむようなイメージで見えなくなるように念じてみた。
首を後ろに向ける。
その結果、綺麗に翼が消えた。
もう一度翼が出てくるように念じてみる。
すると、直ぐにさっきと同じようにバサッ、と俺の背中から翼が広げられた。
……なにこれカッコイイ。
と言うか、これ、ちゃんと飛べるのかな。
……ま、今は洞窟の中だし、それは外に出てからだな。
よし、一つ目の問題は解決したし、もう一つの問題について考えようか。
俺は吸血鬼になった。
そこまではいい。
ただ、問題はそこからで、俺が外に出たとする。
その時、太陽の光とかって大丈夫なのかな。




