第1話
【もしも次の人生があるとしたら、君は何になりたい?】
意識が覚醒した時、聞こえてきたのはそんな訳の分からない声だった。
思考が定まらない。
だからこそ、俺は直前で読んでいたラノベに影響され、答えた。
「吸血鬼」
理由はシンプル。
かっこよくて、強いから。
【そう。なら、頑張って人間種をいっぱい殺すんだよ。そうしたら、強くなれるから】
そして再び、俺の意識は闇の中へと葬り去られた。
☆ ☆ ☆
意識が覚醒する。
「……ん、んん? ……どこだ、ここ」
そこはどこかの洞窟の中だった。
暗い……はずなのだが、何故か視界がクリアなことに違和感を覚えつつも、俺はその場から立ち上がった。
そしてそのまま、訳も分からずに歩き始めた。
そのままジッとしていたって何も始まらないと思ったからだ。
なんで俺がこんな所にいるのかは分からないが、洞窟の外にさえ出れば、ここがどこかくらいは分かる……といいなぁ。
スマホも何故か持ってないみたいだし、本当に知らない場所だったらどうしような。
そんなことを思いつつ、本当にこっちが出口であっているのかも分からずに歩いていると、少しずつ記憶を思い出してきた。
……そうだ。あの時、あの訳の分からない思考の定まらなかった空間での問答はなんだったんだ?
俺はあの時、確か……そう、あの声の返答に吸血鬼になりたい、みたいなことを答えていたはずだ。
「…………え? 俺、吸血鬼になった、のか?」
それを理解……いや、思い出した瞬間、思わずといった感じに俺はそう呟いた。
洞窟に俺の声が少しだけ響くが、そんなものはどうでもよかった。
だって、その声を発すると共に、俺は自分の体の違和感に気がついてしまったから。
首を後ろに向ける。
その結果、違和感の正体が視界に入った。
……そう。俺の背中から、黒い翼が生えていたんだ。
鳥が生やしているようなふさふさとした翼では無く、イメージ的には悪魔とかそんなものが生やしてそうな翼だ。
え? 何これ? ドッキリ?
翼に手を伸ばし、触れてみる。
……間違いなく、俺の翼なんだと理解した。
だって、体の一部を触っている、という感覚があったんだから。
「……マジか」
絶句する。
ただ、それも束の間だ。
よく考えて欲しい。
吸血鬼転生なんてどう考えても勝ち組転生じゃないか!
確かに、日光の光を浴びたら弱体化……もしくは消滅してしまうのかもしれない。
ただ、それさえ除けば、最強なのは間違いないだろう。
何の根拠も無いけど、吸血鬼が弱いなんて聞いたこともないし。
なら、びっくりはしたけど、割り切ろう。
何にも縛られることなく、好きに生きられると考えれば、むしろいいじゃないか。
「自由万歳!」
俺が馬鹿みたいに洞窟に声を響かせていると、前方から人影が現れた。
「グギャギャ」
暗闇だから、本来であれば分からないのだろうが、恐らく俺が吸血鬼になったことによって、夜目を獲得しているのだろう。
人間で言うなら子供くらいの背丈の緑色の化け物……前世の創作物で言うところのゴブリンがそこにはいた。
まるで良い獲物を発見した、とばかりの残虐な笑み? を浮かべて。
「ッ」
殺気だ。
日本で平和に暮らしていた俺には縁遠いものを感じてしまった俺は、思わず2歩3歩と後ずさってしまう。
だが、そこで思い直した。
「お、落ち着け。俺は吸血鬼なんだぞ? たかがゴブリンくらいがなんだ。よ、よし! か、かかってこいよ! 俺が相手してやる!」
10秒後、俺は地面に倒れ伏していた。




