表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/34

ニンカツその十七「ナリアの弟子入りハーレム入り」

「助けて頂き、ありがとうございますオカシラ殿。しかし麻薬の製造法については、はっきりと覚えておらぬのです」

 ベッドに横たえられ、家人に看病されながら、ズローはそう頭を下げた。

「死霊に取り憑かれていた間の記憶は、曖昧って事か」

 麻薬の製造施設は、屋敷の地下室。

 死霊に取り憑かれたズローが一人で設備を整え、大枚叩いて購入したゴーレムに作らせていた。

 使用人に堅く口止めし、立ち入りも禁じていたあたり、徹底した機密保持だ。

「地下室には入らず、コンクリートで埋めます。信じて貰えぬかも知れませんが」

「信じられないと言えば奥さんだ」

「若い女を娶って、しかもいつの間にか消えてるなんてな」

「麻薬漬けなのに、どう逃げたのか」

「腕輪を贈ったのも、奥さんですよね」

「はい。恥ずかしながらこの年まで仕事ばかり、親戚の紹介で結婚したのですが、その矢先にこんな」

 行方を眩ませた妻に未練を寄せるが。

「奥さんが死霊を取り憑かせた、と見るのが自然だな」

「そんな……」

 がっくりと肩を落とす大商人を、執事や使用人が気遣い慰める様は、彼の善良さの現れだろう。

「いいさ。《オレたち》は死霊と奥さんを追う。何か分かったら知らせるよ」

「あ、ありがとうございます! これはほんの気持ちばかりですが、感謝のしるしです。どうかお受け取りを」

 執事がずっしり重い皮袋を差し出す。

「遠慮なく頂こう。警護の連中にも手厚くな。頑張ってたぜ」

「もちろんです」

「じゃあな!」「また来るよ」

「どうかお大事に」

 開け放した窓から、外に飛び出す《オレたち》とナリア。

 手近な屋根に登り、その陰に潜んで。

「夜明けが近いな」「これでお別れだ」

「ふえっ!?」

「成り行きでくノ一にしたけど、ひとまず麻薬は片付いた」

「ナリアは元の生活に戻るといいよ。《オレたち》と連む理由はないだろ?」

「そんな、終わってませんよお! 死霊と奥さんだって……私が邪魔ですか!?」

「邪魔じゃない」「だが危険だ」

「巻き込みたくないんだよ」

「キミにメリットもないし」

 このままくノ一ハーレム入り第一号にすれば楽だ。

 でも、それはしたくない。

 彼女が自分で選んだのではなく、状況に流されて一緒に戦ったのだ。

「今回は運が良かったんだよ」

「悪事を潰し、得るものもあったけど」

「いつもこうはいかない」

「下手すれば死ぬし、手を汚す事も」

「ナリアは未だ戻れる。学園で優等生として学び、立派な冒険者になれるんだ。勇者だって夢じゃない」

 ここまで懸命に説得する理由は二つ。

 一つは、忍者になるしかなかった《オレたち》の悔恨と羨望だ。

 忍務で死んだ仲間を思い出し、忍者でなければと思うとやりきれなくて。

 もう一つは、ナリアに抱く親近感。

 一夜にも満たない出会いで、《オレたち》は彼女が好きになった。

 だからこそ《オレたち》のせいで死なせたくない。後悔させたくない。

「ナリアだって、理由がないだろ。一時の感情だけじゃ連れて行けない」

「……ありますよ」

「「えっ?」」

「私は学園に背いて迷宮に挑み、王国に反逆しても秘宝を手に入れたい。だから勇者になれないですよ、私って」

「ナリア……」

「それをやり抜く強さと賢さが必要で、私に与えてくれるのは」

 まっすぐ《オレたち》を見つめる、ナリアの真摯な表情、覚悟に満ちた瞳。

「弟子にして下さい。オカシラ様」

 《オレたち》は半歩、後ずさる。

(おい、気圧されてんじゃねーよ!)

(オマエの方だろ! 参ったなあ)

(上手く言い訳しろよ。頭脳担当!)

(四の五の言ってられないか。ままよ)

「代償は?」

「ふえええっ?」

「タダじゃ弟子にできない。でも安くもないぞ。《オレたち》が満足するものでなきゃダメだ!」

 無理難題を押し付けて、諦めさせる。

 金貨の詰まった袋をぶら下げて、これでもぜんぜん足りないと告げる。

「世界でただ一人、伝説のニンジャの弟子入りだ」

「しかも秘宝を盗んで、国家反逆罪にも巻き込まれるんだからな」

「とても払える金額じゃねーぞ」

 そう意地悪く畳みかけるが、内心オレたちはいまにも泣き出しそうなナリアの様子に、胸が張り裂けそうだった。

 動揺の余り紅白模様が忙しなく蠢き、マフラーもパタパタ揺れる。

 と、垂れ耳をぱふんと跳ね上げて、ナリアが顔を真っ赤に叫んだ。

「だったら! この命をお返しします! 私を自由にして下さい! なんでもしますからぁ!」

――ぷつん。

「言ったな?」「もー限界」

「ふぁ?」

「《オレたち》」「我慢してたんだぜ」

「ナリアが良いって」「言ったなら」

「「ナリアとニンカツしてやるよ!」」

「ふえええっ? ニンカツってぇ!?」

「平たく言えば」「子作りだ!」

「「《オレたち》のハーレムに入るのが、弟子入りの条件!!」」

 恥も外分も捨てた最後の一線を引いて期待半分、後悔半分でドギマギしながらナリアの答えを待って。

「二、ニンカツしますぅ。だから私と子作りして、弟子にして下さいっ!」

「よーしよしよし」「契約成立だ!」

 がしがしがしがし。

「ふひゃあっ! なんで腕を四本も、肩を掴むんですぅ?」

「そりゃオマエを」「逃がさない為さ」

「どれだけ《オレたち》が、ムラムラしてたと思う?」

「天然おっぱいバニーめ!」

「いっぱい気持ちよくシテやるよ!」

「ゆるしてって泣いても止めないから」

「「覚悟しろよぉっ!!」」

「いっ、今ココでっ!? もう朝ですよお日様のぼって明るくなって! みんなに見られちゃいますよぉ~っ!!」

「だから」「ガマンできないんだって」

「「ナリアがエロいのが悪い!」」

「えええっ! だっ、だめぇえええーーーーっっ!!」

 かくてナリアは《オレたち》に弟子入りし、くノ一ハーレム一号となった。

 さんざん可愛がっちゃって、後ですっごく怒られたけどな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ