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ニンカツその十四「くノ一の覚悟はバニースーツを纏う」

「もう変な薬に手を出すんじゃねーぞ」

「そもそもなんで、麻薬中毒に?」

 転職を果たしたナリアに、事の次第を尋ねる《オレたち》。

「私、学園に内緒で、迷宮(ダンジョン)を探索してるんです。どうしても手に入れたい秘宝(アーティファクト)があって」

「ああ、迷宮学園(ラビデミア)の生徒だもんな。秘宝は提出の義務があるか」

「学費免除の条件を破るの、色んな意味でヤバくね?」

「はい、無条件で退学、国家反逆罪にも問われます。だからパーティーも組めなくて」

「秘宝の半分は、王国に納められるもんな」

「でないと学院が秘宝を独占して、王国を支配できるからなー」

 当初は王国や有力貴族、神殿指導者や富裕商人達も学院にあまり期待しておらず、発見したアイテムには見向きもしなかった。

 しかし学院の探索隊が深部へ到達、貴重な素材や秘宝を次々と回収してくるにあたり、慌てて後援契約を変更させた経緯がある。

「武器や防具でもヤバいのに、特級魔法の道具や奇跡が起こせる聖遺物も出てくるし」

「そーなんですぅ! でも私、『千剣魔王ルザルバ』が奮っていた妖刀マサムネを探してて」

「マサムネ?」「ムラマサじゃなくて?」

「妖刀はマサムネですよぉ。あらゆる防御を切り裂き愉悦に墜とす『至弄妖刀マサムネ』、偽善巨悪を敢然と切り裂き滅却する『絶対聖剣ムラマサ』ですねえ」

「マサムネはともかく、ムラマサはなんで魔王が持てるんだよ!?」

「ルザルバは偽善者ではなく、巨悪でもない小悪党って事か?」

「そう言われてますねえ。兎に角やることなすこと、小物っぽかったとか」

「そりゃ負けるわ」「部下も裏切るな」

 魔王軍は幹部が離反し分裂、残った魔将軍も決戦時に裏切り勇者に協力して。

 死んだふりして逃げたところを自分で仕掛けた罠に掛かり、出口前で帰還中の勇者とばったり出会い斃されたという。

「自棄になったルザルバは後継を定めず、所持していた千本の魔剣も、迷宮の各所に隠したんです」

「最後の最後まで往生際が悪い。さすが聖剣が認めた小物ぷりだぜ」

「いっそ清々しいなあ」

「ムラマサを探して一人で迷宮に入ったんですけど、怪我をして魔力も尽きて行き倒れで居た所を助けて貰ったんです」

「こいつのパーティに?」

 一瞬だけあの盗賊の姿に変装すると、ナリアは大きく頷いた。

「はい、その人と仲間の皆さんです。今はどうして居られますか?」

「「殺した」」

「ふぇっ!?」

「こいつらは麻薬売人の一味だった。お前を麻薬中毒にしたのもこいつらだ」

「恩人だと思ってたんだろ? でも麻薬漬けにされて金を巻き上げられてんじゃないか? 他にも何か……されたかも」

 驚き、戸惑う彼女の表情がやがて苦悩に歪むのを、《オレたち》は見ていられず顔を背けた。

「忘れろ。麻薬で正気を奪われたんだ」

「《オレたち》は麻薬の出所を潰す。お前は安心して寮に帰れ」

「……イヤです。帰りません。私も行きます」

「復讐する積もりか?」

「違います! 見届けたいんです。こんな邪悪な薬がなくなるのを! 二度と私のような犠牲者が出ないように!」

 《オレたち》を見つめ返す瞳に強い決意の輝きを宿すナリアは、とても美しかった。

 深い沼底で汚濁に塗れても、遥か水面を目指し花を咲かせる蓮花のように。

「足手まといだ」「危険だぞ」

「忍者は悪なんだ」「正義じゃない」

 思い留まらせようとする《オレたち》に、ナリアはふふと慰めるように笑う。

「私は元々反逆者で、今はくノ一なんですよオカシラ様。だから巻き込まない、なんて気遣いは無用です」

「参ったな」「言い返せないなー」

「実験の借りもある」「連れて行くか」

「借りなんて……でも、ええ、そうですね。借りを返して下さい。オカシラ様」

 《オレたち》はナリアの肩に手を置き、纏うマントに念を込める。

「その格好じゃ」「恥ずかしいだろ?」

「くノ一らしい」「服をあげるよ」

「とっておきの」「似合うヤツ」

 一度は離れた肉体だが、まだ《オレたち》の一部として機能させられた。

 ツムギが『繭糸繰り』を用いて変型させ、強靭な特殊繊維を新たに紡ぎ、織り直していく。

「はひゃっ! こ、これ、くすぐったい……あっ、ちょっと、そんなトコまでぇ? ふひゅっ、あっあっ、あああっ」

 アラミド繊維を参考にそれを越える対弾防刃、難燃性を持ったボディスーツと網タイツ、彼女のG級マシュマロおっぱいを支え、ヒップラインを強調するバニーガール姿に!

「んんんっ! き、キツい……っ! んぁっ、ああっ! あっあぁ~っ!」

「あれあれ~?」「おっかしいなー?」

「ヘンな声上げてるぞ」「どうしてかな?」

 糸を繰る《オレたち》の触覚に、ナリアの全身の立体構造が精緻に感じられて、とてもエロい気分になった。

 重苦しい会話のストレスもあったし、悪戯心も湧いて、際どく刺激し始める。

「だってだって! 糸がこしゅこしゅって、ふぇあっ! んんっ! んふ~~っ!!」

「動くなって」「仕立て中だぞ」

「ワガマママシュマロボディに」「ぴったりオーダーメイド」

「「念入りに仕上げなくちゃ!!」」

「んひゅっ!? ふぁあっ!? あっあ~~~っ! くっ、くいこんじゃうううううんんっっ!!」

 くノ一になりたてのウサ耳娘はピンピンに身を仰け反らせ、甘い声で啼き叫ぶ。

「ふぁああああっ! だめ、だめ、だめぇっ! ああああ~~~~~~っっ!!」

 全身をガクガクと震わせた少女は、がっくりと床に崩れ落ちるのだった。

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