ニンカツその一「迷宮でウサギちゃんをお仕置き!」
「よくもまあ、こんな悪辣な手を考えたもんだ、悪徳司教め」
「冒険者の死体から身ぐるみ剥いで」
「迷宮内で蘇生して、奴隷にするなんてひどすぎます!」
「だが奴隷売買の帳簿は屋敷から頂いた。立派な証拠だ」
「正式な契約無しの誘拐現場も、録画水晶に撮影したぜ。さぁて生臭坊主、この後どうする?」
黒地に紅と白の忍装束、覆面で顔も隠す『一人』の忍者と、ウサ耳バニースーツ姿のくノ一を前に。
迷宮で冒険者狩りに勤しんでいた悪徳司教は、裸に剥いた冒険者達を縛る鎖を握りしめ、目を見開いて驚愕に打ち震えた。
「バカな、ニンジャは……くノ一は死に絶えたはず! こ、この痴れ者がぁっ! 構わん、討ち取れぇっ!」
グォオッと応えて吠えたのは、蘇生に失敗した冒険者達の動く死体の一群だ。
(なあ紬、ここって中世ヨーロッパ風の異世界なのに、こいつは時代劇っぽいな)
(そうだな灯夜。テレビでよく聞いた台詞だ)
「オカシラ様ぁ。見ててください! 伝授して貰った忍法と魔法で! 怪物なんか一撃です!」
罪なき死者に怯むも、気丈に声を上げる我が弟子。
「いいぞ」「やれ、ナリア!」
授かったスキルをいざ振るわんと、ウサ耳娘は自信満々に胸を張り、デカい胸おっぱいがぷるんと弾む。
構えた忍刀の柄頭に嵌められた魔石が、深緑に輝き魔力を充填。
「唸れ疾風! 逆巻く大気よ! 我が手に見えざる刃を宿せ! 音速投刃っ!」
くるくる振り回して術式回路を眼前に立体描画、精緻な魔方陣を描き出し、呪文詠唱も終えた彼女は、更に忍法の早九字を魔法陣に書き付ける。
「敵は魔族」「抵抗するぞ」
「雑魚は八体」「ボスは一体」
「重武装の」「死体どもだ!」
弟子の横で泰然と腕を組み、突撃して来る敵を眺める精悍な忍者が《オレたち》。
「遅いぜ」「やっちまえ!」
「兎人忍法! 斬首奪命の巨斧乱舞っ! ソニックトマホォォォクッ! ブーメランッ!!」
『三倍化』『斬首』の忍法が真空刃の魔法に付与され、三振りの透明な投げ斧が弧を描いて飛ぶ!
命じられたまま殺到する死体は悉く、鈍い音と共に首を跳ね飛ばされ、硬い床に叩きつけられた。
「げぎゃっ!!」
司教も例外ではない。醜悪な悲鳴を上げた頭部がでっぷり太った胴体から千切れ、縛鎖も切り飛ばす。
鮮血を吹き散らして転がる首が、唖然としたまま息絶えた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、やったぁ……」
だがしかし《オレたち》は、気力を使い果たして膝をついた弟子の胸を、後ろから鷲掴み。
「ああんっ、オカシラ様ぁっ! なんでお仕置きなんてぇ!!」
「斬首が余計」「見ろよアレ」
「首無し騎士が」「無傷だぞ」
生臭坊主の切り札、大柄なボスの死霊騎士が、大剣を横薙ぎに切りつけてきた。
さっとバックステップでかわしつつ、けしからんピンク髪のおっぱいを、あざとい黒のバニースーツ越しに、これでもかとお仕置きする。
「あんあんっあ~~~っ!?」
「やっぱバニーガールは巨乳だよな!」「デカすぎて腕が二本じゃ足りないか」
「追加しようぜ」「二本でいいか?」
《オレたち》の黒地に紅と白が混ざり合う忍装束の肩口から、にょきっと生える二本の逞しい腕。
「ああああっ! お仕置きが増えるの、だめぇえええ~っ!」
風魔法では学年一位、学業優秀な優等生の喘ぎ声は、迷宮に心地良く響く。
だから《オレたち》は覆面の下から舌を伸ばして、彼女の垂れた長い耳を舐めた。
「あっひっ、くぅううんっ! オカシラ様ぁっ! 敵、敵があ、死霊騎士がぁっ!」
騎士の剛力、ぶぅんっと轟音を立て、今度は縦に唐竹割りの一撃!
「大丈夫さ」「問題ないぜ」
「《オレたち》は」「遙かに強い!」
ばん、と剣の腹を左右から挟み込んだ両の手のひら、真剣白刃取り。
合計六本の腕で余裕の表情、身の丈も二回りほどパンプアップさせた筋骨隆々の姿。
ゴァアア……と首無し騎士が呻いたのは、死んでなお呼び覚まされた恐怖のせいか。
「餓腕猛牙」「頂くぜ!」
大剣を捉えた両腕が、牙を生やした顎に変形し、死霊騎士に左右から食らいつく。
重厚な鎧を食い破られ、胴を無惨に引きちぎられた死霊は再び絶命し、虚空に霧散した。
「成仏したかな?」「分かんねえな」
「ま、お仕置きの邪魔はできないはず」
「ならいいや。続きをしようぜ」
「ダメです、ダメですっ! こんな所じゃだめえっ!」
まあ言いたいことは分かる。
だが《オレたち》は意地悪く、すっとぼけて見せた。
「他にも冒険者が」「いるかもな?」
「顔見知りも」「いたりして?」
腕が六本あると、弟子にお仕置きするのも楽でいい。
いろんな急所を攻めてやると。
「んきゅううううう~~~~っっ!!」
びくんっびくんっと、体を震わせるナリア。
ピンク色の髪の毛はツインテール、ウサ耳はロップイヤーの兎獣人で。
華奢な躯に反した大質量おっぱいと、むっちむちのふくよかなお尻、丸いしっぽもチャーミングだ。
学業優秀、冒険者の素質も抜群の魔法使いなのに、なんでこんなにエロいんだ?
「捕まってた人たちっ! いるじゃないですかぁっ! お仕置きされてっ! ああ~っ! ま、またぁっ、あるけなくなっちゃうう~~~っ!」
勿論、忘れてない。皆、一様に若い、ナリアと同じ少年少女だ。
彼らは耳まで真っ赤になって、《オレたち》の腕の中で喘ぎ、藻掻くナリアから目を背けてる。
「見せてやろうぜ」「興奮しない?」
「ミスったらお仕置き」「約束だし」
「はぅあぅはぅ……そうですけどぉ……こんなの恥ずかしいですぅっ!」
「学園に秘密で」「秘宝を見つけたい」
「《オレたち》の」「力を借りて」
「忍者は遺失職」「伝説のレア職業だ」
むぎゅっと抱きしめ、ふさふさの桃色髪に顔を埋めると、甘い体臭の女の子。
ぴょこぴょこ跳ねる垂れ耳の感触も心地よく、モフり欲が上回りそう。
「襲われてたのを助けて」「くノ一に」
「でも奥に行くには」「レベル不足」
「だから修行さ」「お仕置きも経験☆」
「はぎゅううう~~~んんんっっ!!」
コリコリ、カリカリ、尖った場所を引っ掻いてやると、痛さ痒さにびくんびくんと仰け反るナリア。
「しっぽ、ふさふさで」「気持ちいい」
煤しい顔をしてるけど、実は《オレたち》も興奮でいっぱいいっぱい。
爆乳ウサ耳優等生がバニーガール姿で、腕の中で悶えてるからだ。
しかも奴隷の子たちが見てる前で!
「だからってっ、お仕置きはあはぁんんんんっっ!!!」
「報酬とお仕置き」「同時で効率的だ」
「何してもいいってのが」「弟子入りの条件だよな」
「はっ、はっ、はひゅっっ!? きゅうううう~~~~~んんんっっっ!!!」
辛抱堪らず、ぎゅっとつねるとナリアは大きく啼いて、ぐったりと脱力した。
腰が砕けて脚に力が入らず、がくがくと太股を震わせてるのがイイネ!
《オレたち》は奴隷少女たちに腕を伸ばし、手足の拘束を解いてやった。
「地上に帰って」「自由にする」
「だからさ」「待ってろよ?」
返事の代わりは、生唾を飲み込む音と、熱っぽい吐息。
互いに身を寄せ合って、興奮してる少年少女には悪いが、もう少し待って貰おう。「ああ、イヤ、こんなのぉ……頭がふっとうしちゃうう……っ!」
「よしよし」「可愛いなー」
「たっぷり」「お仕置きするぞ!」
舌なめずりしながら、忍装束の前を開く《オレたち》。
もっともこれは擬態で、服に見えるのは全部、流動変形する《オレたち》の皮膚と筋肉だ。
「ひぃ……っ!? やぁあ……私、オカシラ様にめちゃくちゃにされちゃううう」
《オレたち》が手を離し、ぺたんと床にへたり込んだナリア。
品行方正で人柄もいい優等生が、なぜか嬉しそうに蕩ける。
「目の色が変わった」「イイ顔してる」
「どうすればいいか」「分かるよな?」
「はぁい、いただきまぁす……はぁむっ!」
ここ学園迷宮「ルザルバ」の地下一階、玄室の片隅で《オレたち》はナリアに今夜もお仕置きする。
(実は《オレたち》が同級生だって知ったら、どんな顔するだろうな?)
(ああ、正体を明かす日が楽しみだぜ)
正体不明、なぜか二人分喋るニンジャ『オカシラ様』の、素晴らしい日常。
少年忍者『灯夜』と座敷童の『紬』が合体して、忍者の技と妖怪の妖力を震う『オカシラ様』。
異世界エイブリアに転生した《オレたち》の、新たな忍活なんだ!