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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

たとえクズでもさぁ。

作者: ジジイになりつつあるもの

何かしらの能力なしで追放されるってあんまないなと思って書いてみた。

本当に無能だったのはあったけどね。

あと、やっぱりざまぁはないです。


勇者パーティというのは、冒険者パーティでも花形だ。


どういう立場かは置いておくが、とにかく花形だ。


冒険者ギルドが盛ったり、お国が抱えたり、商人が喧伝したり、吟遊詩人が噂を振りまいたりとした結果ではあるのだが、能力があるからこそこういう扱いをされるのが彼等だ。


光の勇者、セレクト

光属性の魔法を使い、華麗な剣術で敵を屠る。

その性格も清く正しく平等に皆を扱うという善人っぷりだ。


少し欠点として、騙されやすいという事はあるかもしれないが、そういう欠点も愛嬌として皆に認められている。


皆とは誰だ?

それは国民みんなのことをいう。


沈黙の魔術師 カーソル

常に沈着冷静で、それゆえに非情な選択もとれる魔術師だ。

勇者が優柔不断に陥ったときに、彼の冷静な行動が生きる時。

パーティの軍師といったところだろう。


癒しの聖女 ケース

正義の神に仕える、敬虔なる神官。

少し融通の利かないところはあるものの、神の奇跡を行使するのに右に出る者はいないという。

命を懸ければ神さえも呼び出せると言われているが、本当のところは誰にもわからない。

ただ、彼女がいれば勇者パーティが怪我をする事はないだろう。


槍の戦士 イフ

質実剛健な戦士で、世慣れてもいて少し天然の入っているパーティの良識枠。

戦士としての技量だけでなく、交渉事や貴族との折衝、スラムでの対応と幅広く柔軟な対応ができる、中では少し老けているが、彼なくして勇者パーティは成り立たないといえる。


この4人が有名だ。


他にも仲間になったり抜けたりすることもあるが、この4人だけは当初から変わらないという。


そして最近、一人そこそこ長いこと一緒にいることが多い仲間がいた。


彼は特別な力はないし、武勇もなにもない。


言ってみれば雑用だ。


買い出しとか清掃とかそういう事を任されている。


そしてまぁ、今パーティを離れてくれと説得されているところだったりする。


「いや、確かに君が購入することで通常よりもはるかに安く日常品が購入できていることは確かだよ。

 けどさ、僕たちは高収入なんだから還元していかないといけないじゃないか?

 細かい勘定ぶんの金額なんて、支持されていれば数日で意味がなくなるんだから。」


これは、勇者セレクトの言葉だ。

平等を説くという通り、流通に関して言えば間違っていないのだが、何か俗っぽいような気がしないでもない。


「ワシは、魔道具を値切っているところを魔術師ギルドで見たぞ。

 魔道具の類は、一点一点魔術師と道具師が丁寧に作成したものだ。

 そいつらに報いるためにも値切るような輩は門前払いだというのに、ワシらの仲間だと言ってしつこく食い下がっておったな。

 仕方なく貸与という形になったそうだが、その貸与した魔道具は何処だ?

 手に取るところをみたのに、使っているところを見たことがないぞ!」


魔術師のカーソルは、正しい労働には正しい対価という意見のようだ。

商人が売っているのなら、値切るのは正しいが、魔術師ギルドにルールがあるのならそれを曲げるのは道義心を欠いていると言わざる得ない。


「てめぇは、魔術師ギルドでもそんなことしていなのか?

 こいつは、商人ギルドでも同じことをしていたぜ。

 まぁ、値切るどころか、使ってやるから逆に金寄越せって言っていたがな。」


普通に世慣れているイフは、この雑用の言い草に憤りを感じていた。


しかし、その場で話をしても誤魔化されると判断したらしく、後からどうなったか話を聞きだしたらしい。


結果として、食料の全面援助の約束をとりつけられてしまっていた。


これが、商人ギルド側からの申し出なら問題なかっただろうが、雑用でしかない一人がそんなことを勝手に決めれば揉めるのは当然だろう。


「あなたは、人の心、正義の心がないのですか?

 勇者パーティに相応しくありません。

 今なら、神殿での無償労働3年程度で許してあげますよ。」


聖女ケースは正義を信仰する神官でもある。


当然ながらこのような小悪党な悪事を知ってしまえば見逃すことなどありえない。


そういえば名前を紹介し忘れていた。


雑用の名前はニアリーという。


「ちょっと待ってください。

 僕の言い分は聞いてくれないんですか?

 皆さんの為になるとおもって一生懸命交渉しただけですよ。

 交渉の結果勝ったからって、断罪するってなんでですか!!」


確かに交渉するのなら、持てる武器を使って勝つのも一つの手段といえる。


勇者パーティという威光を持っているのだから、最大限に使うのも手と言えるだろう。


ただ、それはパーティの方針に最低限あっていないといけない。


もし、これがただのSランクパーティなら彼の行動は褒め称えられたかもしれない。


しかしこのパーティは勇者パーティで、彼等はみな善良な人間の意識が強いようだ。


「けどよ、それじゃ金は使ってないはずだよな?

 それらは何処にいったんだ?

 少しは帰ってきたが、満額戻ってくるもんじゃないのか?」


正論をいうイフに、特に狼狽えることもなく。


「え、交渉したの僕ですよね?

 それなら、交渉した分の報酬は貰えるべきだとおもうんですが。

 正直に言おうかと思ったんですが、今回みたいに曲解されたらとおもうと怖くて……。」


「……いや、彼に任せっきりにしていた僕等も悪いといえる。

 しかしだ、勇者パーティがこのような事をしているのはとても外聞が悪い。

 たとえ罰したとしても、下手をするとそこから怖れられる可能性だってある……」


勇者セレクトは一概にニアリーを悪だと断罪せずに、自分達にも非があることを認めるような事を話しをはじめ、さらに話をつづけて、最終的な判断を言い渡す。


「……だから、それらのお金は手切れ金として持って行っていいから、金輪際かかわらないでくれないかな?

 お互い悪い話じゃないと思うんだ。

 このままだと、君は神殿で無償労働になるよ。」


「え、決定ではないのですか?

 すでに奇跡の準備をしていたのですが?」


ケースの行動を見てニアリーは慌てて逃げていき、途中で立ち止まり。


「分かりました、僕みたいなのは勇者パーティに相応しくないってことですね。

 今日限りで抜けます、ありがとうございました。」



「あーあ、いい稼ぎになったからいいか。

 それよりも、ちょっとあちこちいかないとな!」


それだけ呟くと、ニアリーはただの雑用とは思えない速度である店に入る。

そこは質屋だ。


「えーっと、おっちゃん例の者持ってきたよ。

 足元見てたら、おっこっちゃうよ。」


例の者もなにも、ニアリーがここにくるのは初めてだ。

しかし、あることを知っている。


まず、店番が女性なのに男性店員として話をしている。

売る側がいきなり足元をみるということを言わない。

そして、さらに下を意味する言葉を合わせて、裏ギルドへの符牒となる。


そういう事は、そういう事に長けている人しか知らないものだが、彼はいったい何者だろうか?


「ふん、待ってな。

 呼んできてやるよ。」


暫くすると、いかにも胡散臭い男が出てくる。


訳アリの質を入れる時に彼らは出てくる。


通常は、訳アリの品を売りに来て、散々不安にさせて買いたたくものだが、最初から知っていると比較的普通に交渉となる。


「やぁ、この間の魔道具は役にたったよ。

 今度は何を売ってくれるのかな?」


どうやら、魔術師ギルドから貸与された魔道具はここで売り払ってしまったらしい。

魔術師カーソルが見ていないのも当たり前の事だった。


「いやー、とうとう首になったからさ。

 今まで集めていた彼らの私物を売りにきた。

 掃除とか任されていたからさ、結構あるよ。」


アイドルの着ていた服とかが現代でも売られたりプレゼントされたりすることを考えれば、証明さえできれば彼らの私物は市民からすればゴミすら宝になるだろう。


「どれどれ、なるほど。

 全部名前が書いてあるやつばかりだな。

 折れたブラシとか、途中までつかった鉛筆とか。

 筆跡で合わせれば証拠として十分だし、セットにすればそれっぽくなるな。

 お手柄だぜ、ニアリー!」


「だろー。

 そんじゃ、ちょっとあちこち用事があるから、金用意しておいて。」


そういって、商人ギルドに向かって走っていく。


そして、今回は食料提供の話を引っ込める代わりに馬車を手配してもらうことになり、質屋でそれなりの金銭を受け取って別の街へと去っていった。


彼は勇者パーティに長くいた、そして抜けたことはまだ知られていない。


次の街で、ばれる前に一稼ぎするつもりなのだろうことは、皆の想像通りだといっておこう。


彼は悪人ではない。


ただ、少し悪知恵が働くだけの一般人なのだ。


彼等の世界の治安から考えると、どちらかといえばまだ善人よりな方なのだ。



その後の勇者パーティは、少しギクシャクしていた。


「彼らは悪です、滅ぼさねばなりません。」


「いや法の裁きにかけるべきだろ。

 同じ人間なんだからさ?」


「そんなことをしても何にもなりませんぞ。

 万が一釈放されることがあれば、彼等によって不幸される人間はどれだけになるか。」


「まぁまてよ事情があるかもしれんし、こいつら弱っちいし。

 初犯かもしれんから、話だけでもきいてみねーか?」


ケース→セレクト→カーソル→イフの順で話をしている。


彼等はとても我が強い。


そして、自らの正義感が恐ろしく強い。


あまり譲るということをしないのだ。


平等を尊ぶ勇者。


大を取る魔術師。


正義を振りかざす聖女。


世間の話を持ち出す戦士。


こういう時に、悪者とは言わないでもターゲットになる相手が仲間にいると結構話がまとまるものだ。


今回、彼等はそういう役目を知らずに負っていた雑用(ニアリー)を追い出したのだ。


言い合いは長く続くし、終わってもしこりが残る。


戦闘能力は高いし、戦士が交渉事もうまくやるのでちゃんとパーティとしての役割を果たしているようにみえるのだが、これからどうなるのか不安要素が出てきてしまった。


別に誰が悪いわけでもないし、誰が失敗したでもない。


敢えて言うなら、一般人(ニアリー)がうまくやってうまく逃げた、そういう話でした。


脳内補完すればざまぁできるかと、ちょっとおもった。

後、雑品でも有名人が使えばお宝ってどの時代でもあるよね。

今書けば落書きだけど、1000年前の落書きなら文化財とかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公も追い出されるだけのことはしてる(世界観的には悪人というほどでないにしても)ので、ざまぁするのもどうかと思うからこれで良いかと。 小悪党とまではいかずとも、小小悪党くらいで善人の方まで…
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