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魚
目に触れると濡れる
手に触れる
水温を感じる
いま水温を感じる
一カラットの涙が零れ
水流になる
わたしはいま水温を感じながら
その水流に溺れる
めいめいの魚の
横腹 銀に濡れている
掬いあげた魚の光沢
それは鱗であるが
それは鱗ではない
目に触れると濡れる
手に触れると冷徹を感じる
凍らない 流れもしない
感情のさめざめたる鱗
いま
水温を感じる
地下深くでうねる熱の無意味さを
表すような
水温
わたしは鱗に触れて
その冷たさを知る
わたしは鱗に触れる
それが鱗ではなくとも
わたしは触れる
水流に呑まれるような
わたしという儚さである
川の水を両手で掬いあげるとき
わたしの両手は水流に呑まれ
皮膚は水に溶け込む
わたしは魚である
しかし魚ではない
わたしは触れる
水流の温度を知る