始まりの一文 私は君たち2人を忘れない
『異世界召喚を邪魔されてついた場所は魔国地下!?~ヴァンパイアになっても無自覚なのは変わりません~』
という自身の稚作を書くきっかけとなったちょっとした文章『始まりの一文』を、小説を書き始めてから1年と少しでどれぐらい書けるになったかの比較のために書き換えてみました。
もし、時間がある方は『始まりの一文』の方も読んでいただけると幸いです。
作品の下の方にリンクを張っておきます。
むしろそうしてくれる人が1人でもいたらなと投稿させて頂いています。では、どうぞ。
「ん?おはようリズ」
「あ、おはようございます!鬼門様!」
布団から起き上がった男、鬼門は目の前に座る小さな女の子、リズの頭を撫でる。
彼女の頭の上ではこれまた小さな可愛らしい耳が揺れている。
「今日も迷宮に潜るのか?」
鬼門がリズに問いかけた。
「はい、一緒に頑張りましょうね。魔物を殺してレベルアップ!巨大な魔石で一攫千金!」
彼女は明るく答えた。
「痛いのは嫌だなぁ」
それに対して鬼門は顔をしかめる。
「ほら、文句を言わないでとっとと迷宮に潜りますよ。魔物を倒して魔石をゲットです」
彼らが住む迷宮都市アワリティアでは魔石採取が主な産業となっている。
迷宮に潜り、魔物を倒し、魔石を得る。
迷宮で得られる魔石は、様々な魔道具製品のエネルギー元にもなるのでいつでも需要がある。別の世界線の石炭や石油のようなもの、ただし地中を掘れば出てくるのではなく、魔物を殺してその体の中から抉り取る以外に手に入れる方法はない。
「特に鬼門様のような≪ヒーラ≫は協会の人間以外では数がほとんどいないのですから文句を言わず、足を動かしてください。今日は5階層でもう少し単価の良い魔物を倒すんですからね」
「はあ、仕方ないか。俺達にはこんな仕事しか出来ないしな」
「身元の分からない逃亡奴隷なんて、そんなものですよ」
2人は顔を少しだけ暗くしながらも、お互いに顔を見合わせてフッと笑った。
「ほら着きましたよ。今日も頑張りましょう。そして、宿に帰ったら鬼門様に頭を撫でてもらうのです。それだけで疲れが飛んでいきますからね」
「はいはい、それじゃあ行きましょうか家の可愛い稼ぎ頭さん」
「か、可愛いは余計です!」
鬼門は再びリズの頭に手を置き、ポンポンと叩く。
2人は生きていく、楽しく笑って幸せに。1人は遠い故郷に思いを馳せながら、もう1人はどこからか現れたヒーローを思いながら。ここで幸せに生きていく。