修学旅行の日常その2
一面の雪景色と山間というのはスキーをするには完璧な条件だろう、後は整備して管理さえ行えばゲレンデとして初心者から上級者までが楽しめるスポットと化す、色とりどりのスノーウェアに色とりどりのスノボとスキー板、地元民も居れば観光客も居るだろう、行楽目的も居ればナンパ目的も居るだろう、競技の練習なんて者も混じっているかもしれない、何にしてもそれなりに人が集まっていてそれなりに混んでもいる。
教師陣からの注意事項を聞き終えてロープウェイに並ぶ列に生徒達が加わるとごった返すとしか言いようが無いくらいに長蛇となる、一応は初心者中級者上級者と割れてはいるがそれでも約130名の生徒が居るのだ長くもなる。
「いや、別に普通に運ぶけど、なんで誰も頼みに来ないんだろうか」
ようやくダウナーモードから復帰したらしい が一人ごちる、ロープウェイなんかより早く快適に目的地まで飛べるというのにクラスメイトはもちろんとして同学年の誰もが遠巻きにしている、例外的に菜慈美とリリー、板田の三人が近くには居るがリリーはやや特例として残り二人はほぼデフォルト装備に近い、特に菜慈美に関しては呪われた装備で外そうにも外せない類いのソレというくらいに共に居るのが当たり前になっている。
「単純に思い至らなかったとかじゃないのか? 日常的すぎて目に止まらないみたいな」
「うーん、誰か呼びますか? 私はヘーキですけどこの寒空の中待つのって辛そーです」
「お誂え向けに不幸の権化が居るわね、アレを呼びましょう」
「あれ? おかしいな、今なんかフルネーム呼んだのに含みが有った気がするんだが俺だけか」
「いや、間違いなく含みは有ったと思うぞ」
「リョーこっち来るです、他の皆もこっち来るです、オーガが運んでくれるそーですよー」
一部があぁそう言えばという風な感じで近付いて来るが、残りは君子危うきに近寄らずで空を飛ぶという目立つ行為を嫌った者達だ、もしかしたら単純に を嫌っているだけかもしれないが好悪で動く事は有れど敵対していない者まで排除したりするほど狭量な男でもない、単に嫌われたからと攻撃していてはこのご時世だ世界の半数を相手にしないといけないだろう、ただし敵対したならばその限りではないが余程の事でも起こさないと郎党纏めてなんて事にはならない。
フワリと数十人を軽々浮かせて運び、コース毎に希望者を下ろしていく、上級者コースまで突入できる自信が有ったのは僅か十人と多いのか少ないのか謎だが地域的に見るならば多い方なのかもしれない、これが地元の高校とかなら少ないくらいだろうし雪国県ならまた同じだろう。
まぁ雪国にもスキーやスノボを嫌う者や苦手とする者も居るだろうし犬だって炬燵で丸くなる事が有るようにステレオタイプなんてのを期待しても絶対に添えるという例は稀有だ。
「空を飛ぶってのは初めてだったが、あんな事ってよく起こるのか?」
「カラスが顔面に飛んできたのはこの十数年飛び続けて初めて見たな、流石と言うかなんと言うか、お前マジで異能持ってねぇの?」
「いや、と言うか持っててもこんなの使わないだろう、死神に愛されてるだのなんだの好きに言われているが俺としては不本意だ」
「竹田君、ソレに関してはもはや諦めた方が良いと思う、なんだ塞翁が馬を信奉してこれから先の長い人生で良い事が起こると願えばいいと思う」
「Unhappyなんて笑い飛ばせば良いとMamaは言ってます、嫌な事に凹むと良い事頭の上通っても気付きませんね」
「下ばかり向いてたら虹に気付かないか、ありきたりだが今聞くと含蓄の有る良い言葉だ」
「いや、俺の場合上向いてたら鳥に糞落とされたり転んだりしそうなんだが」
「やべぇ、直視できねーくらいソレが想像できちまう、他の誰が否定しても俺が異能認定してやりたくなる、でないと救いが無さすぎる」
「あー、他の皆もう滑ってますけど良ーのですか? こんなところでクヨクヨは私NoThank Youですね」
スノボでトリックを決める会長に同じくトリックをきめる 、スキーでキレイな滑走を魅せるリリー、プロと言うにはやや足りないだろうがセミプロレベルで通用する腕前で何度も時間一杯まで滑り倒す、受験前に好きなだけ滑れという教えを心行くまで堪能する。