生徒会の日常その6
「九州土産だおやっとさぁ」
気の抜けた軽薄さでノックすらなく生徒会室の扉を開ける、遠慮もクソもないがこの部屋の主の仲だ、普段はノックはするし勝手に開けるのはほとんど無い、たまになら軽くお叱りを受けるだけで済む。
「おや? なんだって?」
「おやっとさぁ、お疲れ様って意味だそうだ、んでこれが土産のお菓子詰め合わせと即席ラーメン、書記ちゃんと次期会長の分も有るから渡しといてくれ」
「九州か、行った事無いな、どうだった」
「良かったよ、海も綺麗だったし飯も美味かった、まぁ運転は大変だったがオートキャンプは去年もやったしな」
「キャンピングカーだったか、やはりブルジョワは違うな」
「チート持ちだからな、誉められる類いかは知らん、天才が天才として振る舞ってるだけだが手間もなくウン百万動く、それが色んな所から舞い込むとな」
「宇宙開発と核開発だったか、お前なら普通にやるより単価は安いからな、引く手あまただろうさ」
「放射線の遮断と荷物の上げ下げくらいしかやってないがまぁコスト考えると俺の方が安い、その安いの範囲がウン千万とか億からウン百に下がるからな、高いのか安いのか解らなくなる」
「基本的に税金だし安いだろ、その分を公共料金の値下げに回して欲しいとは思うが」
「それはお前さんが総理にでもなってから考えろ、マジになれたら友達料金で今より格安にしてやるよ」
「悪いがそんな面倒は御免だ、それに俺には夢がある」
「そりゃ初耳だな」
「誰にも言ってないからな、不言実行は怖いし明かそうか?」
「なら音を遮断しておくか、男同士の秘密って奴だ、うちの後輩にでも聞かれた日にはまた興奮して描き出しそうだ」
「ハッハ、それは困るな、この間だが俺と君との本が出回ってて回収した」
「ソイツは初耳だな、アイツ吊るすか、流石に感化できん」
「お手柔らかにしておいてやれ、だがまぁ手加減も要らん、内容は見せんが見たら加減しようとも思わんだろうがな」
「そんなに酷かったのか?」
「あぁ、何時だったかあの不幸の権化と後輩のソレを目にしたがソレより酷いと感じたよ、当事者だからかも知れないが」
「竹田なぁ、アイツマジで異能者じゃないならなんなんだろうか? 死神と貧乏神にでも好かれてるとしか思えない」
「さぁな、前に効いてみたが本人は否定していた、と言うか区分として不幸という異能が在るのか、それを本人が感知できるのか、感知できるとして制御できるのか、疑問は絶えないだろう」
「普通は感知ってか備わった瞬間に何ができるのかおおよその知識が流れ込む感覚、なんだろうか、ゲームとかでレベル上がって魔法覚えて秒で十全に使えてるだろ? あの感覚が近い、その上である程度制御できるし訓練で伸び代が有ったりする、単純に炎使う能力でも輪を作れるかどうかはサイズは兎も角としてソイツの練習次第だからな」
「とすると仮に彼が異能持ちなら感知も制御もできない特異点という事か、絶望的に最悪な異能と組合わさっているが今も生きているんだから強力ではないのだろうな」
「高校受験、彼の場合は推薦かもだが果たしてるんだから不幸が底抜けって訳でも無いだろう、あれだけ転んだりしてるのに骨折るどころか捻挫すらしたと聞いた覚えがないし、俺はよく神なんぞクソッタレと公言して憚らないが彼こそがこの台詞が似合うとたまに思うよ」
「と言うか似合い過ぎるな、神を呪うような性格はしていないが、お前はなんと言うか軽々しすぎる、あえてそうしているのだろうが」
「さてさて、どうだろうな、んで、脱線が酷いがそろそろ夢とやらを聞こうか、安心しろ突拍子もないなら笑ってやるから」
「お前のその軽さが頼もしいと思えるのは少し癪に触るがまぁ良い、可笑しいと思ったなら存分に笑ってくれ」