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異能部  作者: KAINE
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職場の日常その2

 扉に『中に入り、座ってお待ちください』の張り紙が有る、一応ノックして中に入れば幾つかの机と椅子にパソコンという何処にでも有りそうなオフィススペースが奥に、手前は休憩スペースだろうか、丸テーブルが幾つかに椅子、コーヒーメーカー等が置かれている、そして壁際に置かれたパイプ椅子に幾人かが座っていてその真後ろに張られた数字と矢印を見るに順番待ち中らしい。

 とりあえず目礼で同僚になるかもしれない先達に挨拶して椅子に腰掛けるが見える範囲に職種のヒントは皆無だ、解るのは此方のオフィススペースは少なくとも複数の部屋からなり扉で別けられている事、オープン前の文字通り机やパソコンは真新しくコピー機や電話、棚の類いも使われた形跡が無い事、床も綺麗という事くらいか。


 数分待つと扉の一つから若い男が一礼して出てきて扉を閉める、どうやら彼処が面接会場らしい、少なくともトイレや更衣室ではないだろう、ただ残念ながら位置的に部屋の中も中に居る人物も見えないが聞く訳にもいかない、帰る前に次の人に入室するように告げてから立ち去り、一人また一人と部屋に吸い込まれては消えていき、また新たな誰かが現れる、老若男女、見るからに年齢制限オーバーしてるだろうという老人も居るが正気だろうか、仮に物凄い経歴の持ち主でも印象は最悪だろう、もしかしたら極端な老け顔で40歳という事も考えられるがそれにしてはヨボヨボという言葉がピッタリと当てはまる老け具合だ。


 ようやく、やってきた自分の番にやや緊張しつつ手早く身仕度を整える、と言っても来る前に済ましているから服のシワとか軽く伸ばす程度だが、扉をノックすると

 「どうぞ」

と答が返ってくる、かなり若い男の声だが学生社長か或いは手伝いに来ている誰かか。

 「失礼します」

 扉を開けて中に入る、なんというか解りやすい社長室という部屋だ、外のオフィスデスクやチェアとはランクが明らかに違う机とパソコン、何故か椅子はゲーミングチェアだがそういう事も有るだろう、窓際には金庫、応接室も兼ねているのだろうか、ソファーとテーブルに絵画。

ソファーに腰掛けた若い、と言うか学生にしか見えない浅黒い肌の少年が対面を掌で指しつつ

 「どうぞ掛けて下さい」

と促してくる、ブリーフケースの留め金を外しつつ「失礼します」と断って腰掛ける、沈み込むような柔らかさと革の感触からしてそれなりに高そうなソファーは応接室としては良さそうだが面接のためとなると恐縮してしまいそうになる。


 「履歴書をお願いします」

 ブリーフケースからクリアファイルを取り出し、中の履歴書を差し出す。


 「えー、鈴木武さん22歳、南房大卒バイト歴は高校時代にラーメン屋で1年、それにコンビニで半年、大学時代に土木屋に倉庫のピックアップ、引っ越し屋等々、一番続いたのがラーメン屋ね、で資格は簿記とパソコン系が二つに車」

 「希望は正社員雇用、事務経験は無いんですね?」

 「えぇ、今まで機会に恵まれず」

 「うーん、見ての通りまだ新進気鋭でな、戦力は即応がありがたい、資格持ちだからその辺りはプラスに評価するとして、まぁ此方からはこんな物かな、そっちから何か確認したい事、聞きたい事はありますか?」

 「まず、御社は具体的に何を提供する会社なのかなと」

 「あー、まぁ怪しいわな、とりあえず変なカルト的な何かじゃないが詳しくは機密だ、信じろってのは難しいだろうが後ろ指指される類いじゃないとだけ」

 「次に昇給と残業について」

 「昇給はまぁ新進気鋭だからね、予定は未定だが有っても一割増しくらいじゃないかな? 最低時給とか上がったら合わせて上がるけど、残業はお客様対応でどうしてもな、ラストオーダーの時間とかは決まってるから1時間くらいは覚悟する必要がある、残業代は法定通りに払うが深夜料金が発生するまでは行ってほしくないな、まぁ新進気鋭で未定だが」

 「では服装の常識的な範囲と言うとどの程度なのかなと」

 「まぁ正社員だと基本スーツになりそうだけど、一応はラフな格好も良しとしてるな、常識的な範囲と言うと難しいが余りにも奇抜なほとんど裸だろってダメージ加工の服とかそういうパンキッシュな感じは流石に困るしお客様の手前喪服とかバニーとかコスプレ的なのも困る、まぁ普段着と呼べる類いならアリだな、ピアスとかアクセサリー関係も同じくジャラジャラ着けるのはどうかと思うが片耳に二つ三つ、それに指輪と時計ブレスレットなら何も言わないかな、流石に顔に穴空けたりしてくるのはお断りだが、タトゥーも見えない位置ならまぁ良しかな、髪型と色は完全に自由、俺もスキンヘッドだしやりたいならモヒカンにして七色に染めてきても構わない」

 「この特殊作業手当てと守秘義務手当てについて説明をお願いします」

 「特殊作業の方は基本的にはバイト、手が足りない時は社員にもお願いするけど一回辺り500円、守秘義務は月に2万円だね、前者に関してはフルタイムでも休憩有るから日に上限もあるし後者は勝手に付いててくるが責任も付いて回る、客の個人情報に会社の業務内用等、当然だが外に漏らせば人生終わるな」

 「では最後に給料日と支払い方法、それと勤務開始日を」

 「20日締めの末日払い、手渡しだから末日が休みなら前後するかな、明細とかは印刷したのに判子押す感じでこっちも手渡しになる、勤務開始は5月20日から基本的な研修からスタートして25日にCM撮影、6月の1日からから広告出して6月の5日には開店、業務スタートしたら正社員なら来るかもしれない取材とか予約管理とか案内とかたくさん来た質問集めてホームページにFAQ乗せたりとかになるかな、落ち着いたら管理が基本になるけど」

 「じゃあ他に無いようなら退室して次の方を呼んでください、採用の場合のみ1週間以内に連絡します、不採用の場合履歴書は半年管理してから破棄しますので」

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