裁判その3
「私観ですが力には三つの方向性があります、携帯して高める力、まぁ武器とか格闘技ですね、基本的に最強と言うなら銃火器でしょうか、お次が携帯不可能な物、ようするミサイルとか戦車ですが、これの最強は解りやすい、核兵器だ、んで最後が異能、これは酷い、さっきの例えだと凶器すら必要なく離れた位置からでも攻撃可能かつ不可視」
「それらを踏まえた上で、俺の異能はどうしようもなく終わってます、人を殺すのも世界を壊すのも俺にとっては労力は変わらない、例えば今からアメリカまで秒で行って誰か殺して秒で戻って来れる、アリバイも凶器も動機も、俺には関係がない、おそらく嫌になるくらい見てきたでしょうが、居酒屋で口論になり咄嗟に瓶で殴って人を殺めた、こんなの珍しくもない、アメリカとかなら銃でムカつく野郎を撃った、これも珍しくもないんでしょう、ですがムカつく野郎が居るからそこにミサイル落とすとか戦車持ってくとか、コメディ映画なら有るでしょうが少なくとも飲み屋で口論になったから核が落ちたなんて事件は聞いた事がない、対して異能はやろうと思うだけで良い」
「先程の例えを俺は訂正しなければならない、アメリカに行くのに秒も必要ない、最高速度が光速を凌駕するんだから地球の裏側だろうと宇宙の果てだろうと皆さんが反応するより早く移動できてしまう、そして実は移動する必要すらない、その日その瞬間にそこに居るのが解るならば心臓を握り潰すのは難しくもない、この衆人監視の中で何かをしようと思えばできてしまう、星を落とす? 何処にでも可能です、月を落とす? 何処にでも可能です、太陽を落とす? 何処にしたいですか? さて、ジョナサンベイカージュニア、そしてウィリアムスミス、アメリカはジョージア州出身、二人して前科も無ければ軍役もなし、幼馴染みで敬虔な元十字教徒、現在はイリノイ州に居を構える異能排斥主義のカルト宗教の狂信的な信者、こんなのが後150人近いのかゴキブリみてぇに増えてやがる」
「何を驚く、そういうのが得意な奴だって居るんだよ、気にするな、どうせこの記憶も無くなるから」
「世は全て事もなしだ、後は任せた友よ、俺は行く所ができた」
「えー被告人ジョナサンベイカージュニア、及びウィリアムスミス、本籍地不詳、起訴状、本年4月6日16時頃、千葉県館山市〇〇6の3の27私立西岸高等学校に侵入しピッキングで屋上に侵入、その後ロープ降下で校舎の窓ガラスを蹴り破り用具室内で発砲、中に居た男子生徒の頭部を攻撃した後、女子生徒にも発砲、男子生徒はその場で死亡、罪状、不法侵入、器物破損、銃刀法違反、殺人、及び不法入国、武器密輸の疑い」
何事も無かった、誰も証言せず、誰も証人とならず、ただ少しばかり開始が遅れただけ、裁判は恙無く進んでいく。