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異能部  作者: KAINE
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デートの日常その5

 「もしもし、男鹿です、犯人はダーツバーコルッカに居るらしい、しかしコルッカとは渋いな、普通はヘイヘだと思うが、まぁどうでも良い、残り時間7分足らずで令状と人集められるなら待つが無理そうなら今言ってくれ、速攻で終わらせるから」

 「待ってくれ5分で良い、此方にだって意地ってもんがあるし面子も有る、お前さんにオンブにダッコじゃ通せる意地も通らねぇ、無理してでもどうにかする」


 たった5分、されど5分、僅か300秒を待って横付けされたバスからゾロゾロとスーツや制服姿の男と女が出てきて、ほぼ同時にサイレンと共にやって来たスーツにトレンチコートなんていう古くさい刑事像を体現するオッサンが降りてくる。

 「どうも時間ピッタリっすね」

 「まぁ連絡貰って即断即決で準備したからな、ここまでの渋滞だけが心配だったが、で……彼処か、管轄に連絡は入れてるが間に合わんだろうし始めよう」


 扉をノックして返答を待つが当然の様に静かなままでノブを回してはみるが施錠されている、警察だと言った所で開けるとも思わないが残念ながらビルの所有者までは調べる余裕が無かったし有ったとしても鍵を貰ってからでは間に合う筈もない。

 裏口を固めているから逃がす心配はないが相手は人質を取っている様な状況、警察が回りに居るというだけでもマズい上に監視映像の取得に手間取りまだ犯行に使われた車種も人数も年齢層さえ解っていない、短期決戦が求められる状況だろう。


 さて、そうなると扉を蹴破りたいのは山々だが鋼鉄の扉を蹴ったところで少し歪ませるのがやっとだろう、もしかしたら歪みすらしないのかもしれないしどちらにしても足の骨を折る覚悟は必要になる。

 これが木の扉やガラス戸ならば刑事ドラマよろしく蹴破れただろうがそんな事を実行した日には始末書では済まないだろう、これが火事とか人命救助なら話は別だがガサ入れだと合鍵と許されてチェーンカッターくらいだ。

しかし幸いにしてそれらを必要とする事もなく内側から解錠される、無論中の誰かが今さら応対しようとしたなんて事もなく、見えざる手が動いたに過ぎない。


 「おー、後輩ちゃん、真っ昼間からストリップとは中々に不思議な事になってるな、時に前から聞きたかったんだがゾンビ映画とかでゾンビ倒した時に『一匹殺したぜ』とか言ってるけどよ、ゾンビってもう死んでるのに殺したって言えんの? そこのところネクロマンサーとして答えてくれ」

 下着姿を通り越して上裸の後輩にかける第一声では間違いなく無いのだかそれがあくまでもらしい、何処までも飄々とどこ吹く風のマイペース、しかしその表情はと言うとにやけ面ではなく何より闖入者に声すら上げず、身動き一つ瞬きすら封じられた男達だけが常には見せない真剣さを物語っていた。

 「先輩っ、菜慈美先輩が奥に連れていかれて」

 己の状況よりも先に他者の心配をできるのは彼女の美徳なのかもしれないが今回はそれが異様な光景を作り出す

 「アッハハハハハ」

 こんな状況で己の彼女が奥に連れていかれて腹を抱えて爆笑するなんてのは相当に頭がイカれていなければ無理だろう。

 「あー、腹痛ぇ、お前さんこの数年何見てきたのよ、俺なんかよりアイツのがヤバイんだって、その証拠にほれ」


 従業員用の着替え室らしい扉がベコリと弾け飛び、内側から大の男が二人飛び出てくる、それも文字通り中に浮いて。

 片方は股間を押さえたまま体をくの字に曲げもう片方は腹を抱えてこれまたくの字に体を曲げ、双方共に苦悶としか取れない表情で微動だにしないで転がっている。

 「ワーオ、こっちのは息子さんがお亡くなりだな、少なくとも玉は潰れてる、で、こっちのは腸が異常に腫れてるな、市販のホットソースじゃ無さそうだ、何使ったよ」

 然り気無く自分の上着で深井を包みつつ部屋の奥に声をかける、微塵も心配を見せていないのは転がっているのと同じような経験をしているからか、はたまたそもそも心配の二文字が頭の中に無いからか。


 「ちょっとジョロキアの粉末と催涙スプレーの原液を、大丈夫、出せば楽になるわ、出すのも辛いでしょうけど、そっちのはまぁ加減なしに蹴りあげたのと中に釘転移させたのどっちが効いたのか知らないけど、で、そこのマネキン二人も同じようにする? それとも首と胴体サヨナラしちゃう?」

 「その二択は前者の方がマシなんだろうが、まぁ意見を聞いてみようか、名も知らぬ青年、物理的に地獄見んのと精神的に地獄見んのとどっちが良いよ、察官の前だからって遠慮しなさんな、上手く行けばブタ箱っていう救いの道も待ってるかもよ」

 「おい、そこの警察官、助けろよ親友(・・)だろ?」

 「捜査への協力には感謝するが私刑を目溢す訳にもいかん、そこのは正当防衛としてもこれ以上は過剰でしかない」

 「おい、聞いてるのか息子(・・)が捕まりそうなんだぞ、助けろ親父(・・)

 「ん? あぁ、悪いがそれはできん息子よ、俺ら六課は肉親だろうと命の恩人だろうと恩師や竹馬の友でも犯罪者なら捕まえるって心底思ってるのが集まっててな、訓練で鍛えてもいる、だからお前さんが誰でも捕まえるし法で裁く」

 「それにだ、お前さん、非接触の認識阻害か軽度の記憶改竄って異能なんだろうが、俺が意識して動けてる時点で程度が低い、よくそんなので今まで捕まらなかったな」

 「おい、じゃあそこの、助けろよ友達(・・)だろ?」

 「俺に言ってるのか? 悪いが交戦モードだからな、色々と防がせて貰ってるし、仮に……いやまぁお前らには関係ないか、んで、そっちでヨロシクやろうとしてる最中の二人、止めて申し訳ないと思わないでもないが、とりあえず察官の前だ離れろ」

無理やり、まるで操り人形の如く距離を離された男女に一瞥もくれずに

 「とりあえずレディは服着なさいな、んで男性警察官の皆様、今しばらく視界塞いでるの我慢願おう、同じ男として見せてやりたいのは山々だがこういうのは一人で楽しむ……オッと、見る奴が少ない方が後々カウンセリングが楽だろ、俺? 服の上からでも形解るんだぜ? 興奮しないと言えば嘘になるが慣れてる」

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