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異能部  作者: KAINE
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ホワイトデーの日常

 その日は人によって評価は別れる『トイチより酷い日』『三倍返しとか法定金利ブッチしてるよな』『リア充滅びろ』『ホワイトデーなにそれ美味しいの?』『三月の第二週』『なんでもない日』『ホワイトデー』と様々だ、義理チョコ本命チョコ友チョコ等々のお返しが罷り通る日でこの日ばかりは教師も菓子類の持ち込みを目こぼす日だ、そしてある者は何も持たず、ある者は数個、ある者は大量に菓子類を抱えて登校する、恋に恋する若者の身分を謳歌するかの如くモラトリアムを彩るイベントの一つとなって半世紀以上、三年生にとっては卒業間近のイベントで受験も終えて結果も出た頃合いとなると悲喜が綺麗に別れてその上で鬱憤を晴らす最後のイベントとなる、後はもう個人で慰労会とか旅行とか企画するのが関の山で高校生の身分だと卒業旅行もそれほど自由にではない、投票権は持っていても法的には成人はまだで保護者無しだと制限が有る。

 慰労会にしても個人のレストラン辺りが上限でセレブな家庭が揃っていてもホテルレストラン辺りになるだろう、一般的にはカラオケかファミレス、予算が厳しいなら菓子とジュースを買って家になるがこれらは余談だろう。

何にしてもだ、貰った物への返礼の日として周知されて半世紀以上、気付いた時には三倍返しなんておかしな慣習まで生まれ、マシュマロがどうだクッキーがどうだなんて話まで生まれるくらいに根付いた。そんな中で西岸高校で一際異彩を放つくらいに大量に菓子類を抱えるのが二人、一人はやや線の細い病的に肌白く見えるがファッション紙のモデルで通る目鼻立ちのイケメン、新入生として門を潜りそこから1年も生徒会長を勤めた秀才、一人は日焼けというには黒の強い肌にスキンヘッド、それなりに鍛えらた肉体を持つこちらもイケメンで通る目鼻立ちの問題児、双方共に同年代からは慣れられても下級生上級生からの人気は高い、漫画じみた学校前のアイドル的ではないにしても両手で足りないくらいのチョコは貰える、その一つ一つにお返しとなると紙袋一つでは若干足りない、それを手痛い出費と見るか勲章と見るかは人それぞれだろうが大変な事だけは間違いない。


 板田の方は自らの隠れた趣味である料理のカテゴリーに菓子作りも入るため躊躇いもなく自作のマフィンとジャムのセットを大量に用意し、 の方は自作なんてインスタントラーメンが関の山なため都内で有名な菓子屋のプリンを購入して保冷状態を維持したまま持ち込んでいる、教師陣も彼らにとって二度目の戦いとなると流石に慣れて1年の頃のような驚きも薄い、これが来年もと思うと億劫になりそうだが翌月には彼らも最高学年、片方は兎も角として落ち着いてくれるだろうと信じたい、主に胃のポテンシャルを守る意味でもだ、胃薬が手放せなくなった校長の様になりたいと思う奴は誰一人として居ない。

 「ほいバレンタインデーのお返しねー、俺に渡してくれた人は取りに来てくれ、一応言っとくがちゃんと顔も名前も覚えてるから有名なプリンだし貰っちゃえみたいな小狡い事考えるなよ、流石に先生に突き出さにゃならなくなる」

 「バレンタインデーのお返しだ、手作りだから少し荒いが配り歩くと時間が足りない、申し訳ないのだが取りに来てほしい」

配り歩くと時間が足りないなんて言いつつ二人して休み時間の度に各教室を回っているが1年2年は同じ棟だし3年生も廊下を渡ればすぐだ、午後までにはおおよそ回りきって一休みできるしその頃には互いに互いの定位置である生徒会室と部室に籠る事になる。



 「はい後輩ちゃん、バレンタインデーのお返しね、一応色付けてるから他の人には内緒な」

 相変わらずの軽薄さで茶目っ気たっぷりに言うのがこんなにも似合うのはどうかとも思うが普段と変わった様子を見せていないのは良い事なのだろう、もう一月もするとこの先輩に出会って一年になるがその間に幾つものトラブルを目にしてきた、おちゃらけた雰囲気や軽薄さが消える時が一番ヤバい、トラブルにも軽薄に対応するならば問題ないのだが珍しく真剣になると何時もよりグロさが増す、ネクロマンサーとして慣れてはいるし好む所だが目の前で見知った人の頭が

爆ぜるのを何度も見たいとは思わない。


 「ところで、私に色を着けるなら菜慈美先輩には?」

 「図書カードに決まってるだろ、食い物より活字だよあの中毒者には」

 「ちなみに今日は?」

 「朝イチで渡したからな、今頃は本屋で豪遊してると思う」

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